第193話 神様に教えてもらおう


神様に質問出来るチャンスとばかりに俺は様々な事を聞いた。


と言っても、順を追って質問しようとしただけで、神様ファミリーの3柱には思考は筒抜となり、はっきり言って、マシロ様の時点ですでに情報が多すぎて処理出来ていない俺は、更に沢山の情報を3柱の神々に教えて貰う事になった。


先ずはマシロ様の事だが、神様ファミリーが元居た世界から上位の神様の判断で新たな種族を増やそうとして飛ばされたのが、聖地に居た獣人族の村人達であり、ルヴァンシュが現在担当の神様をダンジョンの実験の片手間で行っているらしく、マシロ様はその獣人族の方々のよく知る元の世界の神々の親戚みたいな聖獣様で、あちらの世界の担当の主神様からの派遣社員の様なポジションらしく、もっと力をつけて神様としての実力と、自分に祈りを捧げてくれる民を増やす作業中らしく、獣人族を守って絶やさない様に頑張っているのだそうだ。


そして、マシロ様が来た事で俺という人間がこの世界に来れる事となったらしい…

世界を渡るには条件があり、全く関係ない世界に飛ぶにはかなりの神様パワーや、アクシデント的な要素がないと無理なのだが、その世界に少しでも縁のある魂が有れば、少しの神様パワーで他の世界と交信や魂の派遣をお願い出来るらしく、マシロ様のパパさんは、元地球の方で現在は他の世界のダンジョンを束ねる神様なのだそうだ。


マシロ様がこの世界に飛ばされた新たな種族である獣人の神様候補になり、ダンジョンの事などをルヴァンシュ様が、そのマシロ様のパパに相談出来る様になった事で、


「忍耐強くて、ダンジョン管理とかのお話を読んだ事のある地球人を助っ人に呼んだらは?…ちょっと地球の神様に相談してあげるよ…」


という流れらしいが…俺は、


『何故獣人担当の神様にルヴァンシュ様がならないのかな?』


と素朴な疑問を考えていると、ルヴァンシュ様は少し悲しそうな顔をして、


「千年ちょっと前にね、他の世界とこの世界が接触する事故の様な事があってね…

こちらからは妖精族数名があちらに飛ばされ、あちらからは鬼族と呼ばれる身体能力の強い種族が数名飛んできたの…」


と話はじめたのだが、まとめるとルヴァンシュ様が担当しようとした鬼族の方々はこちらの世界の魔物や、現地の方々に喧嘩を売り、ルヴァンシュ様が保護に乗り出す前にラスト1人まで数を減らして、種族としては存続出来なかったというトラウマがあり、ルヴァンシュ様は『ダンジョン管理』という役職の神様になる事に決めたらしい。


ちなみに、その時保護した鬼族の少年と当時の巫女の間に生まれたのが、初代イグノ国王陛下という事で、イグノ王国として聖地…というか奥さんの実家的な場所を守るという感覚が今も何処かに有るらしく、聖地の守りとしての役割を続けているのだそうだ。


アークバルド国王陛下に鬼族とやらの血がウッスラ入っているのは、なんとなく理解出来たが、多分ではあるが長い年月をかけて流れ流れて、ダイムラー伯爵家にもその戦闘民族の血が入っていないかな?と考えていると、


メディカ様が、「う~ん…」と唸ったかと思うと、


「うん、キース君の予想通りね」


と答えてくれたのだが、俺の隣でシーナさんが「ん?」と不思議そうに俺を見て、何の事か聞きたそうにしていたが、伝えるべきかやめとくべきかを悩む俺を見て、神様ファミリーのパパ神様であるバルド様が、


「別に悪い事じゃないから言っちゃいなよ。」


とアドバイスをくれたので、シーナさんに先ほどのやり取りを説明すると、アークバルド陛下とダイムラーパパを並べて思い出してみたらしい彼女は、


「プッ」


と吹き出し、


「確かに同じ人種ですね」


と笑っていたのだが、


『シーナさんもあのパパの娘さんですよ…』


と考えている俺に、ゆっくりルヴァンシュ様は首を横に振り脳に直接、


『それは言っちゃダメかな…』


と教えてくれた。


新たな種族の認定は、飛ばされた先の世界で、その種族の次の世代が生まれた時らしく、獣人族は既にこの世界の住人に認定されているのであるが、数が少ない為に教会で保護している形をとっているのだそうで、現在マシロ様の代わりに担当しているルヴァンシュ様は、


「鮮烈なデビューで獣人族の存在をアピールしたいんだけどね…」


と、前回の鬼族の事もあり、なかなか踏み出せない悩みを打ち明けてくれてた。


『頑張れマシロ様…獣人族の未来は君にかかっている…』


などと考える俺にルヴァンシュ様は呆れながら、


「本当にそれ!…」


と相づちを打っていた…


次に生まれて来る神様について聞くと、神様ファミリーのママ神様であるメディカ様が、お腹をさすりながら、


「この子が生まれたら、この世界に新たな種族を産み出せる様になり、その種族の守護神になります」


と教えてくれたのだが、


「あれ?…神様が生まれたら新しい種族が産み出せるのならば、ルヴァンシュ様が誕生した時に種族は増えなかったのですか?」


と俺が質問すると、ルヴァンシュ様は恥ずかしそうに、


「色々話すと長くなるけど、こっちに来る前に生まれてたし、色々有って最初は破壊神?…みたいな感じだったから…」


と告白してくれたのだが、破壊神って神様界隈では


『昔はヤンチャだったから…』


みたいなノリなのか?!…まぁ、暴れている神様もちゃんとお祀りすれば良い神様になるって前世で聞いた事もあるし、破壊神って魔族とか悪魔とかを生み出すのかな?

などと考えているとメディカ様が俺の考えを読んだらしく、シーナさんのカップにおかわりのお茶を注ぎながら、


「キース君、魔族は魔法に長けた種族なだけで、悪魔はその世界の神様から見た敵対勢力の神様です。

人々の祈りを集められる神でなく、祀られなくなり、力を集める為に個人と契約したりして願いを叶えて魂などの強いエネルギーを手にいれたり、己の欲を叶えたいという強い望みをエネルギーにしているだけで、邪神も破壊神も神様というくくりですわよ」


と教えてくれたのだが、俺としては、


『う~ん…よく解らん…』


まぁ、神様にも色々あるのだろう…というのは理解した。


そして、俺が持つ自宅警備スキルがダンジョン管理システムの体験版の様なスキルという事はわかったのだが、問題は俺がテスターとしての任務だけなのか、ダンジョンのオープニングスタッフとして呼ばれたのかだが…

と考えていると、神様ファミリーも俺の思考を読んでいるはずだが、少し気まずそうにお茶をすすっている…


『多分、言いにくい方だな…』


と、軽く覚悟を決めた俺だった。

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