第118話 村人みんなでピクニック


石造りの三角帽子は3日3晩燃え続け熱が冷めるまで一週間近くかかった。


その間も頼もしい村人達はボウガンを手に村の周りをお散歩代わりに狩りをしてまわり、虫魔物や鳥魔物の間引きを行いやっとのこと村は静けさを取り戻した。


石鹸チームの少女達ですら表向きはFランク冒険者であるが、実力的にはDランクに近いのはジャルダン村の秘密装備であるボウガンのおかげであろう。


大群の軍隊鳩を一匹二匹倒しても焼け石に水と我慢して放置していたが、敵のメインの狩場となる虫魔物の拠点が潰されたと知った村人は、今までの洗濯物や家を汚された恨みとばかりに倒した鳩肉が、今は家庭用の保管倉庫にパンパンに詰まっている。


現在、家庭用保管倉庫は村の食材用で、業務用保管倉庫は村の工房や商店の在庫管理用に使い、闘技場等で狩った獲物は大型倉庫に入れておいて日替わりで冒険者ギルドに納品して村人達は前よりも豊かにくらしているようだ。


ホークスさんが、


「狩で稼いだ分から税金を取らないのですか?」


と聞いてきたが、


「ウチの村人は家族だから、各々が作ってくれた作物や商品の利益を一旦商会に入れてくれて、その中からの分配金で頑張ってくれているのに合間の内職狩りの売り上げまでピンはねしたくないよ」


と答える俺にホークスさんは、


「まぁ、稼いだ分はジャルダン村で家具や武器をはじめ、衣類の注文などにまわり、巡り巡って一部売り上げなどで回収してますからね。

今の村人達は良いですが、今後増える場合はいかがされますか?」


と、質問してくるので、俺は、


「ニンファの町みたいに家や仕事を用意して、村から働いた分の給料を払って、そこから家賃をもらって仕事が軌道に乗ったら、店や農地を任せて売り上げの一部をもらって追加の家賃収入で村を回す…とかかな?」


と答えると、ホークスさんは、


「それだと、かなり村人に余裕が出てきますし装備は勿論、闘技場で村人がかなり強くなるので、あえて兵士団を作らなくてもいいかもしれませんね…」


とよく解らない事を言っていた。


そして、三角帽子の熱がようやく冷めて後片付けが出来る様になった頃にガルさんやミリンダさんまで、


「ピクニックがてら皆で後片付けにいきましょう」


と言ってくれて、村から直線距離で2キロ以上離れた森の奥まで、村人総出でピクニックとなったのだが、そこで驚いたのが知らない間に皆の装備がゴツくなっているのだ。


イチロー達の装備が普通の騎士団よりゴツい全身鎧なのは解るが、ロイド君達子供冒険者パーティー(村の未来)の装備が森狼とロックリザードの革鎧に、古の森近くの湿原に住んでいる〈ウッドイーター〉という歯の鋭いビーバーの魔物素材を使った魔鋼の武器を装備しているし、

なんだかガルさん親子も趣味が爆発しているフルプレートメイルを着ている。


シーナさん達女性冒険者パーティーである(村の華)のメンバーに至っては俺やナッツよりも良さそうな華やかな装備である。


どうやら村人達の最近の冒険者としての稼ぎは、村の革工房や衣類工房と鍛治屋に殆どまわり、村人の戦闘力向上に繋がっているようだ。


ホークスさんの言っていた意味がようやく解った俺だが、俺とナッツの使い込まれた装備が急に恥ずかしく感じる…ナッツはまだしも、俺の装備はイビルアイビー戦でベッコベコにされている。


最近来た大工の親方のキソップさんでさえ魔物素材を使った魔鋼の斧を担いでいるのに…

改めて皆の装備を見回したナッツが、


「キース様…我々も装備をグレードアップしませんか?」


と言ってくる。


確かに、ヘルタイガーの魔鋼で装備を作るはずだったが、成長期を理由に一旦止めていたら、ゴロー達の装備を作ってヘルタイガーの骨を使い切ってしまっていたのだ。


ガルさんは、


「どうせなら、もう一匹ヘルタイガーを倒して、牙や爪を使ってもっと良いのを作りましょうや!」


と言ってくれたが、そうそうヘルタイガーと戦うチャンスなど無い…現に、古の森の罠にも掛かってた事がない…

俺は、ナッツに、


「ヘルタイガーは無理かも知れないけど、何か強そうな魔物の魔鋼の装備を作ろう…実は今回の戦いで鋼ハサミの装備も武器もボロボロになったんだよね…」


と言いながら、ピカピカの装備の村人と一緒に、だいぶ使い込まれた装備の俺とナッツが森を進む。


葡萄農家の奥さまのラビさんに抱っこされた村の最年少のホープ君ですらアイアンアントの頭を使った兜をヘルメットの様に被っているなぁ…などと考えながら到着した森奥で村人達とそびえ立つ帽子を眺めていた。


ガルさん達は、


「キース様、皆でお昼にしましょう。

多分この後土や灰にまみれるから汚れる前に…」


と提案してくれて、皆でお弁当タイムになったのだが、今日のお昼は試しに加工された軍隊鳩のスモークピジョン?サンドイッチだ。


旨い!…臭みもなく旨いのだが、コイツらはあの虫を食っていたのだろうか?と考えてしまうと、味がボヤけてしまう…

俺はもう生産者の顔と栽培方法の見える食材しか無理かもしれないと、少し落ち込んでしまった。


その後、三角帽子を見上げて、


「もう、モニュメントとしてこのままでいいかな?」


と呟くと頭の中に、


『レア素材が有るってベッキーちゃんがいってたでしょ?!』


と、ヒッキーちゃんの声が響き、一番大事な事を思いださせてくれた。


食事も終わり村人と作業に入るのだが、ミリンダさんが、


「村長、ここらへんに散らばっている植物魔物の蔦や根っこの素材を頂いて構いませんか?」


と聞くので、俺が、


「構わないけどどうするの?」


と聞くと、切られた蔦を集めながら


「植物魔物で作った木糸は凄く丈夫で、カゴとか編むと高値で売れます」


と教えてくれたので、


「それなら」と手分けをして素材を集めて倉庫に送ったのちに、石で出来た巨大な帽子の片付けを始める。


村人が見守る中で、石造りの三角帽子を回収すると、中からサラサラと真っ白い灰の山が現れた。


石鹸チームのアンちゃん達が、


「旦那様、この灰を使って石鹸を作りますか?」


と聞いてくるので俺は、


これを使えば向こう10年は植物油が有れば石鹸を大量生産出来そうだが…と考えたが、やはり、


「虫魔物の灰も大量に入ってるし…止めておこうか…」


と伝えてからヒッキーちゃんと協力して範囲回収を使い灰の山と焼け焦げた土をゴッソリと回収し、配達を使い空いた大穴に、周りの土も混ぜながらミルフィーユ状に埋め直す。


あの異臭を放つ物体エックスも高熱により炭になったようで、匂いも全く無くなり安心して埋め立てに使用できた。


最後に村人総出で地ならしをして仕上げに作業中にホープ君とサーラちゃんがシーナさん達と拾ったドングリを荒らした大地に埋めておいた。


何年か後には虫や鳥ではなくて、猪魔物がドングリを目指して帰って来て欲しいと願いながら…

そして、最終的に手に入ったイビルアイビーのコアだが、金属っぽい質感のソレは熱で変形して、倒すと経験値が沢山入りそうな某スライムの様な見た目になっていた。


俺は、そのコアをガルさんに渡すとガルさんは、


「おぉ、キース様、あの蔦の魔物の素材だからイビルアイビーのコアですか?!

昔に一度だけ加工した事があります。

やりましたね、凄い装備が出来ますぜ!

ただ、どんな効果が出る素材かは、コアの持ち主が喰らった魔物によりますがね…」


と言っている。


フッフッフ、実は解るのだよ…

イビルアイビーと、物凄い数の虫魔物のおかげで現在レベルが51に上がり、


1日の滞在ポイントが25と、家族登録枠も25に上がり、ついでに一人3ポイントになった…つまり1日100ヒッキーポイントになった…

しかし、言いたいのはそこではなくて、

なんと監視機能に鑑定機能が5000ポイントで追加できたのだ。


すこしお高い機能の様に思うが監視機能で捉えた人物の名前が解る事で、ニンファの町で騎士団のコスプレをしてやって来た軍務卿の配下の貴族みたいなのがまた来た時には必ず役に立つはずだし、

それに鑑定機能と索敵機能をリンクさせれば、いちいちカメラ機能で反応があったポイントを確かめなくても、敷地内に入った魔物が何かがすぐに解るようになり狩りがはかどる。


それに、ソナー機能と鑑定機能をリンクさせれば、地中の鉱石を指定して探せるので、採掘の効率も爆あがりする…

まぁ、そんな事もありマスタールームにいるヒッキーちゃんは、もう以前のヒッキーちゃんではない…スーパー出来る娘に変身したのだ。


「ヒッキーちゃん鑑定よろしく!」


というと俺の頭の中に、


『イビルアイビーのコア、攻撃力・防御力微上昇効果と、速さ超上昇効果ありです。』


とのアナウンスが頭に流れた。


その結果をガルさんに伝えると、ガルさんは、


「くぅ~、何をどんだけ喰ったか知らないが、上昇効果(超)なんてなかなか無いと聞きますよ!

出来ればスピードを殺さない軽くて強い装備にしますので、これを使った魔鋼でキース様とナッツさんの装備を整えましょう」


と言ってくれたのだが俺の頭の中には、

ダンゴムシ=防御力微上昇

蜂=攻撃力微上昇

ハエ & G =速さ超上昇

との答えにたどり着いて何とも言えない気分になっていた。

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