第150話 相談事と招待状
キソップ親方の愛のパワーで仕上がった温泉小屋はセーニャの別荘の皆に大人気である。
しかも、大工チームが仕事終わりに、ひとっ風呂浴びてから敷地内転移で戻ってくるので、お肌スベスベの大工達を見た村の女性陣が、
「ズルい、ズルい!」
と騒ぎだし、順番に温泉にご招待する形となった。
ヒッキーちゃんが、
「毎日とかは、マスターが転移させるのにポイント使うからダメですよ」
と説明すると一部の女性陣は、
「グループで、闘技場で魔物を倒した獲物を一回分、丸ごと村に納めるので、そのグループ単位で温泉に行かせてほしい!」
とヒッキーちゃんに懇願する始末…結局、村のお仕事が休みの日の午前中に狩りをして転移ポイントを稼いで、午後は討伐パーティーでセーニャに行ってお風呂を楽しみ、夕方に午後に狩りをしたパーティーと交代する方式で、現地のセーニャのメンバーと相談して男女の時間設定等を決めいたのだが、希望の男女比がおかしく、曜日によっては行けないメンバーも出るので、
「もう、男女のお風呂を分けるか…」
となり、新たに少し小さな風呂を作った。
何故小さく作ったかというと、仕事終わりの親方達が風呂の準備をするのにすぐ沸かせるのと、セーニャ組のお風呂として使うには大浴場は大き過ぎて大変だからだ。
あとは、キソップ親方とスーザンさんを貸し切り風呂として放り込んでやろうという弟子達の企みからで、大浴場では密着しない可能性があるので弟子の気遣いから導きだされた大きさなのだ。
かなり昔に奥さんに逃げられた親方に訪れたチャンス…弟子達としては応援したいみたいなのだが、これには兄弟子のハリーさんやカモイさんもノリノリで、
「ニンファの町の教会が完成したら、親方の結婚式もさせてやりたいな…」
などと、言っているぐらいである。
そんなこんなで、温泉の転移代として納められた獲物を全て販売機能でポイントにすると正直ポイント的には大きくプラスになる上に、村で使う毛皮や肉に獲物の一部を回すので、冬の備えとして狩りをしなくても勝手に肉が集まるし大変助かっている。
ただ、ヒッキーちゃんは、温泉転移組のポイント&スケジュール管理に忙しくなったみたいだが、錬金術師組に、
「凄い!ヒッキー様は転移魔法まで使えるのですね!!」
と言われて上機嫌だし、
「こんな事も出来ますわよ。」
と、ヒッキーちゃんは、回収を使って水晶を集めて錬金術師組渡している。
お陰で更に、錬金術師組のヒッキー教信仰が加速して、
「ヒッキー様の知識の結晶を人々に知らしめる!」
と、色ガラスの実験と平行してニンファの町の教会用のステンドグラスの作業が進んで行く。
パーツ作りは村役場で行い、組み立ては、ロッソさんがナナムルに行っているので、食堂として使わないくなったマイホームのホールで行い、
完成したら大型保管倉庫へと収納しておくのを繰り返し、年末のユーノス辺境伯様の派閥のパーティーの頃にはステンドグラスも完成予定である。
こうなると、どのタイミングで教会を建てるかが問題になる。
知らない間にヌルッと建てるのは勿体ないので、出来ればベッキーさんの偉業として各地に広めたいのだ。
「辺境伯様に相談するかな?」
と決めて俺は行動に移す。
12月頭にある年末の派閥のパーティーが済めば、辺境伯様は中央を目指して移動されて、王城の新年パーティーを皮切りに連日パーティーに明け暮れ2月の終わり頃まで領地に帰って来ない。
早く相談しておかないと、返事が来年の春になってしまう。
俺は、早速ナッツとホークスさんとセラさんのいつものお出かけメンバーでニンファの町に飛び、軽くジーグ様からの業務報告を受けてから、ジーグ様も我が家の馬車に詰め込んでナナムルの辺境伯邸へと向かった。
ナナムルのお城では、ユーノス辺境伯様に、
「おっ、今年はもう来たのか?パーティーは来週末だぞ…」
と驚かれたが、俺が、
「ご相談したい事がございまして…」
と切り出すと、辺境伯様は、
「ジーグも、ホークスも居るから、また、とんでもない事だろう。
グリフォンに地竜…
もうドラゴンを討伐したと言っても驚かないが、まぁ、お茶でも飲みながら話そうか…」
と、少し遠い目をした辺境伯様とのお茶会が始まった。
応接室で一緒にお茶をすることになったアリア様は嬉しそうに、
「もっと、遊びに来てくれたら宜しいのに…
あら、夏からまた背が伸びたのではないですか?」
と、ペタペタと俺を触っている。
本題に入る前に、ニンファの町の状況と、ジャルダン村と、ジャルダン商会に、ユーノスパンの報告を済ませ、俺が、
「新たな村の特産品です。」
と言って、アリア様の前に髪飾りやバレッタやヘアピンにヘアクリップなどをホークスさんに並べてもらい、
辺境伯様の前にはガラス食器や切子グラスをナッツとセラさんが並べると辺境伯ご夫婦は二人とも目を輝かせ、
「これの説明を!」
と食いついてきた。
俺が、辺境伯様に、
「錬金ギルドと仲良くなる機会が有りまして、ガラスで瓶等を依頼するついでに、商品開発をしました」
と説明する間にも、
アリア様は、メイドさんに鏡を持って来させて、実際にバレッタをセラさんに着けてもらい、
「これも良いわね…」
などと試着していて、最後には、鏡を持ってきたメイドさんにもアリア様はバレッタを着けさせて、
「似合うわよ。」
と言った後で、
「キース君、これとこれを売って下さる?」
と聞いてきたので、俺は、
「ここにある全てお土産ですのでお納め下さい。」
と伝えると、ジーグ様まで、
「ほんと?!
では、母上、ノルンちゃんにこの髪飾りをくれないかな?」
と言い出している。
そして、ジーグ様はアリア様にしっかり奥様の分も用意する様にと叱られていた。
『仕事は出来るけど、やはり親バカなのがジーグ様の欠点だな…』
と、思いながらジーグ様を見ていると、辺境伯様が、
「これも十分驚いたが、相談とはコレでは無いのだろう…」
と少しうんざりした顔で聞いてきたので、俺は、
「ニンファの町に教会を建てる計画がございまして、できれば教会関係者や国王陛下達をお招きして、精霊ベッキーさんの偉業として皆様の目の前でその日の内に教会を完成させるイベントを開きたいので、新年のパーティーの時に、国王陛下にお話を通して欲しいのです」
と、辺境伯様にお願いすると辺境伯様は部屋の端に控えていた文官さんに、
「あれを…」
とだけ指示をだしてから、俺に、
「そのお願いはキース男爵が自分でするのだな…ホレ…」
と言って、文官さんの持ってきた手紙を渡された。
俺は、「なんだろう?」と呟きながら手紙を手に取ると、それは、王家からの招待状だった…
「うえぇぇぇぇぇ!!」
と驚く俺に、辺境伯様は呆れた表情で、
「安心せい、新年パーティーの翌日の昼に行われるアルサード王子殿下のお茶会の招待状だ。
殿下のご学友と、お主の様に殿下から招待された若者ばかりのお茶会だ。
まぁ、その後で国王ご一家との追加のお茶会ぐらいは覚悟しておけよ」
と教えてくれたのだが、
マジかぁ…全く安心出来る要素がない…と頭を抱える俺だった。
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