後日談 ユーノス辺境伯編2
ちょっぴり若返ってしまった…
あのポーション一本で五年若くなるらしいが…長男のエルグが少し遅く出来た息子だからまだ良いが、早く生まれた子供ならば下手をすると十歳しか歳の差がなくなる場合もある…
『なんと危ない薬だ!』
しかも、一時的では無く永続的になど世の女性には秘密という指示も納得がいくのだが、国王陛下にも内緒というのは心苦しい…
まぁ、誰も私が五歳ほど若返っても気付く者もおらんだろうから、ニンファのジーグとナナムルのエルグに母の無事を伝えてから、少しジョルジュの様子でも見に行くとしよう。
サイラスからそのまま北へ向かえば王都まで帰れるだろう。
やっと時間が取れて3ヶ月ほど休める事になったが、これでは視察と会議を繰り返している日常とあまり変わりが無いが、キース君の抜けた穴を埋めようと、私がジャルダン村を含め、難民だった者の為に初めの頃は奮闘していたが、王都に呼ばれ北部の復興に従事する為に息子達にあとを譲り、早2年…辺境伯領はどうなっておるのやら…息子達に任せたからには、下手に聞く訳にもいかないからな…なんだか信頼して無いみたいに思われそうで…
などと思いながら、ダンジョン都市から南へと旅立ったのだった。
残念だったのはキース君が留守で、ナッツ君もお供として出かけているらしいので、会えなかったが心残りだが、ヒッキーちゃんの話では、
「マスターは、アグアス王国に新たなるダンジョンを作りに向かってます。」
と言っていたのだが、どうなんだろう…キース君は引っ越しでも計画しているのだろうか?
『これはシルフィード王国の損失!』
と焦る私に、ボッチ君は、
「ジローさんとB子さんの新居です。
フォルの町の近くに低層のダンジョンを作って、お肉の安定供給が出来る様にする為です」
と説明してくれたのだが、私にはもう一つ理解できなかったのだが、とりあえずキース君が出ていく訳ではないらしいので安心した…
ダンジョンというのが、どうも私にはピント来ない…
世界の為になるらしいが、獲物から一部の素材しか手に入らない効率の悪い狩場みたいな事を言っていた話を派閥の貴族達から聞いたぐらいだが、若返りポーションもダンジョンが育てば深い階層で手に入るとヒッキーちゃん達から聞いたので、まだまだジャルダンのダンジョンは準備段階なのだろう。
上のジャルダンの町は、一年程で各地…というか各国から人が集まり、あっという間に王都ほど活気のある町となったが、ダンジョンはまだまだ成長段階であり、世界中に増やして行く作業中…キース君の向き合っている仕事のゴールの事を考えれば私など、なんと楽な仕事だろうか…
キース君の復興支援の仕事の後を受け継いだだけであるが、
『私の
と痛感している。
そんな激務すら楽な仕事に思えるキース君の使命…せめて心置き無く出来る様にキース君の助けた人々だけでもしっかり守らねば…
と考えながら各地の町を中継して、ダイムラー伯爵領のアガルトにまで来たのだが、私は自分の派閥だったダイムラー伯爵という男がよく解らなくなった。
軍務卿の席が空き、次期軍務卿として派閥から推薦すると言ったら、
「ダンジョンという面白い遊び場を我が子供達が作ってくれているのに、そんなつまらん仕事などやりたい奴にやらせておけば良いのです」
と、現在は長男に代替わりさせる準備をしている変わり者である。
次男のベントに爵位を渡して、ベッキー様の護衛騎士団長から軍務の重役に育てる話も有ったのだが、あの親の血を引き継いでいるらしく、
「護衛騎士団長は暫く頑張りますが、自分も
と、一代限りの騎士爵以外は要らないという始末…私が、
「いや、息子に爵位を…」
と、考え直す様に促すが、
「どうしても貴族になりたければ、その時は息子が手柄を立てれば済む話です」
と…本当に呆れて言葉を失ってしまう。
しかし、このダイムラー伯爵の様な権力に興味が無い人材を本当は国の中心に置くべきなのかも知れないとも思うが、本人にその気が無いので仕方ないのだろう。
その夜はダイムラー伯爵と
「あの時の百年物の酒をもう一度飲みたいですなぁ!ワーグ様…」
などと言いながら酒を酌み交わし、翌朝は少し二日酔い気味で旅立った。
ジャルダン村発祥の『二日酔い知らず』というカクテルを飲んだのだが、それでも翌朝まで残る量の酒を飲んだようだ。
ダイムラー伯爵が、
「おっ、あの盛り上がったパーティーを思い出す飲みっぷり…流石は王国最大派閥をまとめあげた男!」
と持ち上げるから…
しかし、途中で、
「あれ?何かあの時のユーノス辺境伯様みたいだな…若返りました?」
と言われた時はドキリとしてしまった。
まぁ、すぐに、
「どうやら我は飲み過ぎたらしい…蒸留酒にしてからワインの頃のペースで飲むと直ぐに酔ってしまう…年でしょうかね…」
と言って有耶無耶になってホッとしたのだったが…
『しかしダイムラーよ…弱くなって丁度良いぐらいであるぞ…そなたは飲みすぎだ…』
そして、ダイムラー伯爵一家に別れを告げてアガルトを出ると、もう懐かしいの我が家ともいうべき辺境伯領内である。
キース君が広めてくれた馬車のおかげで長旅が楽になったとは言え、最近は長期移動が苦になってきていたのだが、やはりあのポーションのおかげだろうか…特に苦痛に思う事もなくニンファの町まで来れた。
この町の住人はキース君が助け、私の息子ジーグが守った難民の町…というはずなのだが、現在は教会には観光客が連日訪れ、工業関係の技術訓練生を受け入れ、中には王都の魔法学校に魔力が無い金持ちの商人の息子などが通っていたのだが、ニンファの学校に転入したりと魔力の無い子供の入学希望者があふれている状況らしい。
教師の育成を進めて、徐々に学校を整備している最中であるが、本当にキース君が我が辺境伯領に来てくれて我が一族と辺境伯派閥は数世代先まで安泰だろう…
あの日、たった1日で完成した伝説の教会を馬車の窓から眺めながら町へと入ってゆく…
『息子はちゃんとしているだろうか…』
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