中学生なのに学食?

 真奈は自分で言っていた通り、本当に休み時間の度に教室に来た。

 正直そのことに全然悪い気はしなかったけど、結衣とはほとんど話せなかった。


 そんなこんなで、昼食の時間になった。

 まだ中学生だし、自分の教室以外で昼食を食べることは出来ないから、真奈が来ることはないとして、俺、何を食べたらいいんだ? 今更だけど、弁当とか持ってないぞ? 中学生だし、給食なんて出ないだろうし、マジでどうしよう。

 別に一食くらい抜いても問題ないと思うし、大丈夫っちゃ大丈夫なんだけど、昨日あんな様子だったあの母さんが忘れたりするかな。


「優斗くん」


「ん? どうしたの?」


 そんな感じで色々と考えていると、結衣にそう言っていきなり声をかけられた。

 

「学食に行って、今日食べるものを受け取ってこないの?」


「学食……?」


 中学生で学食とか、あるのか? そもそも、受け取るってなんだ? 俺、金なんて持ってきてないぞ?


「えっ? 学食、分かんない?」


 そう思っていると、結衣はバカにするような感じじゃなく、単純に知らないことに驚いているような感じでそう聞いてきた。


「ごめん、ちょっと久しぶりで分かんないかな。出来れば教えて欲しいんだけど……」


「あ、謝らなくていいから! 分からないのなら、もちろん教えるよ」


 そうして、結衣に学食についての話を聞いたところ、簡単に言うと男限定の無料で食べられる学食があるらしい。

 え、何それ、神か? とも一瞬思ったけど、よく考えたら、男しかいない空間で食事をしなければならないってことで、凄く嫌なんだけど。


「それ、教室で食べることは出来ないの?」


「……え? 一応、出来ると思うけど、教室で食べる男の子なんて居ないよ?」


 あ、なんだ。学食で食べるものを受け取って、教室でも食べられるのか。

 だったら、別にいいかな。


「そうなんだ。それでも、俺は教室で食べようかな。せっかく結衣と仲良くなったんだし、一緒に食べたいからね」


「わ、私と!?」


「うん。……嫌だった?」


「う、ううん。私も、優斗くんと一緒に食べたい!」


「じゃあ、一緒に食べよっか。俺は取ってくるね」


「う、うん!」


 そうして、顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらも喜んでいる結衣を置いて、教室を出たはいいものの、俺は今日の朝と同じ状況になっていた。

 学食の場所、どこだよ。

 今は真奈が近くにいないし、結衣だって居ない。……いや、結衣は戻ればいるけど、流石に恥ずかしいから、戻りたくない。


「あ」


 ちょうど目の前に同じクラスの男が歩いているのが見えたから、俺はちょうどいいとばかりにそいつの後を追った。

 別に話しかけて、学食の場所を聞いてもいいんだけど、どうせここで友達になれたって俺はあいつと遊んだりしないだろうから、意味が無いと思うんだよ。

 この世界で男と遊ぶくらいなら、普通に女の子と仲良くなりたいし。


「あ、ここか」


 そうして、同じクラスの男について行ってると、無事に学食にたどり着くことが出来た。

 たまたまタイミングがあってラッキーだったな。

 まぁ、そいつがいなかったらいなかったで普通に先生かその辺の子に聞いてたから、問題は無かったけど。

 

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