第93話 難民の勤め先として
別荘指定をして壁を作りはじめたのだが、まだまだ掛かりそうなのでジーグ様達には一旦ナナムルへ帰って頂き俺達は夜を通して2日がかりで壁生成などを続けて大体の町の下地が出来上がった。
外側の壁の中は養殖場や農場や牧場の区画割も完了し、二枚目の壁の中は商店街や工房やエリアには通り毎に下水路も張り巡らせ、一番中心側の三枚目の壁と一体化した石作りの建物は、ポイントの関係上中に強度を上げる為の壁が等間隔に並ぶだけのまるでシャッターの無いガレージの様な作りで、扉も窓も無い状態のままだが一旦完成となった。
これから、製材した木材などを使い窓や扉を作って居住エリアを整えて完成しだい順番に入居して貰う予定だ。
可能で有れば今年の冬には避難民の全員に暖かい家と何かしらの仕事を用意してあげたい。
俺はナッツに
「なぁ、ナッツ、養殖するのに必要な物は何かな?」
と聞くと、
「そうですね。
昨日作ったソイルワーム牧場でエサはかなり用意出来ますし、耐水石粘土があれば養殖池も問題なく作れそうですが、村と違い水が湖からの水路なので、上流の川からの水を止めて栓を抜いて池を掃除したり水の入れ替え等も大変そうですね。
捕獲した魚がこの湖にしかいない魚の場合、一から生態を調べる必要が有りますが、まずはとりあえず養殖池が出来たら釣りがしてみたいですね」
とルンルンでナッツは答える。
これは、早めに池を作ってナッツに釣りをさせてやりたいな…などと考えながら、次はホークスさんに購入品をピックアップしてもらい、早急に必要な物をナナムルの街で揃えて貰えるように手配していると、ジーグさん達がナナムルの町からやってきた。
「キース殿、言われておりました助っ人を連れて参りました。」
と、言って荷馬車に分乗した難民の方々を連れて来てくれた。
元冒険者兼農家だったオジサンや、元木工工房の親方と弟子チームに鍛治師や左官職人などを日雇いの条件で募集してきてくれたのだ。
ジーグ様は、やはり切れ者でなんと、耐水石粘土や耐火石粘土に耐火レンガも複数の荷馬車いっぱいに積んで来てくれた。
ジーグ様は、
「いやぁ…キース殿、一夜で本当にここまで出来ているとは…」
と町を見渡すので、俺は、
「今日は、
と、どうでも良いが少し気になって聞くとジーグ様は、
「あれだけの凄まじい力を見せられて、ただ単にキース殿に敬意を払っているだけです。
まぁ、お兄ちゃんと呼んでくれたら、親愛の証しにキース君と呼ぶがね…」
と笑っていた。
ジーグ様が30人程のアルバイトを連れてきてくれたので、先ずは、工房地区に鍛治釜戸の制作を鍛治師さんと左官職人さんに依頼し、鍛治用の作業小屋を木工職人さんにお願いし、力自慢の方々にはヒッキーちゃんに村から井戸堀りセットを配達してもらい、櫓を組んで人力でスイコを使い井戸堀りを依頼する。
俺はヒッキーちゃんに連絡をしてガルさんに循環パイプを四本依頼し、俺とナッツで風呂を作ろうかな?と考えたがやはり餅は餅屋だろう…と思いつき、ナッツに、
「ナッツ、悪いけどウチの村の大浴場も手掛けた親方を専属で雇いたいから交渉してきてくれない?」
とお願いした。
『あとは、何をしようかな?』
と考えるが、俺自身はもうポイントもカラカラで、出来る事は配達と木材の製材ぐらいだ。
本当は町の警備に小型ガーディアンゴーレムだけでも配置したいが当分は無理そうだし、現場を巡っていると職人さん達が、
「板材は有りますか?お貴族様」
と聞くので、
「皆さん、俺みたいな貴族になり立ての小僧に(お貴族様)なんて畏まらなくて良いから、俺の事はキースと呼んでください、
普段は気楽な冒険者で過ごしてるので…でも、他の避難者の為にも仕事はバッチリお願いしますよ。
木材は大体の寸法と数を言ってくれたら用意します」
と俺が言うと、
「こりゃ気さくな雇い主さんで有難い!…礼儀はなっちゃいない俺らだが仕事でしっかり応えるぜ!
早速だがキースの旦那、板材を幅は特には気にしなくて良いから馬車いっぱい程度用意してくれますかい?
柱材は沢山用意して貰ったみたいだからね」
と、言っているのでヒッキーちゃんに、
「悪いけど、村の西側の森エリアか、北側の森の木を十本程、板材にして送って。」
というと、音声のみで頭の中に
『ガッテンでい!』
と聞こえた。
多分、今ヒッキーちゃんは何かしらのコスプレしてるなと声のトーンやテンションで解る俺に少し呆れていると配達機能で板材がポンポンと俺の近くに現れる。
職人さん達が、
「これは、どういう?!」
と驚くので、
「ベッキーさ~ん。」
と呼ぶと、投影クリスタルが現れベッキーさんが映しだされる。
そして、俺が、
「この町を見守る精霊さんです。木材も彼女がくれますので…」
と紹介すると、ベッキーちゃんは、
「あら、まぁ?!」
と、へんな紹介をされて驚くが職人さん達はベッキーさんに祈りを捧げ、俺は、
『用意したのは私なのに!マスターは依怙贔屓がヒドイですっ!!』
と、ヒッキーちゃんから抗議を受けていた。
俺は、小声で、
「ヒッキーちゃんの投影クリスタルは村用にしたいから…それに、紹介するにも今ヒッキーちゃんは精霊さんっぽくない格好だろ?」
というと、
『何故それを…』
とヒッキーちゃんは驚いていた。
俺は、『 やっぱりコスプレしてたか…』と呆れながらも、
「ヒッキーちゃんは別荘の精霊でなくて、マイホームの妖精さんだから、今回はベッキーさんに譲ってあげてね。
晩御飯に好きな物を具現化してあげるから…」
と伝えると、
「仕方がないなぁ…マス太くんはぁ…」
と、大山声をだしていた。
ご機嫌が直ったみたいだな…と思いながらも、ベッキーさんに手伝ってもらい養殖池用の四角い穴を範囲回収で空けたりしていた。
昼にはナッツが我が家に来てくれていた大工の親方と三人の弟子を呼んできて、ホークスさんに頼み親方達とウチの専属大工契約を交わしてもらい、大浴場と集合体住宅の見本となる第一号棟の工事を依頼した。
親方達には村役場の一室に寝泊まりしてもらい、毎日朝にやってくるアルバイト大工さん達と協力して町を作るリーダーになって貰った。
親方は、
「風呂をすぐに作っちまうぞ!仕事後の風呂は最高だからな!!」
と、弟子の三人と町の中央広場近くで力持ち達と、まずは井戸を堀り始めてもらった。
ジーグ様は、
「凄いね…皆イキイキと仕事をしている。
キース殿はどこでそんな人の心を掴む術を…」
と、聞いてくるので俺は、
「別に…自分欲に正直に動いてるだけですよ。
安心して暮らしたい、旨い物が食べたい、汗水たらして働いたらひとっ風呂浴びたい…
出来ればソレを一緒に分かち合って、一緒に笑えたら最高じゃないですか?」
と答えて、
現場に戻り敷地内回収などで資材を運ぶ手伝いをしていたのだった。
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