第85話 お見合いの結果報告


疲れました…


本当…お見合いなどハシゴするものではない。


夕方までかかり三人とお見合いしてシーナさんとお付き合いすることに決めたのだが夕食を俺と二人で取ることになったダイムラー伯爵様は、


「我がいうのも変だが、本当に良いのか?」


と聞いてくる。


まぁ、婚約破棄経験ありの23歳…この世界中では微妙かも知れないが俺的には全く問題は無い…むしろ、『あんな若いお嬢さんと…こっちが大丈夫でしょうか?』ぐらいの心境だ。


俺はダイムラー伯爵様に、


「伯爵様と二人きりだから白状しますが、エトランゼ様とローラ様はなんと言いますか…元気過ぎまして…

シーナ様の様な落ち着いて自分の気持ちを話してくれる女性が好みと言いましょうか…それに昨日のエルグ様の一件の時に何故か泣いているシーナ様をお見かけして気になっていたところに、お見合い相手として現れビックリしました」


と、正直に話した。


ダイムラー様は、


「そうか、もう勝負は前日に着いていたのだな。

下の二人がシーナに負けるなんて!と言っておったがこれを機に魔法適性など人の優劣を決めるのに関係ないと学んで欲しい…

下の二人は負けん気が強くてな…良くも、悪くも貴族なのだ。」


と、ボヤキながらワインをグビグビ飲んでいる。


そして、ダイムラー伯爵様は手元のワインを眺めて、


「もう、前ほど旨く感じなくなってしまった…どうしてくれるキースよ」


と訳の解らない文句を言われて、俺は、


「大好きと言われていたワインの味がしなくなる程に娘を嫁に出すのが嫌ですか?」


と、意地悪を言ってみるとダイムラー伯爵様は、


「いや、むしろ嬉し過ぎて浴びるほど飲みたいが酒を含む度にあの酒がチラつくのだ…」


と、寂しそうに語る。


俺が、


「村にまだ一樽有りますので要りますか?」


と聞くと、


「結納替わりに貰う…という手も有るが今日の会議で聞いたぞ。

それこそ仕込んで通常でも数年かかると…そんな貴重な物をあんな飲み方をした自分が情けない…」


と項垂れるダイムラー伯爵様に、


「ほとんど床が飲みましたからね…」


と俺がイジワルを言うと更にシュンとなってしまった。


少し可哀想になった俺は、


「そんな、ダイムラー伯爵様に朗報です。

なんとウチの村には一年入れて置けば60年熟成した効果の特別な蔵がございます。

樽の本数に合わせた預かり料を頂きますが熟成が進むほど味わいが増す蒸留酒…今回の物で半年その蔵で寝かせた物…つまり30年物相当…二年も寝かせれば120年物に…飲んでみたく無いですか?」


と、ビジネスの話しをしてみるとダイムラー伯爵様は、


「ガッハッハ!やはりキースは知恵が回るな…何とも商売上手だ。

我らを旨い酒の虜にして再び飲めるのは30年以上後と落胆させた後に半年後に手に入る方法を…一樽大金貨何枚だろうとあの酒が買いたくなる。

しかも、預かり賃だけでそれが自分達の領地の酒としてパーティーなどで振る舞えるとなると戦争が起きるな…しかし、娘を託すには心強い!

安心したら急に酒の味が前よりも更に旨くなったぞ!!」


と満足そうに飲んでいた。


その後はダイムラー伯爵様の、


『ウチのシーナちゃんの話』


が延々と続き彼女の幼い時の可愛さにニコニコしながら飲み、そして、婚約破棄に怒りながら飲み、それから彼女は心を閉ざし気味になったと泣きながら飲んで最後にはダイムラー伯爵様が酒に飲まれていた。


『どうすんのよ!俺1人じゃ無理だよ…運ぶのなんて…』


と困っているとガタイの良い2人の騎士さんが部屋に入ってきた。


「えっ?」と驚く俺に、


「驚かせたか?すまん…親父が喜んでいたから、多分酔いつぶれるまで飲むだろうと部屋の外で警備がてら待っていたんだ。

静かになったから親父を引き取りに来た。

俺はダイムラー家長男のレイモンドで、隣は次男のベントだ…妹を頼むぜ。」


と言ってくれた。


俺は、


「こちらこそ宜しくお願いします。

キースとお呼び下さい。

お二人も夕食をご一緒出来れば良かったですのに…」


というと、二人は、


「俺たちまで飲んじまったら運べる奴が居なくなるからな…

また今度な…あとは兄ちゃん達に任せて今日は鼻っ柱の強い下の妹の相手をして疲れただろう…

キース君はゆっくり休めよ…じゃあ、お休み。」


と言って二人がかりで、ズルズルと伯爵様を運んで行った。


この部屋担当のメイドさんが水差しを持って入れ替わりに入室して、


「あらぁ、お水…間に合いませんでしたか?!

将軍様があれほど酔われるとは…酒豪で有名ですのに…」


と驚いていた。


後片付けをメイドさんにお願いしてやっとの事で自室に戻ると、セラさんとナッツとホークスさんが俺を待っていた。


そして、ニチャニチャと粘っこい笑みを浮かべた三人に、それはもう根掘り葉掘りお見合いでの話しを聞かれるイベントが待っていた。


「何で全部話さないといけないの?」


と反論したが、


「相棒だから!」


「担当文官ですので」


「新たにジャルダン家のメイドに任命されましたので…」


と、それぞれの主張を述べたのだが、


「えっ、最後の知らないよ?!」


という俺にセラさんが、


「今日決まりまして、今言いました。

良いでしょ!聞かせてくださいよぉ~」


とゴネるので、結局全て話す羽目になってしまった。


もう、俺のメンタルは赤文字の危険状態までクタクタに疲弊してしまったのだが、翌日には貴族としてのお母様…そうアリア様への報告業務が待っていた。


もう、村に帰って一旦帰ってゆっくりしたい…

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