真奈のことを思って

「着いたよ、優斗」


「あぁ、ありがとう、真奈」


 ここに来るまでに、何となく、俺が注目されている理由がわかった。

 単純に俺が男で、自分で言うのもなんだけど、顔がいいってのはあると思う。……まだ見た事ないけど。

 と、とにかく、そう、男だ。俺が男っていう部分が重要なんだ。男っていうのは普通、この世界の常識として、女性を嫌悪するものだ。

 そんな男の俺が、俺が真奈と……女性とこうやってくっついて歩いているから、目立っているんだと思う。

 実際、今も同級生? 先輩? からも注目されてるしな。


「真奈、また恥を忍んで聞くんだけど、俺のクラスってどこだっけ」


「えっ、それも忘れちゃったの?」


「ま、まぁ、はい」


 流石に不自然……おかしいか?


「私も本当は忘れちゃいたいけど、優斗の教室は一組だよ。席は窓際の一番後ろ」


「そ、そうなのか。ありがとな、真奈」


「全然大丈夫だよ、優斗」


 微笑みながら、真奈はそう言ってくれた。

 全然不自然になんて思われなかったな。

 

「えっと、ちなみに真奈のクラスは?」


 怪しまれなかったことに内心でホッと息を吐きながら、俺は真奈にそう聞いた。

 

「…………四組」


「え……あー、そっか。真奈とは真逆のクラスかぁ」


 もちろん残念な気持ちはあるけど、まぁ、どうせハーレムを作るんだし、それでも悪くはないかな。

 いくらハーレムが大丈夫な世界とはいえ、俺に惚れてくれている人の目の前で他の女の子を口説くのはちょっと気持ち的にあれだと思ってたし。

 まぁ、口説くっていうよりは、俺は無自覚な振りをして惚れさせようとしてるんだけどな。


「……うん。私も、優斗と一緒が良かったよ」


「まぁ、クラスが違うのはしょうがないよ。少しの間だけど、一緒に教室に行こうか」


「う、うん。……そうだよね。ちゃんと、優斗は私のなんだって見せつけておかないとね」


 真奈のものになったつもりは無いんだけど、まぁいいか。

 一夫多妻が普通の世界なんだし、そんなアピールをされても、普通に女の子は近寄ってきてくれるだろうし、真奈も満足そうにしてくれてるしな。


「着いたよ。ここが優斗の教室」


「ありがとう、真奈」


「入らないの?」


「んー、真奈を教室まで送ってから、戻ってくるよ」


「えっ、い、いいの?」


「真奈と少しでも一緒に居たいからね」


「う、うん。私も、優斗と少しでも一緒に居たいよ」


 顔を赤らめながら、真奈はそう言ってくれた。

 ……やっぱりこんな可愛い子からそんなことを言われるのは嬉しいな。

 

「……着いちゃった」


「それじゃあ、名残惜しいけど、また放課後ね、真奈」


 そう言って別れようとしたところで、何故か真奈の様子が変わった。


「……は? 放課後?」


「ど、どうした? 放課後だけど、何か問題があったか?」


「なんで放課後なの? 休み時間は? 優斗、本当は私に会いたくないの? ねぇ、どうなの?」


 や、やばい、どうしよう。

 休み時間は真奈とは違う他の女の子と仲良くなろうと思ってたから、つい放課後なんて言ってしまった。

 

「そ、そんなわけないだろ? 真奈のことを思って、俺は放課後だって言ったんだよ」


「……私を思って?」


「そ、そうだよ。真奈のクラスと俺のクラスは完全に逆側だろ? 真奈にも友達くらいいるだろうし、俺だって友達を作りたい。だから、休み時間に会うのはお互い大変かなと思ったんだよ」


 本当は友達じゃなくて、恋人を増やしたいんだけど、いくら一夫多妻が普通の世界でも、そんなことを馬鹿正直に言えるわけないから、俺はそう言った。


「……大変じゃない。休み時間も、会いに行くから」


「え、そ、それはもちろん嬉しいんだけど、俺も友達とかを作りたいから、真奈も自分の友達を大事にしてくれたらいいんだぞ?」


「大丈夫。絶対会いに行くから」


 真奈はそのまま、教室の中に入っていってしまった。

 ま、まぁいいか。本当に休み時間に真奈が来たとしても、嬉しいことには変わりないし、ハーレムはゆっくり作っていこう。

 そう思って、俺はさっき教えてもらった自分の教室に向かって歩き出した。

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