もしかして真奈って……

「今はそうだけど、将来的には、真奈と同じ俺の特別になって欲しい人かな」


 緊張しながらも、俺は堂々とそう言った。


「は?」


 その瞬間、本当に真奈の口から出たのかが想像もできないくらいに低い声が聞こえてきた。


「ま、真奈? ど、どうした?」


「何、言ってるの? 優斗の特別は私だけ。私の特別も、優斗だけ。ねぇ、そうでしょ?」


「え、い、いや……」


 ここで頷いたら、ハーレムが作れなくなってしまう。

 そう思うと、俺はそんな曖昧な言葉しか出てこなかった。

 そしてその瞬間、俺を助けるようにして、チャイムが鳴った。


「ま、真奈、チャイムが鳴ったから、また後で話そうな?」


「チャイム? そんなの、どうでもいいよ。私たちの将来の方が大事でしょ?」


 冗談だろ? チャイムが鳴ったのに、解放されないのか?!

 授業の間にどうしたら元の真奈に戻ってくれるのかを考えようと思ってたのに。


 と言うか、今更だけど、真奈がこうなった原因はなんだ?

 俺が結衣にも真奈と同じ特別になって欲しいって話をしたからか? ……でも、この世界は一夫多妻が全然普通な世界だろ? そんなこと、ありえるのか?

 

「確かにそれは大事かもだけど、授業も大事だから、お互い教室に行こうな」


 そんな疑問を内心に思いながらも、俺は真奈に軽いボディータッチをしながら、そう言った。


「ゆ、優斗の特別は私だけ、だから。私以外に特別なんて作ったら、許さない、から」


 すると、顔を赤くしながらも、そんなので誤魔化されないとばかりにそう言ってきた。

 そしてそのまま、その場から走り去っていってしまった。

 もしかしてだけど、真奈はいわゆるヤンデレってやつ、なのか? ……こんな一夫多妻が普通の世界であっても、ハーレムを作ることが許されない、のか?


「い、いやいや、まだそうだと決まったわけじゃないだろ」


 そんなことを内心で思いながらも、俺は首を横に振った。

 この世界に転生したと気が着いた時、俺は決めただろ。ハーレムを作るって。

 諦めずに、俺は無自覚な振りをしながらハーレムを作ろう。

 きっと真奈も分かってくれる……はず。

 なんか思考がかなりクズっぽいと言うか、実際クズなんだけど、こんな世界に転生したからには、男なら誰だってハーレムくらい作りたいって思うだろ。


「すみません、遅れました」


 そう思いながらも、俺は教室に戻った。

 

「えっ? ぜ、全然大丈夫よ。席に座りなさい」


「ありがとうございます」


 中学生なのに教師も男だってことでこういう風に何も言われないんだなぁ、と内心で思いながらも、礼を言った俺は軽く結衣に手を振ってから、席に座った。

 すると、結衣は恥ずかしそうにして、俺から顔を見られないようにそっぽを向いてきた。

 ……やっぱり、可愛いよな。

 もしもさっき俺が想像した通り真奈がヤンデレだった場合、一夫多妻が普通の世界だってことで、せめて結衣だけでも許して欲しいな。

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