第136話 地竜討伐作戦
地竜討伐作戦が開始された。
呑気に寝ている敵の周りに麻痺ガスの罠を展開し、その罠を目指してイチロー達が窪地の坂を駆け下りる。
イチロー達は地竜に攻撃は仕掛けずに、ただひたすらに罠を設置した場所を目指して、罠を踏んで起動させる。
ガーディアンゴーレムに踏まれた罠が発動して煙が窪地に満たされていくが、勿論ガーディアン達は麻痺ガスなど効かない。
しかし、地竜はガスを吸い込み、何かおかしい!と思ったらしく、目覚めたと同時に辺り構わず暴れ回り、尻尾を振り回す度に霧が晴れるように麻痺ガスが霧散し、ハッキリと地竜の姿がモニターに映る…
あまりに元気に暴れているので、
「おいおい、効かないとか…無いよね?」
と心配になるが、地竜の攻撃を避けて逃げ惑うイチロー達の頑張りのおかげで興奮して息が荒くなり血行も良くなったようで麻痺成分が巡った地竜がユックリと倒れ込むのがモニターで確認できた。
ベッキーさんがモニターを見つめたまま、
「鑑定結果、麻痺の効果を確認!」
と報告してくれる。
「よし、次の作戦に移る。」
と、俺が言った時にモニターの向こうの地竜が炎を吐いた。
『しまった!ヤツは本家程ではないがファイアブレスを吐ける個体だったか!!』
と、焦る俺だがモニター越しに直ぐに打てる手立てを考える暇もなく、その炎は窪地という閉鎖空間で放たれ、坂道を駆け登り脱出しようと試みたシローが直撃を受けて倒れた。
チョロチョロと動く敵を一匹倒して緊張が切れた地竜がドサリと大地に伏せて苦しんでいる。
俺は、
「ヒッキーちゃんはイチロー達の回収をお願い」
と指示を出して、俺自身は麻痺してモゾモゾしている地竜を次なる場所へと転移させる為にモニターの座標に、15ヒッキーポイントを使って地竜を敷地内転移させた。
次なる場所とは、ウッドイーターというビーバーの魔物の住み処である湿原エリアで、雪解け水の多いこの時期は、あちらこちらで川や池を塞き止めてダム湖が出来上がっているのである。
その中で一番深いダム湖を補強して少し加工したのが次なる作戦エリアであり、ダム湖の上空に転移した地竜は己の重みで自然落下してドブンとダム湖に着水する。
地竜が立ち上がったとしても頭まで浸かる深さのダム湖には近くのキメの細かい泥もタップリと入れてあり、ヤツが暴れば暴れるほど深く埋まってゆく仕組みだ。
しかも痺れて上手く動けない芋虫状態の地竜は、その首を持ち上げて呼吸をしようとするがゴボゴボと水を飲む羽目になる。
苦し紛れにブレスを放つが、火柱を吐き出した空気の分、水を吸い込み更に苦しむ地竜にヒッキーちゃんが、
「ガーディアンズ回収完了!これでも食らえっ!!」
と、以前使った石造りの三角帽子を地竜に被せる様に落下させると、地竜は頭を石の塊に沈められて二度と空気を吸い込む事は出来ない状態にされた。
しかし、まだ水中ではヤツが暴れているらしく、泥を巻き上げ揺れる水面をモニターで眺めること数分…しかし、体感では数時間にも感じた。
やがて水面は静まり、ベッキーさんが、
「地竜、完全に沈黙」
との報告を聞いて、地竜討伐作戦は終了した。
ホッとしたのも束の間ヒッキーちゃんに、
「シローは?!」
と聞くと、ヒッキーちゃんはユックリと首を横に振る。
そうか…シローがヤられたか…と理解した俺は、そのままマスタールームでシローの復活作業に入る。
イチロー達にシローの機能の停止したボディーから装備を外してもらい、本体は販売機能でポイントに変換して、今回はシローの頑張りを称え俺は少し奮発して上級ガーディアンゴーレムのボディーを1000ポイントで交換して、バックアップされているシローの記憶を移し、シローへの説明はイチローにまかせてた。
それから俺は、地竜を回収しナッツへ冒険者ギルドへの報告を依頼した。
大型保管倉庫がいっぱいになるので、幾つかの獲物を村の解体場へだして、肉の一部はニンファの町の保管倉庫に食糧として送り、素材などを剥ぎ取り、要らない部分は販売機能でポイントに変える事にした。
これは少し前に狩ったヘルタイガーもロッソさん達に解体して貰おう…
新しくシローのヘルタイガーの骨を使った鎧を仕立て直さないと、前のヤツは使えないな…上級のガーディアンに変わったからボディーサイズが違うから…
などと思いながら説明が終わったであろうシローに会いにマスタールームから戻り村に出ると、マイホームの前の道でミリンダさん達がキャッキャと話している。
気になり近寄ると、
「可愛いわよ。アタシのウエストと同じなのが少し不満だけどね。」
と言って楽しげにしている輪の中に上級ガーディアンゴーレムが立っていて、
「ありがとう、ミリンダさん…もうアタクシ裸でどうしようかと…」
と言ってミリンダさんのスカートとガルさんのシャツを着てクネクネしていた…
…そうだった…シローさんはオネェさんではないのか?問題を棚上げしたままにしていたが…喋れる様になりもう確定したな。
いや、ガーディアンゴーレムに明確な性別がないのであれば彼…いや彼女はシローちゃんなのだろう…
次の装備はドレスメイル風にしてあげるかな…などと考えながらシローちゃんに、
「調子はどうだい?」
と俺が声をかけると、
「あら、マスター。
ごめんなさいねぇ、アタクシってばヘマしてブレスの餌食になったんですってね。
イチロー達から聞きましたわっ。
新しいボディーを与えて下さりありがとうございます。
以前より厚い胸板と、逞しいフォルムにもうハァハァしております」
と、何とも言えない複雑な御礼を言われた。
逞しいフォルムに自分がなってもハァハァするの?…と色々な感想が駆け巡り、俺はこんな時にどんな顔をして良いのか解らないので、
「それは良かった…
前の装備はボディーが変わったからガルさんとニルさんに相談して気に入るヤツを新しく作って貰おう」
と硬い笑顔を作るのがやっとだった。
シローは、
「やったぁー、肩にマスターの紋章入れて欲しいな?良いですかマスター。」
と俺に抱きつきおねだりしてくる。
俺が、
「い、いいよ。」
と答えると、シローちゃんは、
「わ~い、ガルさぁ~ん!」
と、嬉しそうに鍛冶屋に向かって行ってしまった…
『ヒッキーちゃん以上に濃いキャラを解き放ってしまったかもしれない…』
と、俺は走るシロー…いや、彼女の背中を眺めて少し不安になってしまうのであった。
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