第43話 ヒッキーちゃんの願い
「マスター、朝ですよぉ!」
と、ヒッキーちゃんに起こされた俺なのだが辺りはまだ薄暗いのだ。
確かに朝にマスタールームの設定を色々変更するとは言ったけど…確かに朝だよ…けど、これは…いくらなんでも早すぎる…
『どれだけ楽しみにしていたんだよ…』
と、変なタイミングで起こされた事に心の中で文句をたれながらも俺は、
「仕方ない…」
と呟いてマスタールームへと意識を飛ばした。
まぁ、端から見たらただの二度寝なのだろうが…
そして、マスタールームではウキウキのヒッキーちゃん声が
「体。あ、それっ!カ・ラ・ダ!!」
と、元気一杯にこだましている。
『楽しみなのは解るけど…』
と、俺は少し呆れながら、
「はいはい、落ち着いて…まずは、レベルアップの報告からヨロシク。」
と、ヒッキーちゃんにお願いすると彼女は少し早口気味に、
「マスターは現在23レベルです。
やりましたね。
レベルアップ分の400ポイントに、
20レベル到達の2000ポイント、
そして既に所持していた366ポイントと合わせて2766ヒッキーポイントになりました。
はい、設定を!!」
と言って俺を急かす。
「いや、詳細は?」
と、あまりにも適当な説明に詳細を希望する俺に、
「もう、仕方ないですねぇ…」
と、渋々ヒッキーちゃんは今回解放された機能の説明をしてくれた。
解放された新機能の1つ目は〈壁生成〉100ポイント~と、次は〈資材用倉庫〉1500ポイントである。
壁生成は敷地内の指定した位置に壁を生成する機能で、素材は現地にある素材と資材用倉庫をリンクする事により幅や長さ、それに高さも自由自在だが規模に応じて使用ポイントが変動するらしいのだ。
しかし、壁に使う材料をゼロから生成することは不可能なので、作りたい壁に必要な量の素材を集める必要がある。
資材用倉庫は見た目は鉄製のコンテナだが仕分け機能付きの大型の倉庫であり、注意が必要なのは収納した物は強制的に仕分けされるので、例えば間違ってクワなどの農具等を収納すると鉄と木材に別れてしまうみたいだ。
その報告を聞いて、
『…いや、養殖場のエリアの石垣を作る前にこの機能が欲しかった…』
と、俺は少しガッカリしてしまった。
そして、新たな機能…というか新たな兵器というべきか〈迎撃用バリスタ 〉500ポイントと、〈バリスタの矢 30本〉300ポイントの侵入撃退用の設備が交換可能になったらしい。
『侵入者をこれで串刺しに…って、これもヘルタイガーの時に欲しかったよ…』
と益々自分のスキルのワンテンポ遅い各種機能の解放に落ち込む俺だった。
それから、〈上級ガーディアンゴーレム〉1000ポイントで、これはレベル40ほどの性能のガーディアンゴーレムを一体作り出すとのこと…
上級ガーディアンゴーレムは他のガーディアンゴーレムと意思疎通する機能があり、声を出さずに指揮が可能…って、
『声も出せるの?』
と疑問に思いながらもイチロー達の抜けた穴を…というか本当ならなイチロー達を復活させたいが…
『ありがとうな…皆…』
今は亡きゴーレム達に心の中で礼を述べる俺だった。
そして最後に、マスタールーム(完全版) 10ポイントであるが、
『バーチャル空間のバージョンアップなのにポイント取られるんだ…
10ポイントぐらいオマケして取得させてくれたら早朝起こされずに済んだのに…』
と、気の利かない己のスキルにウンザリしている自分がいた。
ちなみに機能としてはマスタールームの模様替え機能と、イメージした物を俺の魔力を使いマスタールームに具現化する機能の2つであり、これらを使う事によりヒッキーちゃんをマスタールーム内で具現化する事が可能…って、俺のイメージ世界だけの機能だろ…使う意味有るのか?…
などと思っていたあの頃の自分をぶん殴ってやりたい…
何故なら、必要なポイントも少ないしからと先ずはマスタールーム完全版を交換してお望み通りヒッキーちゃんを具現化したのだがヒッキーちゃんは俺に飛び付いて来て、
「あぁ、マスターの感触…マスターの匂い!そしてマスターの…」
と気色の悪い儀式をはじめて、ひとしきり俺を堪能した後に、
「マスター!ショートケーキを出して下さい。」
と、おねだりしてきたのだった。
俺は、先ほどやったヒッキーちゃんの具現化の要領でショートケーキをイメージしてモニターテーブルにポンと具現化してみると、ヒッキーちゃんはフォークなど使わずに透明のビニールを剥がしてガブリと噛りつき、
「ふぉー!うま、うまっ!」
と、お行儀など知らない野生動物の様に貪っている…のだが、
『そんなに旨いのか?』
と思いつつ、『どれ、俺も…』と、ショートケーキを具現化して頬張ってみると…
「本当にショートケーキだ!!」
と、あまりの感動に涙を浮かべながら、気がつけば俺もペロリと食べてしまっていた。
しかし、云ってもイメージ空間…腹は膨れない…しかし、むしろ膨れないからいくらでも食べられる!!
ヒッキーちゃんは今まで我慢した分を取り戻すかのように、
「あれも、食べたい!」
「これも、食べたい!」
と、次々におねだりし、俺も「了解」と調子に乗り具現化して一緒に楽しんでいた。
そして、
「マスター、着替えの服にベッドも欲しい!」
とのヒッキーちゃんのおねだりに、家具や寝具に今までヒッキーちゃんが着た事のある衣装を具現化して、マスタールームの一角にヒッキーちゃんルームを作ってあげた。
ついでに暇潰しにテレビも具現化したが、動かない…
『あっ、コンセントか!』
とコンセントをマスタールームの壁に作って繋げると、テレビは動くけど映らない…
『そもそも電波が来てないのか…失敗した…』
と悔やんだが、仕方ないから懐かしのレトロゲームも具現化してテレビに接続した。
バッチリ記憶があるゲームは、靴以外で亀やキノコを触ると死ぬ頃の豆腐メンタルの髭面の配管工が活躍するゲームだ。
後々、手袋越しに甲羅に隠れた亀ならば触れる様に成長したが…これはまだ、ヤバいキノコで気分が大きくなり、ヤバい草で火が吐き出せると錯覚したりしただけの初期のモノだ。
実はやったら駄目と理解しつつも、カセットをフーっとする儀式をして本体に差し込みスイッチを入れると、もう…涙腺崩壊である…
『ありがとう具現化さん…あんたスゲーよ!』
と感動しながら俺は、
「少し遊ぶか!」
と自宅でゲームをする最強セットのポテチと缶コーラを具現化し、再び、
「やっぱスゲーよ!」
と涙をながした所で気を失ったらしい。
数時間後にマスタールームではなくて、自室のベッドで朝にヒッキーちゃんに起こされたままの状態の俺が寝ていた。
投影クリスタルに心配そうなヒッキーちゃんが映り、ナッツまで俺を覗き込んでいるので俺は思わず、
「おはよう」
と言ったらナッツに、
「キース様…昼過ぎですよ。」
と言われた。
「へっ!?」
と驚く俺にヒッキーちゃんが、
「マスターごめんなさい…私がわがままいっぱい言ったから…魔力の使いすぎで倒れたの…」
と、申し訳無さそうに説明してくれた。
魔力切れになると気を失うのか…気を付けよう…と思うが同時に俺は、
「マスタールームのヒッキーちゃんは大丈夫だった?…消えたりしてない?」
と不安になり聞くと、
「嬉しい!マスターが一番に私の心配を…大丈夫ですよ。
マスターが具現化した物は食べられたり完全に壊れない限りマスタールームに留まりますので、私も…あれ?でもマスターに(いやらしい意味で)食べられたら、どうなるか解らないので今から試してみませんか?…勿論、変な意味ですよ。』
と言っていた。
俺もナッツも苦笑いだがヒッキーちゃんが楽しそうだから、今回はあえて放置しておく事にした。
流石にマスタールームで色々食べたが現実では昨夜の夜は勿論、今朝も…なんなら昼飯も食べそびれた俺の腹の虫が大合唱しているので、
「なんか食べ物ある?」
とナッツに聞きながら居間に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます