第137話 Bランク冒険者になれました


地竜を溺れさせた翌日、サイラスの町の冒険者ギルドからギルドマスター達が地竜の確認にやって来た。


既にナッツからの報告と、探索が得意な冒険者に依頼を出して討伐風景をチェックさせていたので簡単な手続き程度で討伐が認められた。


ギルドマスターのイルサックさんは広場に横たわる地竜を見ながら、


「こんな綺麗な状態の地竜を見たことがない!

高値で買うので売ってくれ。」


と、頼まれたが今回は既にこの地竜の行き先が決まっているので売らない…

なぜならば、これはベッキーさんの婚約が上手く行けば王家にプレゼントするのだ。


結納の品…という訳ではないが、王子殿下の装備等に使って頂いたり、国王陛下の派閥の方々が少しでも強くなれば軍務卿も押さえ込めるのでは?…という淡い期待も含んでいる。


そんな訳で買い取りが出来ない事にしょんぼりしているギルマスを放っておいて、一緒に来てくれたクレアママさんに俺とナッツのコンビのBランク冒険者への昇格の手続きをしてもらった。


クレアママさんは手続きが終わると、


「おめでとうね」


とあっさりしたお祝いを述べてからシーナさん達とおしゃべりに向かってしまった…

現在、クレアママさんは我が家の女性冒険者チーム、(村の華)の担当を名乗っている。


正直、俺とナッツのコンビよりも、魔法使いの師弟と戦士にスカウトの全員が女性冒険者という絶妙なバランスと高い火力と全てにおいて話題性あるパーティーはサイラスの冒険者達のマスコット的な存在でありファンも多いらしい。


ちなみに中古ショップのドルツ爺さんはギルドの酒場で飲んでいた時に見かけてから、バーバラさんの熱狂的なファンらしく、お向かいのおばちゃんと良い感じだったのに、今は少し気まずい雰囲気なのだとか…

というどうでも良い情報を最近サイラス勤務でエリーちゃんとヨロシクやっているナッツから聞きながら、


『あぁ、なんかヌルッと憧れのBランク冒険者になってしまったな…』


と、初めの頃に思い描いた一番高い目標である町の出入りや関所が無料になるBランク冒険者に昇格したのにあまり周りの反応も無く少し寂しくなってしまった。


しかし、Bランク冒険者になってもやることはあまり変わらず俺はヒッキーポイント稼ぎを続けた。


少しは変わったのは、俺のレベルが60を超えて俺の1日の滞在ポイントが30になり、家族登録も30人に増えて一人あたり3ポイント入るので、合計120ポイント入る様になり、お祝いポイントも6000ヒッキーポイント入った事と解放された機能が2つ、


雷撃のバリスタの矢〈十本〉800ポイントという、雷属性攻撃が付与されたバリスタの矢を作り出す機能で、

ノーマルのバリスタの矢は消して再配置すれば出てくるのに対して、この雷撃の矢は、クールタイムを挟まないと再配置出来ないが、800ポイントを使い本数を増やす事は可能である。


それと、ポイント回収機能という資材を使わずにポイントのみで手に入れた機能を手放してポイントに戻す機能…

具体的には、壁や道など石材を使いポイントで生成したものは対象外だが、保管倉庫やガーディアンゴーレムに範囲拡大や範囲超拡大の土地を手放してポイントに戻せるというものだった。


…まぁ、敷地の取り直しは地味に有難い…

その他は特に変わりなく、サイラスの町で地竜を溺れ殺した水辺が実際に偵察していた冒険者達に酒の肴として、


「精霊に喧嘩を売って殺された地竜の呪いが残る水辺伝説」


という良く解らない噂話になったぐらいかな?…

詳細はよく知らないが、水を被ると地竜になっちゃうフザケた体質になる…とかではないだろう。


そして、6月に入りかなりのポイントが手に入ったので、予定通りにニンファの町の工房の始動と今年のパーティー料理が決まれば、俺はユーノス辺境伯様と王都に向かう事になっている。


道中でダイムラー伯爵領都アガルトにも寄り別荘を購入して転移出来る様にしたいし、勿論王都の近くにも別荘を購入する予定でいる。


敷地内転移で旅行三昧も出来るし、王都という大都会でいつでも買い物が出来る様になる…もう今から楽しみである。


馬車も追加で完成したし、バーン用に黒光り合金のハミを作ってもらったので、少しスピードに不安のあるバーンのマイナス要素が無くなった。


ダイムラー家や王家の方々への手土産の新作の石鹸等も用意出来たし、現地で別荘が指定出来れば追加の手土産も取り寄せれる。


数年前では考えられなかったが、今ならばいくら都会だろうと土地を買うぐらいの蓄えは有る!

知らない間に特許使用料が大変な事になっているし、勿論男爵のお手当てと春先に勲章分の年金?も入る。


なので、別荘を各地に持つ事に何の不安もないし、お掃除や管理も片道たった5ポイントで村のメイドさんを派遣できる。


『もう無敵だ…』


何なら各地にジャルダン商会の傘下の店を出すのも良いかもしれない。


ニンファの町に料理屋やお菓子屋、雑貨屋などを置いたり…

それこそ、各地の店を別荘指定して買い出しをお願いすれば大概の商品は即日で手元に届く様になるし、無機物ならば敷地内回収などで輸送費などなくこちらから商品や材料も配達機能で送れる。


『フッフッフようやく自宅に引きこもっていた男が世界へと飛び出すのだ!

自宅のみを警備する時代は終わった…別荘を巡り、各地を飛び回るのだ!!』


と、ほくそ笑む俺だが、しかしその前に一つやることがある…

それは夏に本番を迎えるサイラスの町の草競馬大会の予行練習がてら、試しに関係者だけで競馬を楽し…いや、不備が無いか確かめようという事になっているのだが、娯楽の少ない田舎のため、噂はすぐに広まり、冒険者達が


「見せろ!ついでに賭けさせろ!!」


騒ぎ出して冒険者ギルドマスターのイルサックさんが泣く泣く主催者のジョルジュ様にお願いに行き、本番では他の町の牧場から足自慢の馬が集まる事になっているが、今回はティム牧場の馬が20頭参加して10頭だてのレースを二回行う予定である。


商業ギルドもヤル気満々で、当日は屋台なども並び、ジュルジュ様の御屋敷で食べられているフカフカのパンを使ったサンドイッチやウチの村のソーセージを挟んだホットドッグも売り出されるのだが、どこから情報が漏れたのか、サイラスの町は今、新たな娯楽とお貴族様の食べている料理を食べれるチャンスにお祭り騒ぎなのである。


ウチの村もこの際だから皆で楽しむか!

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