よく考えたら、そりゃそうか
食器を学食に返した俺は、何事もなく教室に戻ってきた。
この中学校はお昼休みが短いからか、真奈も教室には来ていなかった。
休み時間全部で来る、みたいなことを言ってたのに、とは思うけど、まぁ、本当にもうチャイムが鳴るだろうし、別にいいか。
「あ、おかえり、優斗くん」
「……ただいま。……なんか、夫婦になったみたいだね」
「えっ、ふ、夫婦って……えへへ」
帰ってきた時は普通だったのに、俺の言葉を聞いた瞬間、結衣はまた顔を真っ赤にして、嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。
可愛い……と思っているうちに、チャイムが鳴った。
──────────────
あれから普通に授業を受けて、放課後になった。
……今から真奈とのデートだって考えると、少し緊張してきたな。
【校門のところで待ち合わせってことでいい?】
真奈にそんなメッセージを送った。
緊張してるからって、約束を破るわけにはいかないし、俺だって真奈とデートしたいし。
【分かった。もちろんいいよ! 待ってるね!】
【すぐ行くよ】
そんなやり取りをして、俺は待ち合わせ場所に向かうために席を立った。
「結衣、また明日ね」
「う、うん。また明日」
そうして、結衣に一言だけそう言って教室を出ようとしたところで、気がついた。
俺、結衣と連絡先交換してないじゃん。
「あ、結衣、連絡先、交換しない?」
「え? う、うん、も、もちろん、いいけど、私、今スマホ持ってないよ……」
「え? 無いの?」
「……うん。見ないようにしてたんだけど、この学校、本当はスマホとか持ってきちゃダメなんだよ?」
マジ?
いや、でも、よく考えたらそりゃそうか。
俺、まだ中学生じゃん。スマホなんて持ってきていいわけないじゃん。
うん。なら、なんで真奈もスマホ持ってんの? 真奈が持ってるから、俺、別にいいんだと思ってたんだけど?
「えっと、これからも、秘密にしてくれる?」
正直に言うと、俺は現代人だ。
学校にいる間だけでもスマホが身近に無いなんて耐えられないし、これからも普通に持ってくる予定だ。
というか、多分だけど、俺は男だから、その辺優遇されてるんだと思う。
結構スマホ弄ってることとかあったし、それに結衣だけしか気がついていないなんてこと、ありえないだろうからさ。
「う、うん。もちろんだよ」
「じゃあ、これ、俺の連絡先。置いていくから、いつでも連絡して?」
「あ、ありがとうございます」
そう言って結衣の机に急いで書いた連絡先を置くと、敬語になりながらお礼を言われた。
……前の世界の記憶がある俺からしたら、全然気持ちが理解できるし、何も言わずに今度こそ、そのまま教室を出た。
すぐに行くってメッセージで言ったのに、少し時間がかかってしまったから、さっさと行こう。
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