第90話 ピタゴラな真実


『やらかした…』


冒険者ギルドの方々とジョルジュ様達が村に来て、色々と話しをまとめた結果どうやら最悪なピタゴラ装置が発動したらしい。


まず、いつもは豊富な獲物が何十年も狩られずにいたウチの近所の西の森が乱獲で獲物不足になり、

次に俺の教えたトンカツのせいで古の森のオークキングが狙われオークが住む大集落の本拠地が、名のある冒険者が集合したクランに攻められオークキングを失う。


そして、キングや上位種を失った周辺の一般オーク達が古の森では生活出来ずに獲物を追いながら大移動したが、いつもはワンサカいる手頃な獲物が居ないので広範囲にうろつく羽目になる。


ついでに、例年より厳しい冬と食糧不足はオークだけでは無くて、グリフォンも寒くて腹ペコでイライラしていたところにオークの集団というご馳走が現れる…

という事で装置の完成である。


多分オークの中では前に俺達が巨乳オークチーフを倒した辺りが、安全で食糧もある弱い群れの隠れ家だったのだろう…

勿論あの洞窟は再びオークさんが引っ越して来ない様に岩で蓋をしたままで逃げ込めないし、グリフォンが追いかけてきて止まる訳にもいかない状態で結果としてウチの村へ向けてのスタンピードに発展と…まぁ、原因がバッチリ俺で有る。


しかし、ジョルジュ様は、


「すまん、辺境伯様からの依頼でオークキングの納入をギルドに頼んだからだ…」


と謝るし、冒険者ギルドマスターのイルサックさんは、


「いや、納期が近づいたので比較的温かく冬場も狩りの出来る古の森を狩り場にしている強い冒険者に特別報酬を出してキング狙いで強襲させたからオークの残党が…大変申し訳ありません」


と謝ってくれた。


しかし、理由は言えないが罪悪感から俺も頭を下げており現場はかなりカオスな状態が続いたが、何とか、


『例年より厳しい冬が悪い!』


という事でこの話は落ち着いた。


ジョルジュ様は、


「キース君…どうするの?グリフォン…」


と民家程もある巨体を眺めながら聞いてくるので、何も決めてない俺は、


「どうするのが一番ですか?」


と、聞き返してみた。


ジョルジュ様は、腕を組み暫く考えた後、


「王族へ献上出来れば良いんだけどね…戦争が長引いてる今ならば武勇の証のグリフォンの肉は勿論滋養強壮に効くし羽根から爪や嘴、果ては骨に至るまで武器や防具の素材として使える」


と言っているが渋い顔で、


「しかし、我が家のアイテムボックス持ちのオルトンでは、あのグリフォンは運べないからな…」


と言っている。


俺が、


「では、王都まで運ぶのは無理ですね。」


と、ガッカリするとジョルジュ様は、


「何とかナナムルまで運べれば、王家には凄いアイテムボックス持ちが居るからドラゴンでも運べるらしい。

ちょうど10日後にはナナムルの街で陛下をお招きしたパーティーの予定だから王様に献上するチャンスではあるが…」


と言いながら俺と二人でグリフォンを見上げている。


『ナナムルに配達機能で飛ばせれたら良いんだけど、うーん?…あっ!、別荘指定したらイケるんじゃね?!』


と閃いた俺は、ジョルジュ様に、


「難民の為の町ってもう場所が決まってますか?」


と聞くと、ジョルジュ様は、


『え、なんで今それを?』


みたいな顔をしながら、


「このパーティーが終わり次第キース君を呼んで町作りをするから、もう決まっていて各種書類も整っていると思うけど?」


と、答えてくれた。


イケるんじゃん…そうと決まれば!


「あのグリフォンを丸々王様に献上します。

ジョルジュ様、パーティーに一緒に行ったらダメですか?」


と俺が聞くと、ジョルジュ様は更に困った顔をしながら、


「献上するのならば、嫌でもキース君に来て貰うけど…どうやって運ぶの?」


と聞くので、俺は、


「所有地から所有地へ物を運べる能力が有ります」


と答えると、こめかみを押さえたジョルジュ様は、


「何でもアリだな…」


と呆れていた。


『ならば行動有るのみ!』


と、俺は、


「イルサックさん、町で必要なだけオークを引き取って下さい」


とお願いすると、


「30ほど買い取るよ」


と言って職員さんと状態の良いのを選びはじめた。


ジョルジュ様にも、


「要るヤツをどうぞ」


というと、ジョルジュ様は、


「キース君の件も有るので、明日には出発したいから私は要らないよ。

それよりキース君も明日には出発出来るかい?」


と聞いてくる。


ガルさん達に、


「馬車って出来てる?」


って聞くと、


「ナッツさんがサイラスの錬金ギルドから注文していた水晶板硝子を今日もらって来てくれたから、今晩中に皆で仕上げます」


と言ってくれた。


俺が、


「ナッツは凄いね、こうなると解ってたみたいだね」


と、誉めるとナッツは、


「村まで移動する準備に一時間欲しいと言われたから、ついでに錬金ギルドに寄ってみただけですよ」


と、少し照れながら答えた。


『こういういい感じなピタゴラなら大歓迎なのに…』


と、思いつつ俺は冒険者ギルドのお眼鏡に叶わなかった獲物を片っ端からポイントに変えて、ついでに、別荘指定枠も1000ポイントで交換しておいた。


そして翌朝、俺とナッツとホークスさんと何故かセラさんも一緒にナナムルへと向かうために、一度サイラスの町のジョルジュ様の屋敷を目指す事になったのだが、馬車の中でセラさんに、


「何でセラさんも?」


と聞くと、


「今回は王族をお招きしてのパーティーよ、下っぱ貴族に出すメイドはメイド長も準備してないわよ」


と、言ってきた。


物凄く納得した俺にセラさんは、


「何か言うことないの?準男爵様…」


と、ドヤってくるので俺は、


「セラさんが居てくれて助かるよ。ナナムルでもヨロシクね…」


とお願いをすると。


セラさんは、


「お任せ下さい旦那様」


と、満足気だった。


ホークスさんが、


「ごめんね…気の強い娘で…育て方間違えたかな?」


とションボリしているがナッツがポソリと、


「セラ姉ちゃんは昔から気が強いからホークスさんのせいじゃないよ…」


と呟くと、ホークスさんが昔のセラさんのエピソードに興味を持ち、聞かれたらバラすナッツと、バラされないように騒ぐセラさんという前回よりも賑やかな旅が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る