第207話 はじめてのダンジョン
何もない2階層の空間に飛ばされたナッツ達はキョロキョロしている…
それよりも街にいた数万の兵士や軍務卿達はすでに閉鎖空間に飛ばされて、右往左往しているが今はそんな事より飯である。
俺はコアに、
「2階層でご飯しながら作業出来るようにならないか?」
と聞くと、彼女は、
「サブマスタールームをそちらに出します」
と言ってくれたので俺は、
「じゃあそれお願い、俺も2階層に行ってご飯にするから…」
と伝えると、
「イエス・マイ・マスター」
と彼女が答えると同時にフワリとした感覚を覚えると、ただ広い空間に転移した。
「兄上!」
とマイアが駆け寄り、解放された騎士達が、挨拶を始めようとするので、俺が
「はいはい皆さん、先に食事にしましょう」
と言ってコアが用意してくれたサブマスタールームと呼ばれるメインモニターだけのテーブルの前に座り、食べ物を出していく…俺のイメージしたモノがダンジョンポイントで出せるが、一回一回、宝箱で出てくるのが面倒臭い。
「ナッツ、宝箱の中に10こずつお弁当が入ってるから皆に配って…マイアは隣の宝箱から冷たいお茶の水筒をお願いね」
と、ナッツ達に配給係を頼むと、開けて中身を取り出すと消える宝箱を不思議そうにしなからも二人は、ベルタ子爵の配下の方々や、あのテカテカおやじの一派に反旗を翻し捕まった騎士さんへと手分けして食事を配っているのだが、なかの数名は監禁するだけでは危険と判断されたのか手枷や足枷が着いたままだったので工具も出して解放する様にお願いして、俺はメインモニターで三階層に飛ばされた街の様子をながめていた。
食事を取りみんな落ち着いた様なので今の状況を伝えると、ベルタ子爵の配下の一人が、マイアに、
「我々は一足先にベルタ子爵に例の事を…」
と言った瞬間にマイアの顔色が変わり、
「兄上、大変なのです、早く王都に連絡をしなければ!!」
と焦るので話を聞けば、
今朝、到着したザムドール軍とは別に、千人程度の部隊が別ルートで王都を目指し、主力部隊の居ない王都に雪崩れ込み制圧する作戦だというのだ…
『あのテカテカは本当にろくなことをしない…』
と呆れながらも、俺は、
「ガルバルドさんの持ちかえった情報にはそんな作戦無かったが…」
というとマイアが、ガルバルドさんが逃げ出した後に、ラーストが地下牢を訪れて、
「奪われた情報などもう役には立たない、何故ならすでに…」
みたいにペラペラと今後シルフィード王国を奪うまでの計画を喋って高笑いをして行ったらしい。
『典型的な悪人だな…』
と呆れる俺だったが、ナッツはマイアに、
「マイア様、ご存知ですか?…
勝ちを確信して、ペラペラと計画を教えてくれる奴は必ず負けるのですよ…ねぇ、キース様。」
というので、俺は、
「それはそうだけど…
コア、転移スキルか念話スキルって出せる?」
と聞くと、メインモニターに映るコアは、
「スキルはスキルスクロールとして出せますが、転移スキルは一度現地に赴き登録をしなければなりませんし、念話スキルも同じく相手に触れて登録する必要があります」
と報告してくれた。
『それでは駄目だな…』
と思っていると、コアが、
「マスター、ダンジョン一階層部分に人が複数侵入しております。」
と報告してくれたのでメインモニターに地上を映し出すと、草木も生えていない更地をベルタ子爵達がウロウロしているので、地上までの階段をダンジョンポイントで設置して、
「悪いナッツ、上の方々を呼んで来てよ」
と頼むとナッツは、階段を駆け上がって行った。
「ベルタ子爵様ならば王都に念話網も持っているだろうが…連絡だけでは…」
と呟くと、コアが
「マスター、サブマスターとならば通話可能です」
と驚く報告が入り、『どれどれ?』と、シーナさんとの通話を試してみる。
モニターの端の小窓にある通話の機能のシーナさんの文字を選択すると、モニターから音声のみで、
「なに、なにコレ!?」
と慌てるシーナさんの声が聞こえた。
「シーナさん聞こえる?」
と俺が語りかけると、
「あれ?旦那様?!」
と驚いていたが、俺が現在の状況を説明すると、シーナさんは、
「あぁ!だから数日前に、体がいきなり光って…何かなぁ?って思ってたの…」
と、かなりユルい反応であった。
俺が、
「王都の方は変わりない?」
などと、話しているとマイアが、
「兄上、王都と会話しておられるのですか?」
と聞くので、俺は、
「正確には隣町のセーニャだけど…」
伝えるとシーナさんから、
「違いますよ、旦那様…ホークスさんが村の武装をした親方達を連れてセーニャに転移されて来て、ヒッキーちゃんとボッチ君の話しでは、旦那様達王国軍が居ない城が危ないと、数日前より城にて警戒をしておりますよ」
と報告してくれた。
『ヒッキーちゃんにボッチ君…流石だよ…』
と泣きそうになる俺に、階段の上からシルフィード王国軍の方々を連れたナッツが帰って来てくれた。
シルフィード王国軍の本陣を地上部分に移動させて、投獄されていた方々の健康チェックをしてくれるらしいが、今の問題は別動隊を城に残る兵士だけで撃退出来るかだ…
しかし、ベルタ子爵様とモニター前で話していたのだが、シーナさんがおかしな事を言うのだ…
「旦那様、千人ほどならばマシロ様も加勢に来て下さいましたのと、王子殿下が私のベッキーに危害を加えようとする輩は許さんと、それはそれは勇ましく…」
と、報告してくれたのだが…
「マシロ様って…」
と驚く俺に、シーナさんは、
「はい、精霊の国からの助っ人としてチャチャ様からのお願いで…街の皆さんにも大人気で…」
と言ってくれたが…もうひとつ状況が解らない…
しかし、メインモニターにピロンとメールが届き、大体話が見えてきた…
そう、神様ファミリーがかなりお怒りのようなのだ…
『キース君へ…
本当はナビゲーターのコアへの移行を無事に済ませた後にダンジョンを作れたら良かったのでしょうが…しかし、人々を苦しめる輩を許す訳にはいかないのも確か…ナビゲーターの姉弟には悪い事をしました…
シーナさんの護衛にマシロちゃんを派遣してもらいましたし、ザムドール王国には聖騎士団を連れたチャチャちゃんが怒りながら転移しましたのでご安心ください。』
と書いてあり何だか急に力が抜ける気分だった…
確かに全面戦争より被害は少なくなったが、こんな馬鹿らしい戦いに、ヒッキーちゃんとボッチ君が命をかける意味があったのかと…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます