第4話  え?

ピンク髪。肩より少し長い。


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 オーディション合格後、早速私に専属のマネージャーが付いた。三上さんだ。三上さんはこれまで、何人もアイドル育成が手掛けたことがあり、1970年代の日本アイドルの立役者の一人だという。


 相当、私は事務所から期待されているのが伝わる。地下アイドルとはいえ、活動を2年近くやっていたので、期待に答えれる自信はあった。


「雫さん、よろしくね」


 冷たい冷気を発しているような口調で私に声をかけてくる。


「は、はい、お願いします」


「じゃあ何か歌ってもらえる?可愛くても歌唱力が無ければ、この世界では生き残れないよ。」


「私あんまり曲を知らなくて...」


 三上さんの目が大きく開く。”こいつ何言ってんだ”という目線はヒシヒシと感じる。


「お、オリジナル曲でもいいですか?」


「もうなんでもいいわよ、」


 三上さんに早くも失望されながら、歌を歌った。曲名は令和で流行ったaboの「うんせえわ」


 歌唱後、数秒の間、沈黙が続いた。



「ものすごく下手。デビュー無理だね。 あと歌詞も下品」


 ”また、変な奴を合格させたな”と小声で呟く声も聞こえた。


「あ、わかりました...すいません」


 それもそうだな。今までボイトレも一回もしたことないし、ライブも自分が好きなように歌ってただけだった。2年やった意味なんかないんだな。絶望し帰ろうとする。


「ちょっと、どこ行くのよ」


「え?」


「練習するわよ、練習」


 不意を突かれた感覚だった。そっか、今の私って地下アイドルじゃないんだ。ちゃんとそれないの事務所に所属していて、しっかり叱ってくれる人がいるんだ。恵まれた環境だ。


「はい!お願いします!」


 急にテンション上がっている私に引きながらも、三上さんは丁寧に練習を手伝ってくれた。



 帰宅後、すぐにベットに向かった。あらゆるところが昭和時代であるが、唯一私の部屋は令和のままであり、安心できる場所であった。


「ん、てか令和のアイドルのCDやDVD見て、真似すえば無双じゃね?」


 チート技を見つけてしまったようだ。こういう時のずる賢さは日本一な自信があると再び感じた。



 それから数週間は、ボイトレしれ帰宅し家でアイドルの歌やダンスの映像を見るというルーティンで暮らした。特に好きで見ていたのは、kpopのNewpeaceと神楽坂48。


 そんなある日


「結構、上手になってきたね」


「ありがとうございます!」


「声がかすれたような感じでおもしろいね。個性あっていいと思う」


 やったー。私、どんどん成長している。これで一気に天下とってまうぜ。


「来週テレビでるから、この曲覚えてきてね」


「え?」


 純粋に心の準備が出来てないんですけど...

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