第179話 罰を受ける妖精と冬前の一仕事


うん、やってる、やってる…

罰を与えて一週間、ヒッキーちゃんが寝る間を惜しんでネトゲ廃人の様にモニターにかじりつき午前中は虎バサミで挟める魔物を中心に、麻痺ガス & イチロー達のバリスタアタックで狩りをして、午後は闘技場の運営で護衛騎士隊のレベルアップを目指し、

夜は鉱石などの回収とヒッキーちゃんはエナジードリンクを片手に頑張ってくれているので俺の経験値は毎日の様に入り、販売機能でベッキーさんの嫁化ポイントから借りていた分も返した上で、5000ポイント近くある。


しかもヒッキーちゃんは、


「マスターは気にならないのですか?今ラブラブチームがサルテの町でキャッキャウフフなんですよ!

マスターさえ同行してくれたらば、視界をマスタールームで共有できて録画だって可能なんですよ!!」


と、覗き見隊の仕事も貪欲にこなそうとしているのだった。


俺は呆れながらもマスタールームのモニター前に座り、


『アグアス王国の入り口の町フォルに、既にジャルダン村に建っている集合住宅を一棟をプレゼントする為に追加の土地を購入して、ヒッキーちゃんの稼いだポイントで壁を作ってもいいかな?』


などと考えて、この後ホークスさんを誘って護衛騎士隊数名と一緒にフォルの町に転移する事にした。


ちなみにナッツはサイラスの町で宿を構えて弟子の三人と冒険者活動という名の、エリーちゃんとの時間をプレゼントしており、本日はエリーちゃんのお休みに合わせて、ミリンダさんとエリーちゃんと、シュガーちゃんの家族旅行に、彼氏のナッツと、ロイド君が付き添う形で、カトリちゃんとランド君のラブラブカップルも一緒に転移を使ってアグアスの国のサルテの町に遊びに行っている。


残された2人の弟子には悪いが、これも師匠のナッツとパーティーメンバーのロイド君の為である…許してあげて欲しい。


旅行チームの転移の担当はベッキーさんに任せてあるので安心である…

今回の旅で深く傷ついたナッツの心のリハビリになればと思っているのだが、会えない時間が愛を深めて、エリーちゃんとくっついてしまっても良い様にナッツの住居もそろそろ考えないとダメかな?…


などど考えている間にフワリと村の転移部屋からフォルの町の農園へと転移した俺達は、担当してくれているスタッフから、来月末にはジャガイモが収穫出来て、冬の食糧事情が大きく好転する予定だと聞き一安心しながらカッパスさんの館に向かう。


すると、町の兵士さんが俺を見つけるなり、


「聖人様だ…やっとお見えになられた!カッパス様に連絡を!!」


と騒いでいる。


護衛としてついてきたバッツさんが、


「キース様、なんかやりましたっけ?…滅茶苦茶待ち構えられてるみたいッスよ?!」


と不安そうに話す。


そうこうしているとカッパスさんがパタパタ走って来て、


「キースさん…いや、キース様お待ちしておりました。」


というので、俺が、


「カッパスさん、一緒に難民を助ける同志ですから、お互いに『さん』で呼びあう約束ですよ」


と、すこし膨れると、カッパスさんは、


「すみませんキースさん…

しかし、王都サルテの中央貴族の方々から、聖人様の力になり多くの人を救うようにと、助成金を貰い、治癒師や兵士に文官職の派遣を受けて、再びゴブリンに襲われない様に警備と壁の工事をする予定なのですが…」


と、歯切れの悪い感じで話す。


俺が、


「どうしました?」


と聞くと、カッパスさんは申し訳無さそうに、


「それがその、国王陛下からの指示でウチの難民キャンプの周りを壁で囲み、町を広げる計画が有るのですが、工事を今のキャンプの周りでするのは危ない上に、今の難民も壁が出来るまで魔物の不安があるから、ジャガイモの収穫が済んだ農園に今年の冬は移り住んでもらい、壁作りに従事して給料を支払う事にすればと言われておりまして、ご相談を致したく…」


と言っている。


別にそれは構わないが、来年の作付けまでに農園から引っ越し出来るとも思えないし、俺は、やはり計画通りにフォルの土地を追加で購入する事にした。


カッパスさんに、俺は、


「農園に退避して貰っても良いけど、やっぱり千人からのちゃんとした居住区画が、必要だよ。

だから…土地売ってネっ!」


と可愛く言ってみた。


カッパスさんは、キョトンとしていたが詳しい交渉はホークスさんも来てくれているので、問題なく交渉はすすみウチ農園の裏手の土地を購入する事になった。


あとはいつもの壁生成なのだが、前回の様にはぬかるんで無い土地なので作業も簡単そうだ。


壁生成二回目となるカッパスさんが、


「あれですか?奇跡の御業ですか?!」


と嬉しそうにしている。


俺は、農園の敷地内から、


「ヒッキーちゃん、ベッキーさんいける?」


と聞くと、頭の中に、


『大丈夫です。』


とのベッキーさんの声と、


『大丈ばないですよぉ…』


とグダグタなヒッキーちゃんの声が聞こえた。


俺は、ヒッキーちゃんに、


「どしたの?」


と聞くと、ヒッキーちゃんは、


『どしたの?じゃないですよ!!

もう、フラフラなんです!労基に行きたいです』


とボヤいているので、俺は、


「この異世界に労基はない!残念だったな。

しかし、俺も鬼じゃねぇから、この工事が済んだら、今晩と明日の午前中はお休みにしてやろうではないか…

やるのかい?

やらないかい?!

どっちなんだいっ?!!」


と言うと、頭の中に、


『やぁぁぁぁるっ!はっ!!』


と、筋肉質な人みたいなヒッキーちゃんの返事が聞こえた。


カッパスさんはホークスさんに、


「何やら誰かと揉めているようですが?」


と心配そうに聞いているが、ホークスさんは、


「多分精霊様と、妖精様に協力を依頼しているのでしょう…あっ、話がまとまった様です」


とカッパスさんに説明していた。


俺は、


「ベッキーさん、前回みたいにデカイ水路は要らないから、壁と整地の見積もりをヨロシク。」


と言って、しばらく居住区画に何が必要かを考えていると、ベッキーさんから


「高さを三メートル程にすれば、集合住宅の移築分のポイントも十分足りそうです。」


との報告が来たので、


「フォルの町に入りやすい場所に出入り口をつけて、壁生成をスタートして、

ヒッキーちゃんも石材管理ヨロシクね」


と俺が言うと、


『ラジャー』とヒッキーちゃんの返事が来て、壁生成が始まった。


今回はカッパスさんは、ニョキニョキ出来る壁を見て、


「キースさん、難民町にもこれで壁が出来ませんかね?」


と聞いてくるので、俺は、


「駄目、駄目、俺が購入した土地にしか使えない能力だから、あちらは日雇いの方々でのんびり作ってよ。

そちらは商業地区にでもすれば良いんじゃないかな?良いパン屋の心当たりならあるよ。」


とカッパスさんに言っていると、ホークスさんが、


「集合住宅を一棟移築したとしてもまだ足りません。

ジャルダン村で急ピッチで作ったとしても冬までに2棟程でしょうか、」


と大体の予想をしてくれている。


子供や、老人から入居したとしても足りないな…

あっ、アグアスの王都の旧市街の工房3つと塩工場だったあのデカイ建物を移築したらこの冬は何とかなるかな?

しかし、早急に風呂は要るな…

移築する工房のどれかを改造して風呂にすれば良いかも!

よし、旧市街を更地にしてやろう。


などと考えながら壁の完成を待っていた。

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