酒飲むとバッドに入る話。
前島矩歩
第1話
飲みすぎると、死にたくなる。
酒でやらかした翌日というわけでもなく、酒バッドメーターの閾値を超えれば何気ない日々の生活()に黒々とした死が横切ってくる。隣を小気味よく走る電車に頭をもたれかかるだとか、カバンに入ったハサミだとか。現代社会には死因が多すぎて困る。
普段から思いきりの良い方だと思っていたが、やるべきでない選択肢にフィルタリングがなされた上でのものだったらしく、こうした面では安心するのだが、代謝が進んでいない現状、それを心の底から実感するすべはないようだ。
常日頃から所詮肉の塊だと自負する私も、肉の破片集合に還れば帰るべき場所に帰るだとか。モルフィズムか形態変化か、なすべきことをなすとか、デストルドーだとか。
ありのままのカタチが不都合で今の精神との違和を覚えるから、私のあるべきは死んでいる状態で、自称死体、死体自認の心で限りある生を偽装していきたい所存である。きっと明日には謂れ多き聖者のごとく蘇りたもう。これは希望的観測で、あるべきでない姿のまま私はここにいる。死への衝動が対人希求性の一形態だとすれば、欲動そのものは人類に普遍的なものなのだろうか。それはそれで吐き気がするな。
酒飲むとバッドに入る話。 前島矩歩 @kikokuho
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