第200話 新メンバーと花嫁修業


さて、ベッキーさんを囲んで皆さんが騒いでいる間に、俺はもう一仕事する必要がある…

ニンファの教会の隅でひっそりとマスタールームに意識を飛ばした俺は、ベッキーさんの後任との挨拶が待っているのだ。


ベッキーさんの設定の際に、後任の設定も有ったので、各地に散らばる別荘地の監視と警備をメインに頑張ってくれる防衛担当の人員を募集しておいたのだが、マスタールームに入ってすぐに、俺は1つの不安に押し潰されそうになった…


なぜなら、引きこもるスキルから、ヒッキーちゃん…

そして、別荘管理の、ベッキーさんという法則であるのでならば…

ヤバい!防衛担当は『ボ○キー』になるではないか!!と、今になり気がつく俺に、


『マスターはじめまして』


と男の子の声が響いた。


ヒッキーちゃんが、


「弟分だ!」


と嬉しそうに話すが、益々俺の不安が大きくなる。


俺は、


「えっと、これからよろしくね。

色々と設定する前に、名前を教えてくれるかな?」


と、勝負にでた。


『最悪、ボ○キー君であったとしても、設定で変更が出来るし、さすがに神様が作ったスキル…

そんな卑猥な名前は選ばれないシステムであろう…いや、頼むあってくれ!』


と祈りながら返事を待つと、


『私の名前はボッ…』


っと発表しかけた彼の声を思わず遮って俺は、


「自己紹介の前に質問いいかな?」


と聞く、ヒッキーちゃんが、


「なんですかぁ!?」


と、流れを止めた俺に文句を言っているが、声の主は、


『はいマスター、何なりとご質問下さい。』


と答えてくれたので、俺は、


「ありがとうね、1つ聞きたいのは君の名前の最後の文字を教えて欲しいんだ。」


と、『ボッ』まで聞いてしまったので、最後の文字が伸ばし棒で無いことを再度祈りながら返事を待つと、


声の主は、


『へっ?最後の文字は、ボッチだから〈チ〉ですね。』


と教えてくれた。


セーフ!!友達が居ないっぽい名前だが、卑猥で無い事を安堵しながら、俺が、


「良かった、ボッチ君だね、これからよろしくね。」


というと、ボッチ君は、


『マスター、流石に…ねぇ…』


と、俺の心を察してくれたよで、少し呆れては居たようだが、(キー)の系統の名前で無い事を本人も安堵している様だった。


今回のナビゲーターもベッキーさんの様に、ヒッキーちゃんよりキレ者かもしれない…

などと考えてながら各種の設定を終わらせると、マスタールームに十歳ぐらいの男の子が現れた。


ボッチ君は、俺とヒッキーちゃんに挨拶を済ませると、ベッキーちゃんからの引き継ぎノートを片手に、モニターをマルチ画面にして監視をしながら、防衛任務を開始した。


ヒッキーちゃんが、


「マルチタスク!」


と驚いて、


「私だって!」


といって、おやつを食べながらなにかをしようとするが、


「それは、マルチタスクではなくて、ながら作業だよ」


と指摘すると、ヒッキーちゃんは張り合うのを諦めて違う点でお姉さんアピールをしようと、


「ボッチ君、ベッキールームをボッチ君用に模様替えしようか?」


などと、ボッチ君の世話を焼き始めたので、あとはヒッキーちゃんに任せる事にして、


「具現化は夜寝る前だけ、緊急で必要な物を具現化する時は連絡してね」


と、ヒッキーちゃんに釘をさし、ボッチ君には、


「ゆっくりで良いから、あまり頑張り過ぎないでね。

横のヒッキーちゃんが騒がしいと思うけど、悪い子では無いはずだから許してね」


と伝えてマスタールームを後にした。


教会の隅で目覚めると、またポケットに小銭や花や、お菓子が突っ込まれていたので、神官さんにそれらを渡して、既に護衛任務をはじめているベントお兄ちゃん達とベッキーさんを連れてジャルダン村へと戻った。


『さて、これからベッキーさんには、厳しい花嫁修業をしていただくのだ!』


と、言っても知識もマナーも完璧なベッキーさんにしてもらう修業とは、ジャルダン村の闘技場でレベル上げをしてもらうぐらいである。


正直、社交界で行われるダンスなどは王城行ってからで十分だし、性能は勇者ばりのベッキーさんでも、生まれたてのレベル1では暗殺に怯えなくてはならない…

我が家のメンバーとしてそれは許されないのだ。


まずは、安全圏からのボウガン攻撃でウチの村人ぐらいの猛者を目指してもらう。


剣術は、ベントお兄ちゃんやシーナさんにダイムラー流を叩き込んでもらい、魔法は、サーラちゃんとバーバラさんの二人が師匠となり、

鍛冶屋の親子と錬金術師達がタッグを組み、ベッキーさん用の装備を整えて、約1ヶ月余りで騎士団員と渡り合う程の無敵の嫁を目指す。


ベッキーさんはアイテムボックス持ちなので、作った大型武器も持ち歩ける。


だから『どこでもバリスタ』や『もしもの時の大岩』など青い猫型のヤツも更に真っ青になる火力を保持することも可能であるが、それを取り回す為のパワーが絶対に必要であり、ベッキーさんはジャルダン村に到着し、軽い挨拶と服の採寸などを終わらせると休む間もなく、現在、闘技場でヒッキーちゃんがコーチになりスポ根マンガのような修業を始めている。


手頃な魔物をヒッキーちゃんが、落とし穴にハメて、麻痺ガスで痺れさせ闘技場へとデリバリーして、


「ベッキー訓練生!ターゲットをセンターに入れて撃て!!」


と投影クリスタルからサングラスに杖をついた姿のヒッキーちゃんが指示している。


ベッキーさんをバスターマシンに乗せるつもりか?

と思うが指示している台詞が、初号機のパイロットみたいだし…


『ボケが渋滞してるなぁ~』


と思いながらも頑張っているベッキーさんを眺めていると、痺れて動かないとはいえ彼女は見事にボウガンで魔物を倒していく。


「やりましたお姉様!」


とベッキーさんが喜んでいると、ヒッキーちゃんが、


「ちがう!今はコーチだ!!」


とノリノリでベッキーさんをしごいているので、俺が、


「程ほどにしておきなよ、まだ初日だし…」


と心配するが、ベッキーさんは、


「いえ、私頑張ります!」


と闘志を燃やしていた。


まぁ、強くなって損は無いよね…

と自分を納得させて、修業の邪魔にならないように俺はマイホームへと戻った。

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