第51話 春の到来と新たな機能


平和な冬も終わり喜びの春がやって来たのだが、むしろ大変になってきた。


それは、ポイントが貯まったので大型資材倉庫 1500ヒッキーポイントを母屋の裏庭に配置し他の保管倉庫も裏庭に配置し直して倉庫機能の警備をし易くしたのだ。


見た目は木箱二つに鉄製の小さな物置小屋1つだけなのだがコレがここでの生活の要なのである。


倉庫は皆の生命線なので警備し易くするために一ヶ所にまとめて欲しいとのイチローからの提案だった。


朝からマスタールームにこもり毎朝の日課になりつつあるヒッキーちゃん用の食べ物の具現化を済ませ、そして現在ヒッキーちゃんが裏手の岩山をジャンジャン資材倉庫に放り込んでいる。


ただでさえ石垣の時にも盛大に回収したので露天掘りの様になった岩山で、俺のスキルのレベルが上がり以前は地上に一部出ているなど監視機能で確認出来る事が条件だったが、現在は、〈縦・横・深さ〉三メートルまでならば範囲指定で回収出来る様になっている。


もしも範囲外迄続く地中の岩等があれば、その岩以外の範囲の物質を回収して次に現れた岩を指定して回収すれば綺麗に岩も回収出来る。


モニターを眺めながら先ほど具現化したおやつを頬張る俺とヒッキーちゃんの片手間作業で岩山に突如現れるプールの様な凹みを見て、


「マスター、サンドボックス系のゲームみたいですね〈パリポリ〉

真下に地下深くまで掘り進めたらダイヤとか出てダイヤで装備が作れたりしませんか?〈サクサク〉

あれみたいに〈モグモグ〉」


と相変わらずお行儀は良くないヒッキーちゃんに俺は、


「食べながら作業は良い事にするけど、食べながらお話するのは感心しないよ…

それに、あのゲームではマグマは下に行くだけだけど現実では圧力がかかったマグマに当たったら噴火するんじゃないの?…怖いよ…」


と、直下堀りを禁止にしておいた。


下手に山からマグマが流れ出て村ごと全ロスなんて嫌すぎる…

ちなみにだが大型資材倉庫の容量は体育館一杯程度とヒッキーちゃんから説明が有ったが良く解らない…


『どの規模の体育館だよ…』


と思ってしまう。


しかし、新しく解放されてからまだ使った事のない壁生成の機能は、この大型資材倉庫のオマケ機能みたいなモノなので、現在の石垣から壁に建て替えるのには必要な機能であり、所持しているポイント的に少しお高く感じるが無理をして大型資材倉庫を交換したのだ。


ヒッキーちゃんから、


「〈モグモグ、ごっくん〉

マスター、大型資材倉庫の容量50%を越えました。

リストをご覧下さい…沢山回収出来た上に、ちゃんと言い付け通り飲み込んでから話した私を誉める事を推奨します」


と、報告ついでに願望をブチ込んでくるヒッキーちゃんに、


「ハイハイ、エライね」


と口だけで返事をして、俺は資材倉庫の中身のリストをモニターで確認すると、


〈石材〉

〈土〉


『鉱物資源』

〈鉄〉〈銅〉〈水晶〉〈アメジスト〉〈ガーネット〉


と、名前が並んでいる。


俺が、


「なんで、石では無くて〈石材〉なんだ?」


と呟くと、作業する俺の腕の下から頭を突っ込み、構って欲しい猫みたいに撫でろと目でアピールするヒッキーちゃんが、


「仕分け機能だよ。

石の現物では無くて砂粒の様な状態で保管されているのでヒッキーポイントを支払い、その砂を固めて一枚の岩壁として生成するのが壁生成ですから。」


と、教えてくれた。


「なるほど…」


と、納得して俺は片手間でヒッキーちゃんの頭を撫でてやったが、すぐに、


「おい、何で最初の説明で言わなかった?」


と、撫でていた手を止めてそのままヒッキーちゃんの頭を鷲掴みにして聞くと、


「だって、早く体が欲しかったんだもん!」


と言い訳を言いやがる。


俺が、「だもん!じゃない!!」と言って掴む指先に力を込めるとヒッキーちゃんが、


「やめてー、頭部が破壊されてこれ以上のファイトが…マスターの〈シャイニングな指〉が…いや、マスターだから〈ダークネス〉の方かな?」


と、騒いでいる。


ヒッキーちゃんの反応を聞き流しながら「痛ててててっ」と言っているヒッキーちゃんに、俺は頭をムンズと掴んだまま、


「え?石は解ったが、木材とかは取り込んだ場合どうなるの?」


と聞くとヒッキーちゃんは、


「痛てて、

木材は指定した大きさに加工して資材倉庫の隣に出すか、

大きさに満たない木片はウッドチップ状に粉砕されて保管されます。

壁同様にポイントを支払い指定した形に固める事も可能です。」


と言ったヒッキーちゃんの報告を聞いて俺は思わず軽い殺意が指先にこもってしまった。


「おい、滅茶苦茶有能な機能じゃないか!!

壁生成機能だけじゃない…木材に至っては3Dプリンター並みの性能じゃないか!!

流石にポイントがかかりそうだから家全部のパーツをプリントアウトはしないけど、複雑な形でも作り出せるのならばボートや馬車の客室だって作れるよ!!」


と、意外な性能に驚きつつも俺は説明を怠った事に怒りながらヒッキーちゃんの頭皮をキリキリと掴んでいると、


「だって、まだ交換しないと思って…

早く体を手に入れてマスターとイチャイチャしながらスイーツをモグモグしたかったから!って痛い、痛い!!」


と更に言い訳していたヒッキーちゃんだが、すぐに、


「許してマスター、

これ以上は、私…壊れちゃう…

マスターのが、深く…奥まで来ちゃうから!!」


と、ナニやらいやらしく聞こえるフレーズで謝ったので、


「変な言い回しするな!俺の指が頭皮の奥深くまでだろ?!」


と言いながらも2~3回グワングワンと頭を掴みながら揺すり、仕方ないから許してやったのだがヒッキーちゃんは、


「いった~~い、以後気を付けまぁ~す。」


と頭を擦りながらも、奴はそのまま再びおやつタイムに入った。


『案外タフだな…頭皮もメンタルも…』


と感心しながらも俺はモニターをイチロー達が木を切り開いたエリアに切り替えて、まだ生えている木を一本指定してみると、以前は回収する事が無理だったが今回はモニターに映る木は生えたままで根っこごとヒュンと消えて資材倉庫に回収された。


モニターの端には、〈木材〉〈水〉〈土〉〈枯れ葉〉に分類された事が示されている。


えっ、脱水されたのならばすぐに木材として使えるのか?と思いながら、次は幅30センチ、厚さ1センチ、長さ2メートルの板材を指定してからモニターに映る木を回収して裏庭にモニターを切り替えると保管倉庫の横に指定した大きさの板材が積まれていた。


「凄いじゃないか!!」


と思わず声を出す俺にヒッキーちゃんがテケテケと駆け寄り、


「凄いでしょマスター!

葉っぱを乾燥させた物は穴を掘って土と交互にミルフィーユにしてからソイルワームを数匹入れれば、来年には畑の土に変わるよ。」


と教えてくれた。


「腐葉土か!」と納得した俺は思わずナイスな提案をしてくれたヒッキーちゃんを『イイコ、イイコ』してあげた。


これで木材も自給自足できるし、鉄鉱石でなく〈鉄〉として資材倉庫に入っている。


鉄の素材はこの状態で使えるのか後でガルさんに見てもらおう。


それに葉っぱは北エリアの森にプール程の穴を掘って放り込めば魚の養殖にも使えるソイルワームの繁殖場と腐葉土作成が同時に行える。


ナッツと相談して場所を決めよう。


しかし腐葉土だけならば森の土の表層部分のみを俺を座標に敷地内回収すれば集められるのかも!?

栄養たっぷりの土を一緒に耕したら荒れ地でもすぐに畑に出来るぞ!!

新たに石壁で囲うエリアも決めて…これは大仕事だな!

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