第167話 ゴブリン討伐
ゴブリン村へと変わり果てていた鉱山の廃村を制圧したが本番はここからである。
30年ほど前に落盤事故があり放棄された坑道の奥がゴブリン村の本体なのだ。
ロイド君の索敵結果で魔物と合わせて人間の反応もある坑道は、マップを把握する者も居ない状態で攻略しなければならない…
マップに索敵、罠に配達機能…如何に俺は今まで自宅警備スキルで楽をしていたのかが解る…
しかし、苗床になった人が居る以上、助けに行かなければならないし魔法か何かをブチ込んでもらって巣穴ごと壊す訳にもいかない。
大型武器のメンバーは坑道で武器が振り回せないので片手剣やナイフで戦うしかない。
ボウガンならば狭い坑道でも扱えれるが、直線の坑道でないとあまり意味がないのだが、ガルさん親子や大工組のメンバーはフルプレートメイルにボウガンを装備して、
「岩石アルマジロの魔鋼の鎧の固さを見せてやるぜ!」
と言って魔石ランプを片手にゴブリンを押し込みながら入って行った。
バーバラさんをはじめとした村の女性陣に保護した女性達を任せて、カッパスさん達には村と倒したゴブリンの片付けをお願いし、親方達に続き俺達も坑道に入る。
カッパスさんの兵士がワラワラと坑道に入っても、槍がメインの兵士さんでは十分な力が発揮出来ないから仕方ない…
親方達が壁の様に道をふさぎながら前進し、ボウガンで道を空けると、俺やナッツが前に出て、新手を倒し、ベントお兄さん達護衛チームがタンク役をしてくれていると、ボウガンを装填しなおした親方達が再び最前線に上がってきて相手を押し込むという尺取り虫の様な戦法で坑道を突き進む。
ロイド君が、
「前方に分かれ道、右手から人の反応があります。
左からは魔物の強い反応があります」
と教えてくれた。
確かに左手から来るゴブリンは何処から拾ってきたのか鉄製武器を装備した個体が混じっているので、このゴブリンの村の中心地が先に有るのだろうと思われる。
俺が、
「ベント様達は、拐われた方々の保護を頼みます。
ロイド君達はベント様の道案内をヨロシク!」
というとベントお兄様は、
「キース君は大丈夫なのか?君にもしもが有れば…」
と心配してくれるので、俺は、
「大丈夫です。
女性を泣かす奴に負ける訳にはいきませんし、最悪、俺だけなら何処からでもジャルダン村に転移出来ます」
と、わざと大袈裟にアピールすると、親方達が、
「わぁー、キースの旦那だけズルいんだぁ~」
と文句を言ってから、
「これはもうショックで今夜は飲まないとやってられませんね」
と大袈裟に拗ねているので、俺は、
「ゴメンって…これが終わったら去年仕込んだヤツを一樽出すから」
と約束すると親方達は、
「よし、てなわけで騎士の旦那方はそちらをお願いします。
こっちは、サクッと女を虐める緑の餓鬼共に、嫌というほど解らせて殺りますので!!」
と言って左手の道を進んで行った。
呆気にとられるベント様達をよそに、左手の奥では、
「酒が待ってるから、さっさと殺るぞー!」
「応!!」
と気合いの入った声がする。
俺とナッツも、
「では、右手はヨロシク!」
と言って左手の道へと、親方達に合流するために急いだ。
そして暫く進んだ左手の奥には広い空間があり、高い天井部分は一部が抜け落ちた様で光が差し込んでいた。
明るい坑道の先は土に埋もれて、転がる岩の上に腰を下ろした二メートルほどあるデカいゴブリンの両脇には狛犬の様に鎧を着た普通より少し大きめのゴブリンが二匹と、武器を持ったフンドシ姿のゴブリンや、兜だけを被ってナイフを構えてニヤニヤしているヤツなど二十近いゴブリンの部屋に俺達はお邪魔する事になったようだ。
「嫌な謁見の間に来てしまったかな?」
とボヤく親方達だが、ナッツが飛び出して親方達の死角から襲いかかる一匹を切り伏せ、
「暗殺スキルかな?だけど、まだまだだね。」
と言った後にナッツは、
「皆さん気をつけて下さい。
多分ここにいる全部が上位種かもしれません。
美味しい酒を飲む前にお腹がチャプンチャプンになる程ライフポーションを飲まなくても良いようにしてくださいよ」
と、親方達に声をかけると、親方達は、
「おう、ナッツの旦那ありがとよ」
と言ったあと、手にしたボウガンをゴブリンに向けて打ち込んでから、装備をボウガンからそれぞれのメインウエポンに持ち替えて、
「キースの旦那、王様へのご挨拶は任せやしたよ。
こっちはゴブリンの兵士さんの相手をします」
と言って斧やハンマーを手にゴブリン達を蹴散らしはじめている。
俺とナッツは近衛騎士のゴブリン二匹と、いまだに座ってこちらを見ている大きなゴブリンにターゲットをしぼった。
少し大きいとはいえ人よりも少し小さいゴブリンの騎士は、女性ものの鎧を身に纏ってレイピアのような細身の剣を構えている。
『あの装備の持ち主はベント様が向かった右手の部屋に居るのだろうか?…』
などと考えながら、俺も黒光り合金の片手剣と盾を構える。
ナッツもショートソードとナイフの二刀流で、ロングソードを構えた革鎧のゴブリンの騎士と睨み合っている…
すると、開戦の合図の様に岩に座ったデカいゴブリンが、
「グガァァァァァ!!」
と吠えると、俺達は体がビクンと強張る感じがした。
その一瞬を狙いゴブリン騎士が斬り込んでくるが、俺とナッツは黒光り合金装備のおかげで、相手の一撃をなんとかかわす事が出来たのだが、ガルさん達も一瞬体が強張ったみたいでゴブリン達に攻撃を打ち込まれている…
『やばい!』
と焦る俺だったが、ガルさんは、
「何処の冒険者から奪ったかしらねぇが、そんな数打ちのなまくらでは、俺が鍛えた魔鋼の鎧に傷すら付けれないぜ!」
と、ハンマーでゴブリンを頭から挽き肉にしていた。
「なんだ?あの叫び声は…」
と先ほどの大声に対して呟く俺に、
『ゴブリンキングの固有スキル、威圧です。
ゴブリンキングは、周囲のゴブリンの身体能力を上げるスキルも有ります』
とヒッキーちゃんの声が頭に響く。
俺はナッツに、
「王様は面倒なスキル持ちだ!」
と、伝えるとナッツは、
「キース様、戦で一番やられて困る事って知ってますか?」
と、スピード任せにゴブリン騎士を翻弄しながら質問してくるので、俺が、
「えっ? 知らないよぉ~」
と、戦いながらで回らない頭で答えると、
「敵将の暗殺よ…」
と、セラさんの槍がゴブリンの王様の首を背後から貫いていた。
「えっ、セラさん?」
と驚く俺に、セラは、
「そろそろかと思って女性達の保護に来たのよ!
後で槍拾って来てね!私は逃げるから…」
と言ってゴブリンの王様に突き刺さったままの槍を手離して影に紛れる様にセラは居なくった。
『暗殺一家の里、怖ぇぇぇぇぇ!…目で追ったが見失ったぞ!?』
と、俺は少し引きながらも、喉を潰された王様を先に倒す事にしゴブリン騎士を無視してナッツと二人がかりで王様の元に向かう。
と言っても、喉を潰され、首から血飛沫を撒き散らしている王様は、威圧の声も出せないし、敵である俺達に集中する事も出来ない様で、黒光り合金で速度が上がっている俺とナッツを目でとらえることすら出来ないまま、彼はこの王国の最後の王としてその生涯を終えた。
キングのバフが無くなったゴブリン達のチームワークは勿論ガタガタになり、個別の能力も元の状態へと下がり、酒を飲む為に必死な親方達の武器の露と消え、それから暫くして坑道全てのゴブリン討伐が終了した。
早く臭い穴蔵から出て旨い空気を吸いたいよ…
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