第3話 芸能事務所へ
俺が芸能界デビューを決断した翌日。
SNS上ではすごいことが起きていた。
「今日も俺の名前がトレンド1位だなぁ」
「私がSNSでお兄ちゃんの芸能界デビューをお知らせしたからね!トレンド1位くらい余裕だよ!」
そう言って彩音が胸を張る。
何故、俺の名前が今もなおトレンド1位になっているかと言うと、フォロワー数が300万人を越える彩音が俺の芸能界デビューをお知らせしたから。
そのこと自体はありがたい話だが1つ問題があった。
「俺の名が広まってくれるのはありがたい話なんだが……この投稿内容はなんだ?」
「お兄ちゃんのことベタ褒めしておいた!よくできてるでしょ!」
「俺が文章を考えれば良かった……」
そう思いつつ彩音のSNSを開く。
そこには…
『お兄ちゃんが私の事務所に所属してくれました!実は私のお兄ちゃんって超イケメンで歌もダンスもできるハイスペックお兄ちゃんなんです!今後、お兄ちゃんの活躍に期待してくださいね!』
という文章を投稿し、俺に対する期待値を馬鹿みたいに上げやがった。
「……幻滅されないといいんだけどなぁ」
そんなことを思いつつ、未だトレンド1位に君臨し続ける俺の名前から目を逸らした。
あれから数日後。
俺の両親を交えて契約を行った俺は、晴れて彩音と同じ事務所に所属することとなった。
ちなみに俺が芸能界デビューすることを決断した時、俺の両親は喜んでくれた。
『ついに直哉も芸能界デビューか。精一杯頑張ってこいよ』
『芸能界で活躍できるのはほんの一握りの人間よ。だから大変だとは思うけど直哉なら大丈夫。絶対、有名になれるわ。頑張ってね』
そして励ましてくれた。
その言葉を胸に刻みつつ、俺は彩音と一緒に所属した芸能事務所へと足を運ぶ。
「ここが私が所属してる事務所だよ!」
「へー、事務所名は『風花』っていうのか」
5階建ての建物に大きく『風花』と書かれた看板が設置してある。
「はやく入ろ!」
「あ、ちょっ!」
俺の手を取った彩音が手を引いて事務所へ入る。
1階はホテルのロビーのような形となっており、たくさんのソファーやテーブルが置いてあった。
「あ、直哉さん、彩音さん。おはようございます」
その光景を見渡していると、スーツに身を包んだ1人の女性が話しかけてくる。
「おはようございます!赤峰さん!」
「おはようございます」
元気に挨拶する彩音に倣い、俺も挨拶をする。
彩音が所属しているアイドルグループ『スノーフェアリー』の専属マネージャーで、彩音のお世話をしている方だ。
赤い髪をポニーテールに結んだ美女で20代後半とまだ若い。
しかもルックスは芸能界で活躍できそうなほど整っており、彩音たちのマネージャーではなく芸能界デビューした方が良いのではないかと割とマジで思っている。
そして赤峰さんは『スノーフェアリー』のマネージャーなので昔から俺とも交流がある。
ちなみに最初の方は俺と会う度に顔を真っ赤にしてテンパっていたため、普通に話せるようになったのは割とマジで奇跡だと思っている。
「社長室で皆さんが待ってますよ。もちろん紗奈さんも待ってます」
「えっ!紗奈ちゃんよりも遅かったんですか!?」
「そうですよ。はやく直哉さんに会いたいみたいで」
「どんだけお兄ちゃんに会いたいの……」
彩音が肩を落とす。
「紗奈さん、ずっと言ってましたからね。直哉さんに会いたいって。それこそ直哉さんがデビューする前から」
「え、そうなんですか?」
「そうですよ。彩音さんから聞かされる直哉さんの自慢話を聞きすぎたみたいで」
「………俺の自慢話?」
「さっ、さーて!紗奈ちゃんが待ってるからはやく行かないと!」
露骨に話題を逸らしながら彩音がエレベーターへ向かって歩き出す。
「変なこと話してないといいんだが……後で問いただしてみるか」
何を話したかとても気になるが、社長たちが待っているため後ほど聞くことにする。
俺は到着したエレベーターに乗り移動している中、彩音に話しかける。
「そういえば俺、
『スノーフェアリー』は彩音と吉岡紗奈さんの2人で構成されているため、彩音の相棒と言っても過言ではない。
「なかなかお兄ちゃんを紹介するタイミングがなかったからね。今日はお兄ちゃんに紗奈ちゃんのこと紹介するよ!」
「そうしてくれると助かるよ。それと気になったんだが、なんで吉岡さんまでいるんだ?」
「あれ?言ってなかったっけ?お兄ちゃんの最初の仕事って私たちとなんだ」
「いや聞いてないが」
「………てへっ!」
「可愛い顔して誤魔化さない」
「あいたっ!」
可愛い顔して誤魔化す彩音にデコピンを喰らわせる。
その様子を見ていた赤峰さんが笑みを見せる。
「ふふっ、相変わらず仲がいいですね」
「え?そうですか?」
「はい。私、お2人以上に仲の良い兄妹は知りませんよ」
そう言って赤峰さんが笑う。
「っと、社長室に到着しましたね」
そんな話をしていると赤峰さんが立ち止まったため、俺たちも立ち止まる。
“コンコン”とノックをした後、「入れ」という言葉が部屋の中から聞こえてくる。
その言葉を聞き赤峰さんが扉を開けると、社長である山野さんと『スノーフェアリー』のメンバーである吉岡紗奈さんがいた。
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