第83話 怒りと哀しみの家族会議
結局、ホークスさんの怒りは収まらなかった…
何故ならセラさんの里の話を知っていたホークスさんは勿論ナッツの素性も理解している。
というか、ウチの村で何故こんな高度な計算などの知識があるのか?という質問を受けた時に、大概の我が家の事情は話してあるので、俺はセラさんの存在は知らなかったが、ホークスさんは俺達の話からナッツがセラさんの生まれた暗殺者の里の長の息子の1人と気づいていたようだ。
セラさんから、本家に手を出すと…みたいな話しを散々聞かされていたホークスさんの過剰反応な部分もあるがユーノス辺境伯様も交えて、
「エルグ様の所からセラを引き上げさせる!」
と、いつものクールなキャラクターでないホークスさんの剣幕に辺境伯様が訳を聞くと、俺に向けて間者を放ったと聞き今度は辺境伯様が怒り出したのだがそれ以上に大激怒だったのがアリア様である。
真っ赤な顔で部屋を出て行ったかと思えば廊下から、
「エルグはどこにいますか!?」
と聞こえ…数分後には廊下の遠くから、
「痛でででで…ち、ちょっ、母上…痛いです…」
という声が近づいて来たかと思えば、アリア様に耳を摘ままれ連行されたアラサーのエルグ様が涙目で現れた。
そして、アリア様は、
「私は恥ずかしい!まずは私の片割れとも言える親友の忘れ形見に間者を放ち信用を失墜させた事について謝りなさい!
それと、ホークスさんとの約束を破りセラちゃんに間者をさせた事も私は怒っています!!
セラちゃんは普通の女の子として我が家のメイドをしてくれているのよ…それを貴方は…私は悲しい…」
と、ポロポロと泣きだしてしまった。
すると、ユーノス辺境伯様が、
「俺の女を泣かしやがって!」
とゲンコツをエルグ様に落とす…
『俺は、何を見ているんだろうか?』
と、客観的になってしまった俺は、ぼーっとエルグ様を観察して、
『残念なオッサンだな…奥さんも居るのに…ママに耳を引っ張られ、パパにゲンコツ…ダメダメだな…』
との結論にたどり着くのにさほど時間は要らなかった。
もう、それからは辺境伯家のお説教タイムで、会議の時間だと辺境伯を呼びに来たジョルジュ様や、お見合いの為に俺を探してたダイムラー家の方々と、続々と人が集まり現場がカオスになるなかで辺境伯様は、
「エルグよ、お前は時間をかけてナナムルの街にある問題を何とかしようとしたのか?私ですら難民を受け入れ切れずアリアの助言で炊き出しをするのがやっとだった。
しかし、ジャルダン準男爵はこの数日で情報を集め、自分の私財を投じても難民とこの領地を救う案を提示してくれた。
そのジャルダン準男爵に間者を放つとは!!
春からジャルダン準男爵の元で一緒に難民の為に働く者をジーグに決めて正解だったわ!」
と叱られている…
『可哀想に…自分の派閥の貴族の前でケチョンケチョンに叱られて…貴族社会での死を意味しない?
助けたほうがいいのかな…』
と考えた末に、『仕方ないか…』と腹をくくった俺は、
「辺境伯様…
私は大丈夫ですので、その辺りでお怒りを静めていただけませんでしょうか…
確かに、メイドを使い私を探ったことは気分の良い行為では有りません。
しかし、王都で辺境伯邸の留守を預かるエルグ様はこれぐらい周囲の危機に気を配れるぐらいで無ければいけません。
どこの馬の骨とも解らない私が辺境伯様の近くをうろつくのを心配されるのも当然…まぁ、やり方は如何な物かと思いますが…」
と言って、俺はエルグ様の側に歩み寄り、
「エルグ様…
改めまして、キース・ド・ジャルダンと申します。
元ナルガ子爵が次男で、魔法適性なしの自宅でのみ発動するスキルしかないDランク冒険者です。
五歳の時より跡目争いから外され軟禁生活をした上に追放された残念な子供でアリア様の親友パトリシアの息子です。
これで、何処の馬の骨かは解って頂けたかと…
もう、間者を放たなくても秘密にするような事は…そんなに無いですよ…」
と言ってエルグ様に手を差し出した。
そして、硬い握手の後にエルグ様は、
「すまん…あまりに母上がそなたの事を話すモノだから…ヤキモチ?を焼いていたのかも知れない…」
と言ってきたので俺は、
「母上思いなのは素晴らしいですが奥方や他の人の前ではお控え下さい…セラさんも(キモい)と申しておりましたよ。」
と、小声で告げて軽くダメージを与えておいた。
『大勢の前で俺の悲しい過去を晒す羽目になった仕返しだよ…』
しかし、俺が元子爵の子供だったと知らなかった者は少し驚いていたみたいだったが、多くの者が見守る中でただ1人何故か泣いている令嬢が居た…
俺は、その令嬢が誰かは解らなかったがただ少し気になった。
だが、これだけで終わる訳には行かないようで急遽、様々な予定が変更されてその後は辺境伯家の家族会議が開催されたので、勿論ダイムラー家とのお見合いも明日へと変更になり来年から本格始動する予定の難民救済計画について辺境伯様が旗頭となり補佐がエルグ様そして現場監督がジーグ様と決まり、ここで初めて俺は正式にジーグ様と挨拶を交わす事となったのだがジーグ様は、
「ジャルダン準男爵…ウチのノルンちゃんとのお見合い…断ったらしいね…」
と、いきなり聞いてきた…
『えぇ…昔踏んだ地雷が今頃発動するの?…勘弁してよ…』
と思う俺に、ジーグ様は、
「良く言った!気に入った!!
しかも、ウチのノルンちゃんの心配をしてくれて断ったらしいじゃないか…私は嬉しい。
ノルンちゃんはどこにも嫁に出さないが君とは家族の付き合いがしたい!
ジーグお兄ちゃんと呼びなさい。
ノルンちゃんの事を一番に考えてくれたのだからその資格はある!」
と…長男はマザコンで、末の息子は親バカ…
アリア様…お宅のお子さん、キャラが濃いですね。
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