第36話 家族会議と具体案
ジョルジュ様達が帰った翌日、サイラスの町でお代官様が俺達の所に向かったとの噂が流れたのか鍛冶屋のニルさんや行商人のミックさんが朝から様子を見に来てくれた。
母屋で二人にお茶を出しながら簡単な昨日の説明をして、
「ここを開拓します」
と報告をした。
そしてニルさんには後で作って欲しい物がある事を告げて、ミックさんには板材や柱にする角材等を大量に注文すると、
「マイトさんや商業ギルドの皆さんにも話して開拓に使えそうな情報も集めます。」
と言ってミックさんは足早に町へと帰って行き、ニルさんにはヒッキーちゃんの投影クリスタルで俺の記憶の再生して井戸掘りに使うスイコと呼ばれるモノと、井戸用のパイプと可能で有れば手押しポンプも構造などを説明してから製作をお願いすると、ニルさんは穴が空くほどクリスタルに映し出された映像を見つめながらメモを取り、
「えっ、嘘…イヤだ!…そんな事で井戸が……なんでアレを動かすと水がでちゃうの?」
と、近所のおばちゃんみたいなセリフを言っている。
ちなみにだがヒッキーちゃんにお着替え機能 (無料) が解放され、毎日の様に衣裳が変わる彼女だが、セーラー服で無くなった途端にナッツ君の好きなモノセンサーから外れたらしい…
ナッツ君は楽しくコスプレしているヒッキーちゃんを見て、
「前の方が良かった…」
と彼はションボリしている…
俺は昨日、自分にまつわる色々な事実を知り衝撃を受けたが、ある意味ではあるが相棒がセーラー服好きという事実が一番ショッキングで心に深くダメージを与えてきた…
『相棒の性癖なんて知りたくなかったよ…』
などと思って相棒を眺めていると設計図などを書き写し終えたニルさんも、
「道具と人手が足りないから一旦戻るけど…鋼ハサミが狩れる様ならば頼めるかな?」
と言ってサイラスの町へと帰ってしまった。
『さて、何処からどうするかな開拓?…』
と思いながら俺は悩んでいたのだが、
「とりあえず鋼ハサミ探してみる?」
という事で、釣りに出かけたのだ。
言っておくが今回はナッツと釣り競争はしない…
それは負けてしまうからではなくて、俺とナッツとヒッキーちゃんの三人で完全分業制で確実にターゲットを倒す為である。
ヒッキーちゃんがソナーやサーチで鋼ハサミを見つけて俺に報告しつつ、俺は声を出さずにナッツに場所を指示して、気配を消して自然と一体化したナッツが獲物を釣り上げてから最後に経験値の為に俺が、「ウララぁぁぁ!」と槍を片手に突っ込む段取りだ。
ヒッキーちゃんから、
『池の底付近に穴を掘って暮らしているみたいですね…
この池に十匹程の反応があります。』
と、俺の頭に直接索敵の結果が届き、
『十匹かぁ…乱獲はダメだな…今回で暫くザリガニ釣りは中止にしよう』
と心に誓いながらナッツに脳内マップを頼りに身振り手振りで指示を出す。
するとポイントに着いたナッツが爆釣し始める…
『いやだから、魚じゃないのよ!』
と、心の中でツッコむ俺だがナッツは、
『どうしましょう?魚ばかりです…フフっ』
と、鋼ハサミが釣れない悩みと魚が爆釣な喜びとでなんとも微妙な顔でこちらを見ている…
『こっち見んな、釣りに集中しろ!』
と思いながらも俺がキリッとした顔で相棒を見つめ返すと、ナッツも『ヤバい!集中だ!!』と思ったのかキリリッっとした顔になり竿を構える。
すると、あれだけ釣れていた魚の反応がピタリと止み、『あれ?』っと思った次の瞬間…ナッツの竿がしなる。
するとナッツは、
「来ました鋼ハサミです!!」
と、獲物の手ごたえから確信し気配を消さなくて良いと悟った様に大声で報告が入った。
俺は槍を握りしめてナッツのもとに走り出す。
数分に及ぶ熱いファイトの末に地上へと召喚されたメタリックなザリガニは怒り狂って、
『やってやんぞ!』
とばかりにハサミを振り上げて威嚇している。
しかし、もう三度目…あの頃よりレベルの上がっている俺は釣り上げたナッツに怒りの矛先が向かっている隙をついて槍先をヤツの頭と胴体の隙間から頭の方へと突き刺して、
「チェストォォォォォ!」
と気合いを入れて片手を支点にグルングルンと脳ミソをシェイクしてやる。
俺が刺し込んだ槍がゼンマイのみたいに何度かグルグルすると鋼ハサミもゼンマイ式のオモチャの様に軽い痙攣をおこしながらカクカクと動きまわり急にゼンマイが切れたかの様に静かになった。
すると、
「パンパカパーン!マスターのレベルが1上がりました。」
と、池のほとりにある投影クリスタルからヒッキーちゃんが報告してくれたのだが、彼女はなぜかチアリーダー衣裳でクリスタルの上に映し出されていた。
『気付かなかったけど、応援…してくれていたのかな?』
と思いながら獲物に視線を戻すと、ザリガニを手に入れたのにナッツの元気がない…俺は、心配になり、
「どうしたの?」
と、聞くと、ナッツは、
「こんなに釣って…保管倉庫が有るので腐らせる事は有りませんが、中の池で飼えばこの数倍の魚が手に入ったかと思えば、焦らずに何匹か自宅の池に運べば良かった…と、思っておりました。」
と残念そうにしていたので俺は、
「だったらこの池の側に池を掘って、釣った魚を品種毎に集めて卵を生ませたら良いんじゃない?」
とナッツに提案した。
提案を聞いた相棒は『パァ』っとお花が咲いたような笑顔になり、
「キース様、最高ですね」
と元気になってくれ、投影クリスタルから、
「何なら沢山増やして加工して出荷しましょう」
と、ヒッキーちゃんもアイデアを出してくれた。
そして、自宅に帰り居間での話し合いの結果、第一次開拓計画は北の山に向かう森を切り出し木材にする事と、南の草原エリアに牧場を作りミルクと卵を生産する事に、東の水辺エリア向かう平地を石垣で囲い養殖場と何軒かの住居を作ってみる事にした。
まぁ、新たな住居を東側のエリアにしたのは、こちらならば水路が引きやすく井戸も簡単に掘れそうだからと判断したためである。
そして、最後にメイドゴーレムちゃんやガーディアンゴーレム君達の増強計画など熱いお茶を飲みながらの緩い会議が終了し、夕方にナッツと交代で風呂に入りながら、
「移住者が家族で入れるサイズの風呂にするか?…」
との追加案も出してその日は終了した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます