第4話 吉岡紗奈との出会い 1
社長室に入ると社長である山野さんと『スノーフェアリー』のメンバーである吉岡紗奈さんがいた。
「おはよう、直哉くん、彩音さん」
「おはようございます!」
「おはようございます。今日からよろしくお願いします」
社長からの挨拶を受け、俺と彩音も挨拶をする。
「紗奈ちゃんもおはよー……ってどしたの?」
社長への挨拶を済ませた彩音が吉岡さんへ挨拶をするが、何故か固まっており返答がない。
よーく見てみると、吉岡さんは俺を見たまま顔を赤らめており、ボーッとしているようだ。
「あちゃー、やっぱりダメだったかー」
「ダメだったって何が?」
「お兄ちゃん耐性。耐性がないと思考が停止し、こんな風に動けなくなるんだ」
「俺ってデバフ効果があるのかよ」
どうやら俺は味方に欲しくないスキルを持ってるらしい。
「紗奈ちゃーん、ボーっとしてないで起きてー」
「……はっ!」
彩音の声かけにようやく復活する。
「す、すみません!ボーっとしてしまって!おはようございます、彩音さん」
「おはよー紗奈ちゃん!」
復活した吉岡さんが彩音に挨拶をする。
その後、俺の方を向き…
「そ、その……お、おはようございます。直哉さん」
「あぁ。おはよう、吉岡さん」
初対面ということで悪い印象を与えないよう、とびきりの笑顔で吉岡さんに挨拶をする。
「はうっ!」
すると突然、胸の辺りを押さえ始める。
「ど、どうした!?」
「い、いえ!大丈夫です!お気になさらず!」
そう言ってはいるが、顔を真っ赤にして呼吸も荒いので大丈夫そうには見えない。
そう思ったので話しかけようとすると、俺の肩に彩音が“ぽんっ!”と手を置く。
「一旦、お兄ちゃんは紗奈ちゃんから離れようか。お兄ちゃんが関わると一向に話が進まないから」
「いやでも……」
「気持ちだけで十分だから一旦離れよ?」
「……はい」
俺は彩音の言う通り吉岡さんと距離を取り、部屋の隅っこへ移動した。
数分後、吉岡さんが落ち着いたようなので俺たちは自己紹介を行う。
「先程はお見苦しいところをお見せしました。私、吉岡紗奈といいます。直哉さんにはご迷惑をおかけすることもあると思いますが、よろしくお願いします」
そう言って丁寧に頭を下げる。
若干顔が赤くなっているようだが、会話できる程度には回復したらしい。
吉岡紗奈。
彩音の1つ年下で現在高校2年生。
水色の髪をサイドテールに結んだ美少女で、歌やダンスは『100年に1度の逸材』と呼ばれている彩音に負けず劣らずのパフォーマンスを披露している。
そのため、世間では吉岡さんのことを『100年に1度の天才』と呼んでいる。
そして何より特徴的なのは高校2年生とは思えないほどの大きな胸。
歌唱中に飛んだり跳ねたりすることで大きな胸が“ぷるんぷるん”揺れるため、一部のファンから絶大な人気を博している。
そんな吉岡さんに対して俺も簡単に自己紹介を行う。
「彩音の兄の鶴崎直哉だ。これからよろしくな」
「は、はい!よろしくお願いします!」
そう言って再び頭を下げてくれる。
「よし、お互い自己紹介は終わったな」
その様子を見ていた社長が声を上げたため、俺たちは社長の方を向く。
「じゃあ、さっそく仕事の話をしよう。まずは直哉くんと『スノーフェアリー』が共同で行う仕事だ。これが直哉くんの初仕事となる」
そう言って社長が詳しく仕事内容を説明する。
「今度、『スノーフェアリー』が新曲を出す。そのミュージックビデオに直哉くんをメインキャラとして登場させる予定だ」
「えっ!そんな大役、初心者である俺がいただいてもいいんですか!?」
「あぁ、問題ない。というか直哉くんが良いと言われたんだ」
その言葉を聞き、俺は彩音と吉岡さんを見る。
「いいのか?」
「うんっ!私、お兄ちゃんと一緒に仕事がしたいって思ってたから!」
「私も直哉さんにお願いしたいです。彩音さんから直哉さんのことを聞き、直哉さんではないとダメだと思いましたから」
「そ、そうか……」
(彩音よ。吉岡さんに何を話したんだ?初対面なのにものすごく信頼されてるんだが?)
そんなこと思うがこれはチャンスなのでありがたく引き受けさせてもらう。
「2人がいいと言ってるなら俺は引き受けたいです」
「お兄ちゃんっ!」
「ありがとうございます!」
俺の返事を聞き、2人がパーっと笑顔になる。
「分かった。日程等は私たちが調整しておこう」
「ありがとうございます」
早速大きな仕事をいただくことができ、心の中でガッツポーズをする。
「それと別件になるがもう一つ仕事を依頼したい」
「え、まだ仕事をいただけるんですか?」
デビューしたばかりなのにもう一つ依頼があるようだ。
「あぁ。もう一つは直哉くん単独の写真集だ」
「えーっ!お兄ちゃん、写真集出すの!?」
俺が反応する前に彩音が社長の言葉に反応する。
「そうだ。直哉くんのルックスなら赤字にはならないだろう。どうだ?やってみないか?」
そう聞いてくる社長に俺は元気よく答える。
「はい!是非やらせてください!」
「ありがとう。先方と打ち合わせて撮影日を決めるから決まり次第連絡するよ」
「ありがとうございます!」
こうして俺は幸先よく2つの仕事を引き受けた。
その後、社長と細かい話を行い、社長室を後にする。
「彩音たちはこれから予定あるのか?」
「ううん!私たちもこれで今日は終わりだよ!」
「なので予定とかは入ってませんね」
俺の質問に2人が答える。
「あ、そうだ!お兄ちゃんもこれから予定ないよね?」
「あぁ。特に予定はないぞ」
「よしっ!ならこれから私たちの家で親睦会をしよ!」
「親睦会?」
「うん!私たちって数日後にはミュージックビデオを撮るんだよ!なのにお兄ちゃんと紗奈ちゃんは今日が初対面!これでは良い作品は完成しないよ!」
「……確かに」
彩音の言う通りだと思う。
「ならこれから俺たちの家に招待するか」
「い、いいんですか?」
「あぁ。俺、吉岡さんとは一度ゆっくり話したいって思ってたから」
「わ、私も直哉さんとお話したいと思ってました!」
「なら決まりだな」
「うん!赤峰さんに車お願いしてくる!」
そう言って彩音がダッシュで走り出す。
ということで急遽、我が家に吉岡さんを招待することとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます