第133話 マスタールームでの狩猟祭り


結局、色々な準備を村や町の開発と平行して行う事になってしまった。


ベッキーさんの嫁化に必要な一万ポイントは勿論なんだが、ベッキーさんを狙う輩が増える可能性もあるのでニンファの町の守りを強化して、ベッキーさんと特別な協力関係と認識されている俺自身も狙われる心配もあるらしいので、今回のプロポーズの返事を伝える前に完璧な防衛準備を整えなければならない…

滞在ヒッキーポイントで夏までに一万程は貯まる予定だが、可能な限り久々の狩り祭りを開催してレベルアップボーナスや出来る事ならばレベル60のお祝いポイントを狙う事に決めその間は転移などポイントを必要とする機能をなるべく使わず節約する予定である。


王都まで行く用事が出来たのでそれに合わせて別荘指定枠や、その別荘用のガーディアンの追加に、もしかしての為にバリスタや罠の追加などに必要かもしれないポイントも貯めるためだが、しかしその前に現在の持っているポイントを使い古の森の奥近くまで狩の為の範囲を拡大したい。


貯めると言ってる側から無駄遣いに見えるだろうが、もうレベルだけならば上位冒険者並みの俺のレベルを上げる為には強い魔物が必要なのだ。


そして、我が家では頼れる知恵袋のホークスさんや執事のトムさんに村の事や村人達の事を任せて、俺は久々に朝からずっとマスタールームで過ごしている。


もう、村長はお昼寝を頑張っていると言われても良いと腹をくくって、マイホームの居間のロッキングチェアでマスタールームへと意識を飛ばしているのだ。


居間にはシーナさんや、元ゲインズ男爵家ベテランメイドさんに裁縫上手なミリンダさん達が、キャッキャと楽しそうに服を縫っている…

パッと見は、周りの女性に働かせて自分は昼寝をしているダメな貴族的な風景であるが、その実は俺はスキルを使い厳しい戦いを繰り広げているのだ…

因みにだが、ナッツとロイド君達の師弟冒険者チームはサイラスの町で生活して貰っている。


相棒にはティム農場を拠点として冒険者活動をこなしながら、クエストボードの依頼を確認してもらい古の森の情報や、俺が狩った魔物を冒険者ギルドに納める業務と、弟子の育成という名目…あとはサイラスの町で夏前に試しに開催される草競馬の件でのお手伝いとして働いてもらい、そのご褒美的な意味で相棒には合間にエリーちゃんと楽しんで欲しいという事で今回のサイラスでの時間をプレゼントしているので、俺はマスタールームでゲーム廃人の様な生活をしながらでも冒険者ランクを上げられるのだ。


今もマスタールームでは、ベッキーさんの幸せの為に頑張ると決めたヒッキーちゃんが、防衛コスプレでインカムをつけて古の森のマップとにらめっこしながら、


「マスター準備をお願いします…大型魔物の反応…モニターに出します。」


とテキパキと仕事をしてくれている。


俺の前のモニターに監視カメラの映像が映り、久々のヘルタイガーとの対面を果たす。


俺が


「ターゲット確認!やるよ!!」


と言ってマップをモニターに開き、虎バサミをヤツの足元に展開する。


後出しの罠などズルいと思うが、出来るのだから仕方ない…

ヘルタイガーの後ろ足にガシャリと虎バサミが牙をむきヤツを地面に縛りつける。


痛みで暴れるヘルタイガーに向けてヒッキーちゃんは、


「周囲に冒険者の反応無し!麻痺ガスの罠を全て敵の足元に展開します。」


と言うと、モニターのヘルタイガーは暴れて次々と麻痺ガスの罠が発動されていく…


ヒッキーちゃんは、


「麻痺ガスの罠の発動、鑑定の結果、麻痺の効果を確認しました」


と報告を入れる。


『ヒッキーちゃんが出来る子になっている!…』


と驚く俺であるが、嫁に行く妹分の為に頑張っているお姉さんとして、そして、メインナビゲーターとしての立場が彼女を出来る子へと進化させたのだ。


俺は出来るヒッキーちゃんの報告を受けて、村人が強くなり、警備業務から離れても大丈夫になったイチロー達をあらかじめ待機させておいたので、配達機能でバリスタと共にヘルタイガーの前に配置してトドメを依頼する。


しびれて動けないヘルタイガーはバリスタで狙い射ちされてあえなく絶命し、全てを回収してまた次の獲物を探すのを繰り返す。


ヘルタイガーを倒してレベル1つ上がったが、流石に以前の様に一回に複数のレベルアップはヘルタイガーであってもしなくなったようだった。


我が家の紋章の虎を絶滅させる訳にもいかないので次なる大物を探すしかないのだが、空を飛ぶヤツは使える罠が無いので、グリフォンなどを見つけてもスルーして古の森の奥地のよく知らない大型の魔物を見つけては鑑定をして、解った名前をベッキーさんが検索して弱点等を教えてくれる。


ウチの村の奥に居たと言われるアサシンバイパーという気配を消せる大蛇の魔物も、ヒッキーちゃんと感知機能があれば丸解りらしく、Aランク冒険者がこの村に鍛冶師のガルさんのお爺さん達が入植する前に倒した記録があるらしいがCランクの俺でも自宅警備スキルのおかげで倒せてしまった。


何とも良いチームワークである。


ちなみにであるが、派閥のパーティーでかなりお爺ちゃんの男爵様が自慢気に、


「私の曾祖父はAランク冒険者で、今のサイラスの近くで、アサシンバイパーという魔物を倒し、その代の辺境伯様にそれを献上して男爵になれたのだ…」


と言っていたのだが、


『俺も献上した方が良いのかな?

いや、別にこれ以上出世は要らないし、ウチの村の隠密系統のスキル持ちの特殊装備にしてもらうかな…気配消し名人のアサシンバイパーさんの素材なら何かの効果つき装備になりそうだ…』


などと、作業となりつつある狩りに様々な事を考えながらも、大物は個別で狩るが、オークの集落などは洞窟等であれば、出入り口を配達機能を使い岩で塞ぎ、麻痺ガスの罠を出入り口付近に配置し、慌てて逃げようとしたヤツが罠を発動させればウッドチップや枯れ葉を配達し、仕上げに火の着いた薪をお届けすれば、熱や一酸化炭素や酸欠など理由はまちまちだが大量の経験値が手に入る。


これは、古の森の奥でなおかつサーチなどの機能があるから出来る作戦である。


人里近くや街道近くのオークの集落には大概人間がオモチャの様にされている場合がある…この周辺にはほとんど居ないがゴブリンの集落にはゴブリンの子供を生むための苗床と呼ばれる女性がいる事が多いらしい…

しかしこんな奥地には、そもそも人は来ないし、来たとしても上位種すらも軽く倒す強い冒険者がパーティーで来るぐらいなのでオークの巣に捕まる人間は殆ど居ない。


そんな派手に暴れてもあまり騒ぎにならない奥地で、なかなか上がり難くなったレベルに悪態をつきながらも、ベッキーさんの幸せを祈りつつ毎日狩りを続けて、素材に経験値に販売機能でポイントも手に入れる生活を俺は続けるのであった。

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