第197話 報告の旅の始まり
村に戻り、皆に結婚の報告をすると今にも祭りが始まりそうになったが、ベッキーさんの婚約者発表が近いと告げると村人達は急に職人の目になり、
「待ってました!」
と様々な準備を始める。
それは祭りの準備では無くてベッキーさんの為の嫁入り道具の準備である。
ヒッキーちゃんが中心となり、嫁化すると衣類から何から全く無くなるベッキーさんの為に村人一丸となり作った普段着やドレスや、それを入れるタンスなど、村で作れる物は各地からジャルダン商会の職員と、敷地内回収を使って材料を取り寄せヒッキーちゃんが、投影クリスタルを使い前世のおしゃれな物を職人達に見せて製作を依頼していた物で有った。
俺が、ヒッキーちゃんに
「流石ヒッキーちゃん、俺は嫁化する事ばかり気にして、こっちに来た後の事を考えてなかったよ」
といって、素直に誉めるとヒッキーちゃんは、
「妹分の幸せの為に必死になるのは、お姉ちゃんの特権です。
こればっかりはマスターにもあげません」
と言いながら、投影クリスタルに映し出されたヒッキーちゃんが『エッヘン』と胸を張っている。
ベッキーさんの衣服担当主任をしているらしいミリンダさんは、
「奥様、ベッキー様とお揃いのウェディングドレスを仕立てて有りますので、一度合わせて頂けますか?」
と、シーナさんに声をかけてたのちに俺にも、
「旦那様、ベッキー様が現世にお見えになり次第お連れ頂けますか?
ヒッキー様から、サイズは伺っておりますが、実際に合わせてみませんと!」
と、お願いされた。
では、早速…と自室に戻り、旅の疲れを癒す様にベッドに倒れ込み、俺はそのままマスタールームへと意識を飛ばした。
マスタールームでは、ヒッキーちゃんとベッキーちゃんが待ち構えており、
「聞いてると思うけど、ベッキーさんが嫁化機能で現世に来る事になりました。」
と俺が告げると、
ベッキーさんは、ペコリと頭を下げ、
「マスターありがとうございます。
私のわがままを叶えて頂き…私は幸せ者です。」
と涙を流しながら微笑んでいた。
ヒッキーちゃんもボロボロと泣きながら、
「えがった…えがったねぇ、ベッキーちゃん。
でも、幸せになるのは今からだがらぁぁぁぁぁ!」
とベッキーちゃんに抱きついてサスサスしている。
ベッキーさんはヒッキーちゃんに、
「ありがとうございますお姉様…」
と抱き返して、二人で暫く喜びを分けあった後に、ベッキーさんから、
「マスター、誠に勝手ながら3日お時間を頂けますか?」
と珍しくお願いをされた。
俺は、
「別に良いよ。
じゃあベッキーさんは3日間はお休みにして、4日後にニンファの町で精霊から人になる事をニンファの皆に伝えておくよ」
と伝えてマスタールームから出ようとすると、ヒッキーちゃんが、
「マスター、メールが来てました。」
と、報告してくれた。
俺は、『あれかな?結婚お祝いポイントとかかな?』等と思いながら、モニターの前に移動して、画面を確認すると、やはり、
『ご結婚おめでとうございます。
結婚お祝いポイントを三万ポイント送らせていただきました。
何でも、日本でのお祝い金には割り切れない額を包むと聞きましたので、いつもより奮発してみました。
お父様が三万でも、一万五千に割れるのに…変なの。
と言っていたので少し不安ですが間違っていたらごめんなさい。
何しろかなり前に聞いた話なので…』
と書いて有った。
言われて見れば確かに気になるが、三万ポイントも貰えるから俺的には全く文句は無いし、むしろ聖都の空き地の整備にポイントが必要なのでありがたく貰っておく事にした。
俺は、いつもの様にマスタールームの天井に向かい、
「神々に感謝致します。」
と、自称管理人の名乗りをやめた神々に感謝の祈りを捧げた。
さて、ベッキーさんの色々な事も大事であるが、俺には、『結婚報告』という一大イベントが待っているのだ。
マスタールームから自室にもどり、まずはナッツに、
「トーラスさんと一緒にサイラスのジョルジュ様に、旅の終了と、俺が結婚した報告を頼めるかな?
後日正式な挨拶には向かうけど先に報告回りに行く先々でどうも時間がかかりそうだから…」
と、理由をつけて、ナッツにはサイラスに行ってエリーちゃんと会える時間をプレゼントした。
護衛騎士隊の皆さんに、
「4日後の儀式が済むまでは、護衛対象が居ないので、自由時間ですよ。」
と報告して、隊長のベントお兄ちゃんを連れ出し、シーナさんと三人で、ニンファの町のジーグさんや住人のみんな、それとナナムルの街で辺境伯様に挨拶と報告をした後に、ダイムラー伯爵家へ報告に向かう予定で転移をしたのだが、ニンファの町では、4日後に儀式を行いベッキーさんを降臨させると言っただけでお祭り騒ぎが始まり俺達の結婚報告どころでは無くなってしまった。
仕方ないので、馬車を転移させてベントお兄ちゃんの操る馬車に乗りナナムルへと向かう事にしたのだが、道中でシーナさんと馬車の客室で二人っきりになり、
「さっきの勢い凄かったね」
などと話していると一時間程経つがナナムルまで着かない…
不思議に思い客室から外を見ると物凄く景色の流れが遅いので御者台の方の小窓から、
「ベントお兄さんどうかしましたか?…もしかして、何かトラブルですか?!」
と心配して声をかけると、ベントお兄ちゃんは、
「いつも誰かが側に居るから、イチャイチャも出来ないだろう。
俺は、気にしなくて良いんだぜ…ただ、早く甥っ子を頼むぞ」
と、笑っているので、俺は呆れて、
「走ってる馬車で、おっぱじめる訳ないでしょ!」
とツッコむと、ベントお兄ちゃんは、
「ん?そうか??父上はチョイチョイ…」
と言い出すと、シーナさんも、
「ちょ、ちょっと兄上!」
と慌ててベントお兄ちゃんの暴露を止めるが、ゴメン…シーナさん、もう聞いちゃった上でドン引きしちゃったよ…俺…
確かに奥さん三人も居ると馬車でも頑張らないと駄目なのかな?
などと要らない事を考えながらナナムルに向けて馬車の速度を上げて貰った。
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