第195話 旅の終わり
神様ファミリーとの長いお茶会が終了し、洞窟の祠へと戻って来た。
戻ると言っても祈りを捧げた状態から目を開けただけで、あちらでかなりの時間を過ごしたはずだが、チャチャ様に、
「早かったね。」
と言われた。
「どれぐらい祈りを?」
と、俺が聞くと、チャチャ様は、
「ほんの数十秒だよ。」
と教えてくれ、驚く俺をよそに、
「つぎは、私だね」
と言ってチャチャ様が祈りを捧げると、彼女はすぐに祈り終り、ガバッと立ち上がったチャチャ様が、
「結婚おめでとう!
マシロ様、二人は神様の立ち会いで結婚したんだって。」
と聖獣のマシロ様に報告し、マシロ様からも、
「メデタイ、イワウ」
とお祝いの言葉をもらった。
それから暫くマシロ様達とお喋りをしていると、マシロ様がこっそりと、
「キース君、この世界の素材で唐揚げと、にんにく抜きギョーザって作れる?」
っと日本語で聞いてきたので、俺も小声で、
「餃子はまだ、こっちで作ったこと有りませんが、両方多分ですが作れますよ。」
と伝えるとマシロ様は、
「お願い、作り方を獣人族の皆に教えてくれないかな?
ほら、伝えたくても、レシピも知らないしもしかして何処かに有るかも知れないとチャチャに聞こうとしたけど言葉が…だからお願い!」
と懇願された。
そうなれば、しっかりしたレシピを試してからにしたいが、また聖都に来る為に土地が必要だと考えた俺は、チャチャ様に、
「チャチャ様、お願いが有ります。
聖都に土地が欲しいのですが、良い場所知りませんか?」
と質問すると、チャチャ様は、
「キース君ならば、例のアレであっという間に壁も作れるから都の横の草むら辺りに町とか作ったらは?
教会のおじいちゃん達にお願いしてみるから、この後少し待ってて。」
と言ってくれた。
マシロ様に、
「一旦帰って何度か試作したレシピを届けます。
ミンチを作る機械は既に作ってあるので、そんなにお待たせはしませんので…ただ、唐揚げは醤油が有りませんので、塩唐揚げになりますが…そちらもニンニク抜きでショウガベースですか?」
と、俺が伝えるとマシロ様は、
「ウン、ニンニク抜きでヨロシク。
塩で十分だよ楽しみにしてるね…でも、やっぱり醤油が無いのか…パパなら何とかなるかな?今度聞いてみるよ。」
と小声で言って、俺達を送り出してくれた。
『えっ?異世界で神様しているんだよね…マシロ様のパパさんって…連絡って出来るんだ…』
と、少し疑問に思ったが、
『まぁ、地球の神様とも連絡が出来たからこそ、俺が派遣されたらしいから…多分神様パワーでビビビっと出来るのだろう』
と、自分で納得しながら、聖域の森から聖都の神殿に戻ると用事の済んだイグノ王国の皆も俺とシーナさんの帰りを待つシルフィード王国組と合流していた。
ナッツ達が、
「どうでした?」
と聞いて来るので、俺は、
「神様と直接会ってきたよ」
と言うと、ナッツ達では無く部屋の隅にいて皆の案内をしてくれていたであろう神官さんが、
「ま、誠に?!!」
と驚いていた。
イグノ王国のアークバルド国王陛下も、
「本当か?!」
と俺達に詰め寄りるので、シーナさんが、少し怯えながら、
「はい、私も一緒にお茶会をいたしました」
と答えると、アークバルド国王陛下は、
「いいなぁ、バルド様に逢ったんだ…」
と、羨ましがる。
イグノ騎士団の隊長さんが、
「ごめんね…陛下は、バルド神の熱狂的な信者だから、ほら、陛下ってバルド神から名前をもらってるからね…」
と教えてくれ、陛下は、陛下で、
「どんな感じだった?」
と、興奮気味に聞いてくるので、俺は、
「神様達と、お茶会して、お話して…結婚の立ち会いをしてもらい祝福されました。」
と伝えると、今度は俺の護衛騎士隊のメンバー…特に隊長のベントお兄さんが、
「やったぁー!」
と、喜んでくれた。
「帰ったら父上や母上達に報告出来る!」
と言いながらシーナさんを高い高いしながらクルクル回っている。
「お兄様、目が回ります…」
と、抗議しているシーナさんも笑顔である。
『小さい頃から兄妹であんな感じだったのだろう…』
と、俺は思いながらも周りはイグノ軍の方々は大興奮する王様をなだめ、俺の関係者は結婚の件で盛り上がり、教会関係者は巫女以外で神と対面した女性…しかも、お茶会をして結婚の祝福も直接された新たなる聖女シーナの登場に沸き立っていた。
そして、ややこしい状態に拍車をかける様に、どこでどう話が繋がったのか、
「聖都の隣に、聖人と聖女の夫婦が引っ越してくる」
とか、
「新しい聖女さまの教会が建つ」
だの、
「聖都の隣の草むらが、お昼寝の聖人様の昼寝ポイントに認定された」
などと、土地を手に入れた俺達の噂が勝手に大きくなり一人歩きしてしまい、教会の方々からご好意でもらった土地を見にいくだけでも大騒ぎになってしまったのだった。
パレード状態の大通りを移動しながら、チャチャ様が、
「ごめんねキース君…おじいちゃん達が興奮しちゃって…」
と謝る。
現地に着くと、既に杭とロープで敷地が区切られており、
『聖人様と聖女様の土地。』
とまだインクの乾いていない手書きの立て看板まで有った。
俺は、チャチャ様に、
「ここの開発は後日で良いですか?
何だか疲れちゃったから…」
と言うと、
「いつでも良いけど、多分マシロ様が食べ物のおねだりしたでしょ?
そっちは、少し頑張って近いうちにお願いします」
と、マシロ様との内緒話は小声 & 日本語だったが、チャチャ様にはマシロ様の考えはお見通しだったようだ。
俺は近いうちの再会を約束して、無料で貰った1ヘクタール程の土地を別荘指定して、マスタールームに居るヒッキーちゃんとベッキーさんに、敷地内に村に有るような石作りの転移部屋を出してもらった。
小さな小屋だが、ニョキっと生えたような小屋を見た聖都の方々は何故か祈りを捧げていた…
チャチャ様達に土地の礼を述べてから、一旦旅をしてきた全員を、複数回に分けて転移させてイグノ王国まで帰る事にしたのだが、小屋に数人入るとフッと消えてまた次の数人が入る度に、
「おぉ…」
と、どよめきが起こる。
聖都の住人達だけでは無くて、イグノ王国軍の方々からも、転移に対して初めてなので、不安そうな声が漏れているが様々な事が起こりすぎて疲れてしまった俺は、とりあえず作業を急ぎ馬車や馬もベッキーさんの、
「商会の土地からイグノ王国軍の方々が退避出来ました。」
との報告が来たらすぐに転移させて、最後に俺が、
「では皆様ごきげんよう!」
と聖都の方々に別れを告げて転移部屋からイグノ王国へと戻った。
その日の夜、イグノ王国軍の皆と軽いお別れ会を開いた翌日、イグノ王国のジャルダン商会の敷地からセーニャの町までシルフィード王国組を転移させ、シルフィード王国の王都クレストの城を目指した。
昨晩のお別れ会で、アークバルド国王からの結婚祝いとして、希少なミスリルと金の合金の指輪を俺とシーナさんとにペアでプレゼントしてもらったのだが、流石は鍛冶の町…陛下の指示で急遽作った筈の結婚指輪であるが、素晴らしい出来と、シルフィード王国ではあまり見かけない合金で出来た指輪をウットリと見つめるシーナさんを眺めながら、
「あぁ、俺、結婚したんだな…」
と、じわじわ実感している自分が居た…
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