第201話 だって強さは愛だもの
ベッキーさんはこの1ヶ月で、どこに出しても恥ずかしく無い最強の嫁へと成長した。
アイテムボックスには、ガルさん親子と錬金術師達の力作でありジャルダン村の技術の結晶、ポイント交換ではなくイチから村で作り上げた新作のバリスタと、魔鋼を使ったバリスタの矢が入っているので、不意に大型魔物に出会しても敵を屠れる火力と、業火のバーバラ直伝の範囲魔法で広範囲の雑魚も燃やせるし、一騎打ちでもヒッキーちゃんが夜なべをして古の森をサーチしまくって集めた魔鉱と、魔鋼や、魔物素材を贅沢に使ったドレスメイルと、ロングソードでそこらの兵士とも渡り合える剣技を見せてくれる。
一度マスタールームで、モニター越しに監視をしていたボッチ君が、ポソリと、
「ベッキーお姉様は、あれで正解なのでしょうか?」
と素朴な疑問をなげかけられ、一瞬ドキリとした俺だが、正直料理や洗濯などよりも、王子殿下の婚約者には強さが必要なのだ!…たぶん…きっと…
と自分に言い聞かせ、
「ボッチ君、あれで良いんだよ、だって強さは愛だもの…」
と伝えると、ボッチ君はモニターから目を離さないままに、
「マスターは、ベッキーお姉様を宇宙刑事にでもするんですか?」
とツッコむ…
『中々やるな!』
と俺は、ボッチ君のセンスに感心した。
余談ではあるが、ヒッキーちゃんは、連日のベッキーさんのレベル上げの為の闘技場の運営と、素材集め以外はボッチ君のお世話に明け暮れている。
モニターの前から余り動かないボッチ君にご飯を届けたり、飲み物を用意したりして、
「お姉ちゃんありがとう」
と言われる度に、やり場のない母性本能が暴れ出して、
「マスター、もう、ボッチ君は私が産んだ事になりませんか?」
と訳の解らない事を言っていた。
そんな事をしながらも、俺はこの1ヶ月で様々な作業をこなした。
まずは、マシロ様との約束である唐揚げと餃子のレシピをロッソさんと何パターンが試し、現物もたんまり用意してシーナさんとナッツとセラさんの四人で聖都ダリアに届けた。
もう、アホみたいにマシロ様が喜んでくれたし、作り方を獣人族の方々に伝えることも出来た。
マシロ様は、醤油についてパパさんに質問してくれたらしいのだが、パパさんからのお手紙で、
『人化のスキルも習得出来ていないのならば、食い物の事なんか気にしないで頑張りなさい。』
といわれたらしくかなりションボリしていた…
マシロ様は、言語もそうだがどうやら新たな何かを習得するのが苦手な様である…
人化が出来て、初めて獣人の神になるための修行が始まり、獣人の長としてこの世界に獣人の国を作り、獣人達ががこの世界に馴染めば、ようやく神々の仲間入りする予定なのだそうだが、言葉はカタコトだし人化に至っては全く出来て居ないらしい…一緒に飛ばされた獣人の方々は既に普通に話せているのに…
まぁ、しばらくは塩唐揚げと、酢胡椒で食べるニンニク抜き餃子で我慢して、修行を頑張って貰うしかないな…と思いながら俺は聖地の森からシーナさんと一緒に大教会で待ってくれていたナッツとセラさんの元に向かい、この後シーナさんはセラさんを護衛につけて聖都ダリアを巡り、俺とナッツは貰った土地を整備する為に作業を開始した。
結婚祝いのポイントを沢山貰ったので、敷地を壁で囲み、整地した後で、既に有る転移部屋から助っ人の大工チームを転移してもらい門扉などの設置を依頼する。
ジャルダン村の建設エリアでは既に商会の建物と、パン屋に、お風呂付きの宿屋と食堂に酒場を作り、移築して職員を派遣する段取りを商会の皆が進めてくれていたので、数日中には、聖人様の不思議な力で、一夜にして街が現れるという奇跡が起こる予定である。
勿論、結婚祝いで貰った三万ポイントを贅沢に使い、ジャルダン村と同じ7メートルの分厚い壁と、村と同じサイズの門扉が設置された敷地には、しっかりした作りの店が並びに、ステンドグラスを使った宿屋や酒場…
完全に趣味に走った建物は、聖都に巡礼に来るお金持ちを狙い撃ちして稼ぐ目的である。
あとは、神の救いを求め、全国から聖都ダリアへと集まった孤児達にも、売り子などの仕事を紹介して、稼がせてあげたいという側面もあるので、かなり力を入れて聖都の土地を整備した。
そして、バタバタの中であっという間に時間は流れて、明日、遂にベッキーさんを連れて王家の方々に逢いに向かい、そこで、ベッキーさんと護衛騎士隊の皆さんとお別れになる予定である。
護衛騎士隊の全員も暇を見つけてはベッキーさんと協力して大物を倒していたので、そこらの騎士よりも強くなっているので、ベッキーさんの護衛も安心して任せられる。
中でも守るべき女性が出来たバッツさんは、ハーメリア嬢の為に頼れる男になるべくかなり頑張って強くなった、
ベントお兄ちゃんの見立てでは、ダイムラー伯爵と手合わせしてもハイポーション三本程度で済む程の腕前らしいが、強いのかな?…それって…とも思うが、とっととザムドール王国を押し返して、その勢いのまま何とか終戦に向けての話し合いのテーブルに相手を着かせて、バッツさんがハーメリアさんと一緒になれる様にしてあげたい。
まぁ、ステータスモリモリにしたベッキーさんは一人でもかなり戦えると思うからバッツさんは退職してもらい、第三国でハーメリアさんと所帯を持ってもらっても良いかな…などと思いながら、ウチの村恒例のドンチャン騒ぎでベッキーさんの旅立ちを祝っている。
この1ヶ月で、ミリンダさん達裁縫上手な女性陣は、ベッキーさんの服を仕上げ、ベアードさんと、グレイさんの細工職人親子は、ベッキーさんのパーティー用の宝飾品を作成し、嫁入り道具もバッチリである。
それ以上に、大型兵器からボウガン数丁に武器や装備の数々と、戦う準備の方が万全なのがすこしアレだが…別に城を占拠しに行くのでは無いので大丈夫だろう。
明日の朝、ニンファの町に転移してベッキーさんから住民への挨拶をしてから、セーニャの別荘に転移して、当面はセーニャの別荘を拠点に、城の方々とやり取りをしてからドカンと婚約発表の予定である。
定期的にセーニャの別荘で、アルサード王子殿下とベッキーさんはデートをしていたが、生身になったベッキーさんとはまだ王子殿下は逢っていない…
しかし、アルサード王子は、二次元のベッキーさんにも、メロメロだったのに、三次元ベッキーの破壊力に耐えられるのだろうか?と心配しながらも、俺はドッキリの仕掛人の様にわくわくしていた。
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