第2話 おいで

幼い沙耶はいつもアパートのドアの前で座っていた。僕はそんな彼女に会いに時の扉を開けた。


古い階段を昇ると、ツインテールの巻き髪が可愛い女の子がいた。


僕は向かい側に座って話しかけた。


『もう大丈夫。』

『お兄ちゃんだれ?』

『うん?誰だろうね。でも、もう大丈夫。ほら、行こう。おいで。』


僕は幼いその子に口付けた。

そばから見たら犯罪者そのもの。


けれどその子は微笑んでいた。



そのまま近くの公園に寄り、木陰のベンチで話していると、僕の膝枕で彼女が寝始めた。


可愛い寝顔がたまらなく愛しかった。



――――――――――――。


大きくなるにつれ少しずつ小さな彼女は歪んで行った。


『愛されたい』欲求

『認められたい』欲求

『安心したい』欲求


の中で男に尽くし、痛みを与えられないと


『生きている』という感覚

『愛されている』という感覚

『繋がっている』という感覚


を感じ取れなくなっていた。



――――――――――――。


僕はと言うと、


『自分に染まってくれる』事に安心感を得るようになっていた。


僕が与える痛み、快楽、嫉妬、束縛。

僕が求める痛み、快楽、嫉妬、束縛、母性。


歪みに歪み切ったものを受け入れてくれる人を探して


あるアプリに登録して、

ある春の日の昼下がりの駅前で最初は行為だけが目的で『沙耶』と会う約束をした。

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