第194話 神に誓う


神様ファミリーとのお茶会は続き、遂に俺とシーナさんの将来についての話になった。


俺に与えられた仕事は、やはりこの世界にダンジョンを生み出して、そのダンジョンを運営する事…

そして、ダンジョンマスターという仕事に就いてしまうと、もう人間という枠では無くなると教えてもらった。


ダンジョンマスターの仕事は、冒険者が沢山入るダンジョンを作り、地脈と言われるこの世界のに張り巡らされた血管みたいなエネルギーの流れから悪い成分を使い魔物を生み出し、冒険者に倒させて、この世界に安全なエネルギーが巡る様にすることである。


ちなみにであるが、世界樹という馬鹿デカい木で地脈を吸い上げ濾過して魔力を葉っぱから世界に振り撒く方法もあるらしいが、あちらは世界樹に溜まった悪意から定期的に魔王みたいな強くて悪い存在が現れるので、勇者などが必要となるらしく今回はより安全なダンジョンを採用したのだそうだ。


悪意のほとんど無い天国みたいな世界では完璧な循環型濾過装置なのだそうだが、ドンパチ戦争をしている世界では、魔王製造装置に成りかねないとは…ドラゴンをクエストする世界でも復活出来る葉っぱのせいで、定期的に魔王が出てくるのかな?…

とまぁ、そんな理由でダンジョンを作って何百年…下手をすると何千年という年月を浄化作業を手伝ってくれる冒険の為に魅力的なアイテムを生み出し、ダンジョンという存在自体をこの世界の一部にするまで続く苦行…お賃金は、ダンジョンポイントと呼ばれるポイントを使い、大体の物が作り出せるという一点のみ…

どうやら俺は、生まれ変わる前から与えられた使命みたいなモノだから覚悟は出来ているが、問題はシーナさんである。


貴族としての俺に嫁ぐと思っていたら、貴族どころか人ですら無くなる男の所に嫁ぎ、一般とは違う時間の中で生きるなどという覚悟を求められているのだ。


メディカ様がお腹を優しく撫でながら、


「シーナさん…あなたには、不老不死となりキース君と生きる未来か、人の子として天寿を全うする未来かを選んで欲しいのです…

いきなりで、申し訳ないのですがゆっくりで構いません。

この空間は時間の流れが緩やかなので、二人で話し合って納得の上で、結論を…」


と、シーナさんに語りかけている。


シーナさんはメディカ様の言葉を聞き終わると、シンキングタイムなど一秒も無く、


「キース様と歩む未来を選びます。

私の人生は、キース様に出会ってようやく色付きました。

またあの灰色の世界で生きる自信はありませんので、キース様が嫌がっても離れてあげません」


と宣言し、俺を見てニコリと笑った。


バルド様が、


「では、お嬢さんダンジョンマスターの嫁…というかサブマスターとして生きる事についての質問は有るかな?」


と、シーナさんに聞くと、彼女は少し「う~ん…」と唸った後、


「神様、不老不死になるらしいですが、どの時点から(不老)になるのでしょうか?…

お婆ちゃんのまま(不死)とかは…」


と気まずそうに聞く、すると神様ファミリーの娘ルヴァンシュ様が、


「キース君が、自宅警備スキルの真の姿を解放した瞬間からの不老不死だけど、安心してね。

ダンジョンポイントで若返る薬も作れるから。」


と教えてくれた。


『若返る薬ってスゲーな…お貴族様が大金…いや軍でも動かすな…』


と、俺が考えていると、ルヴァンシュ様は、


「ナイス!

既にダンジョンマスターとして、冒険を呼び込むアイデアかな?」


と、誉めてくれた。


『あぁ、ナルホド…

人間の欲を刺激するアイテムが手に入る様にすれば、貴族が冒険者を雇ってダンジョンに派遣するなぁ…』


などと考えている俺の隣で、シーナさんが小さく片手を上げ、


「はい神様、質問が…

その、不老不死になっても赤ちゃんは産めますか?」


と真っ赤な顔で聞いている。


すると、神様ファミリーの三人は、


「勿論です」


とシーナさんに答えた後で、俺を見てニヤリと笑う…


『頼む、この瞬間は俺の心を読まないで!』


と俺が思っていると、隣に座るシーナさんが、


「良かった…」


と呟き、ニコリと俺に微笑む。


『こんな滅茶苦茶な状況でも、俺との未来を真剣に考えてくれているシーナさんを幸せにしなければ!!』


などと心の中で誓いながらも、シーナさんの笑顔を見て、泣きそうになる俺にバルド様は、


「私も口下手だったから解るが、そういうのは声に出して初めて意味が有るんだよ」


と、俺の心を読みアドバイスをくれ、


「もう、ついでだし良いチャンスだから結婚しなよ」


と提案してくる。


急な展開に少し慌てる俺とは対象的に、神様ファミリーはキャッキャと楽しんでいるみたいだし、シーナさんは瞳を潤ませて俺を見ている…


『駄目だ、狼狽えるな俺!シーナさんが不安に思うだろうが!!』


と、自分に気合いを入れると、俺の心を読みまくっている神様ファミリーはニヨニヨしながら、俺を生暖かい眼差しで見ている。


そして、「コホン」と軽い咳払いをしたバルド様が、


「では、汝、キースはこの女性シーナを妻として生涯愛する事を誓いますか?」


と、聞くので覚悟を決めた俺は、


「はい!誓います。」


と即答する。


つづいて、メディカ様が、


「では、シーナさん、

キース君を支えてくれますか?」


と優しく問いかけると、シーナさんは声を少し震わせながら、


「勿論です」


と答えた後、俺にクシャクシャの笑顔を見せてくれた。


最後は、ルヴァンシュ様が、


「おめでとう、この時より二人を夫婦と認め祝福します。

教会の木像では無く、本物の神様の前で誓った夫婦なんてこの世界初だから、ちゃんと幸せにならないと駄目だよ」


と、言った後にシーナさんと「良かったね…」みたいな話をしていた。


俺は、その間バルド様に、


『ダンジョン生成』


についての説明を受けていた。


『自宅警備スキル』と違い、好きな場所に指定出来るらしく、自宅警備スキルの伏せ字の機能、『覚醒』を選ぶと強制的に全てのヒッキーポイントのみで交換された物がヒッキーポイントに戻された後、〈ダンジョンポイント〉に換算される。


そのポイントを使い、初めのダンジョンを作る事が出来るのだが、ダンジョンにする現地に移動し俺が目視出来る範囲内で指定可能となるらしい…

そしてこの時注意が必要なのが、ヒッキーちゃんやベッキーさんのナビゲーターは、受肉させるか、ダンジョンコアへの書き換えに半月程かけなければ消えてしまう事…

つまり、覚醒させてから半月はスキル無し状態で、我慢しないとナビゲーターを引き継げないが、覚醒してすぐにダンジョンを作る事も可能ではあり、その場合はナビゲーターの人格がリセットされるのだ。


ベッキーさんは、嫁化してアルサード王子殿下の所に嫁ぐとして、

ヒッキーちゃんは…可哀想だからダンジョンコアとしての任務に連れて行くかな?…シーナさんとも仲良くやってるし…

しかし、いきなり結婚しちゃったから、帰ったらダイムラー義父パパ義母ママ達に報告に行かなきゃな…


どうしよう?披露宴のタイミングって…

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