第92話 別荘を開拓しましょう


別荘の敷地内の不要な木を回収機能で引っこ抜き、資材倉庫の機能で製材した木材は、配達機能で別荘に運んで貰ったし湖のほとりからのびる堀や道と排水路も完成した。


そして、現在は大体敷地目一杯一キロ四方の石壁を生成し始めている。


一番外の壁が完成するまで三時間…流石に広いだけはある…高さも厚みもジャルダン村の半分以下に設定し、このあと工房エリアと居住区画の二ヶ所を大きな四角いケーキの様に段々と中心が高くなる丘の段差の境目に壁を配置し、真ん中の一番高いエリアは、壁と住宅を合わせた三階建ての団地をポイントと相談してつくる予定である。


一度マスタールームから戻った俺は、


「ホークスさん外側だけで三時間かかりますよ…

ナナムルの町に戻って、この町の門扉を作れる職人さんを探さないと…ガルさん達に頼んだら現物はできても取り付けが出来ないからね。

ジーグ様、良い職人さんか何なら難民の中で大工さんや鍛治職人を探して下さい。」


と、ジーグ様にお願いしようとしたのだが、ジーグ様は完全に放心している…


「ジーグ様、ジーグ様ってば!」


と俺の呼ぶ声に我に返ったジーグ様は、ドンドンと完成していく石壁を指差し、


「な、な、なな、」


と良く解らない言葉を放っている。


投影クリスタルからベッキーさんが、


「大丈夫ですか?」


と声をかけるが、ジーグ様はベッキーさんを指差して再び、


「な、な、なな…」


と更にパニックになっている。


『いや、ベッキーさんのクリスタルは二時間ほど前から出てただろうに…いい加減馴れてよ…

あとベッキーさんも、ジーグ様の「な、な、ななぁー」で「誠にすいまメーン」ってやらない…

元ネタ知らないからジーグ様が怯えてるよぉ…』


と、意外にお茶目なベッキーさんに驚きつつも、全く役に立たなくなったジーグ様に呆れた俺は深いタメ息の後ホークスさんと二人でジーグ様達を揺すりセラさんに頼んで水袋を持ってきて貰った。


水を飲んで落ち着いたジーグ様は、


「あれは何です?!」


と改めて騒ぐがホークスさんがジーグ様に、


「キース君…いや、ジャルダン準男爵殿の希少スキルです。

報告書を読んだのでは?」


と、少し意地悪そうに告げると、ジーグ様は、


「あれは、先生がジャルダン準男爵に箔をつける為では…?」


というが、ホークスさんは急にキリッとした顔つきで、


「馬鹿者!私はいつも言っていたはずです。

報告書は正確に客観的に!と、そんな基本も忘れる様では、まだまだですね。」


と、ピシッっというとジーグ様は、


「申し訳ありません…先生…」


と謝り、


「先生…では、この神の御技の様な現象は?」


と、聞いてくる。


ホークスさんは、


「それは、ジャルダン準男爵殿より御教授して頂きなさい」


と言ってこちらに丸投げしてきた。


俺は、


「その前に、寒いですから家で話しません?」


と提案するとジーグ様や文官さんも「家?」と首を傾げるので、


「ヒッキーちゃん、村役場の中から皆退避出来てる?」


と、俺が空中に話すと頭の中に


『ミリンダさんにお願いして、寝具と暖炉の薪も室内に運び込んであります』


と、報告がきたので、


「では代官屋敷予定地に移築ヨロシク」


と俺がいうのとほぼ同時に村役場の建物が丘の頂上付近に現れる。


再び口を開けて放心する一同に、


「そういうのは、もう良いから…寒いから入りますよ」


とだけ言って村役場へ向かう…俺は、セラさんに、


「セラさんも初めて見てびっくりした?」


と、こっそり聞くと、


「信じられない事でも、信じられる人物の書いた報告書は信じます。

ちょっとビックリはしましたけどね。」


と言っていた。


村役場に向かい、馬車の馬達を村役場の厩舎で休ませて俺達は室内で暖炉に火を入れテーブルでお茶をしながら投影クリスタルも使い、


「ポイント貯めたら壁が作れるよ…」


みたいな各種説明をしているとベッキーさんから、


「マスター、外壁完成まで一時間を切りました。

第二外壁の設定の為に、一度マスタールームへお願いします」


と投影クリスタルにベッキーさんが映ると、ジーグ様は、


「聞きそびれていたが彼女は?」


と聞くので、


「この地を治める精霊とでも思って下さい。

あと、しばらく意識を失くしますが気にせずに御歓談下さい。」


と、いって俺はマスタールームに意識を飛ばした。


マスタールームに行くとヒッキーちゃんが石材を集めながら、


「マスター。

作業に入る前に、資材倉庫の木材を処理した時の葉っぱが邪魔です。

作業が大変で…」


と泣きついてきたので、

ベッキーさんの投影クリスタルを使い、ナッツに


「寒いけど、ソイルワームを何匹か捕まえて来てくれる?」


と伝言を頼み、別荘の農業エリア予定地の中に範囲回収で土を回収し、プールのような穴を空けて、脱水された葉っぱを放り込み、回収した土とミルフィーユ状に配達機能で腐葉土コーナーを作る。


あとはナッツのソイルワーム待ちだな…

と、一仕事を終わらせ次の第二外壁の設計を始める。


一番外の壁より半分程度の距離になり、一時間半と3000ポイント程度で作れるらしく、元から一万ポイントちょっと所持しており、

別荘のお祝い…多分難民の為に使うと知った神様のご厚意の気がするが、5000ポイント手に入れた。


グリフォン騒動で魔物群れを倒したのでレベルも6上がり、37となり600のレベルアップの追加ヒッキーポイントもあるので…

第二外壁を作っても7000近く残るので仮設住宅が作れるかな?…

とりあえず、第二外壁を作ってから考えるか?

あっ、待てよ…俺、粗方の工事が終わるまでここの土地から出られないんじゃないかな?

などと考えている間に、一番外の外壁が完成し第二外壁の生成を開始する。


俺は、


「また、村役場に戻るからなんか有ったら連絡ヨロシクねベッキーさん」


というと、


「畏まりましたマスター。」


と頭を下げるベッキーさん…

マスタールームから出ようとすると、ヒッキーちゃんが、


「マスター、私には?贔屓を感じます!

何故ポッと出のベッキーは(さん)なんです?

私の方が濃密な時間を過ごしたハズですよ!?」


と騒ぐので、俺は、


「では、これからは、ヒッキーとお呼びすればご満足頂けますでしょうか?

ではヒッキーさん失礼します。」


と機械的に話し、


「ベッキーさんもヨロシクね。

なんか有ったらいつでも呼んでね。」


と、俺がにこやかに話すと、ヒッキーちゃんは涙を浮かべ、


「マスター、私が馬鹿でした…

ぜひ、(ちゃん)のままで、出来れば感情アリでお願いします。」


と、訴えるので、


「それならよろしい。」と許してやり、ヒッキールームの冷蔵庫やお菓子コーナーを充実させて、


「たまには休憩挟みなよ、食べ物は仲良く分けて食べること…

ヒッキーちゃんはお姉さんなんだから優しくしてあげてね」


といってマスタールームを後にした。


100%ベッキーさんの方がお姉さん風なんだけど、生まれた順で考えたらヒッキーちゃんがお姉さんだからね…



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