第35話 如何なさいます?
結局、今回の話し合いで決まったのは未開発地域のこの場所を自由に開発して良いとのお墨付きを頂いた。
しかしジョルジュ様からは、
「北の地にて隣国との戦争が激化している…孤児や難民が増えつつあるので少しでも開発を進めて食糧の生産や行き場の無い者の居場所を作ってほしい。」
と、頼まれた。
勿論、特区みたいな扱いで税金は免除だが辺境伯領で行われている各種助成金的な物も対象外である。
要するに新たな開拓村の様な扱いで数年様子を見て村として機能して居れば辺境伯領に正式に参加となるが、その時に開拓した土地や商っている店は登録料や代金を払わなくても切り開いた個人のモノになる条件をここにも適応する事になったのだ。
なので木を切り倒し石垣で囲いまくれば大地主にもなれるらしい。
とりあえず農場を作りイルサックさんから頼まれている稼ぎ手を失った冒険者家族や冒険者の孤児達を悪いヤツに食い物にされたり悪い道に落ちる前に来てもらい家賃ゼロでのんびりと暮らせる迄には開拓したい。
俺達はクレアママさんに、
「引っ越してもいい家族さんを探して下さい。」
とお願いしているとジョルジュ様が、
「可能な限り力を貸すから、困った事があればマイトやイルサックに言えば私に迄報告が来るから、
今回の様なオーク討伐などは兵士や騎士団を出したり冒険者を雇うから無茶しないでくれよ。」
と言い残し全員を引き連れてサイラスへと帰って行った。
そして、いつものメンバーだけになった自宅で俺はボーッと考えていた。
とりあえずここを開拓をする事と人が増える事は決定した様だが…
それよりも、父上の真意を知って驚いている方が大きい…
「父上は俺を守る為に…あのような決断を…」
と呟くとナッツが、
「私がいつもの様に言ってたでしょ。
お屋敷にもキース様を心配する人間が私以外にも居ますよ…とね…」
と言って暖かいお茶を出してくれた。
あと会議の最中にヒッキーちゃんが衣裳が変わって町娘風の和服姿になっていた。
たぶんお代官様が来たから用意したのだろうが…俺以外解らない為に滑り散らかしていた。
その後にしれっとヒッキーちゃんのクリスタルに映る姿がクレアママさんのギルドの制服風に着替えたのはあえて触れないでおいてあげたのだが…
何か言って欲しそうだったので、俺が、
「ヒッキーちゃん、その方が似合うね。」
とだけ告げると、
「マスターがレベルアップしたので、アバターの着替え機能が解放しましたので使ってみましたけど、お代官様にはもうひとつでしたね、テヘヘ」
と照れているヒッキーちゃんだが、俺はナッツの入れてくれたお茶をすすりながら、
「そもそもお代官様が、あ~れぇ~するという知識がこちらの皆さんには無いよ…」
と言うとヒッキーちゃんは、
「あっ、!しまった!!」
と、やっと理解したようだった。
そんな、やり取りも少し上の空で俺は、
『なんで、軟禁されたんだ?』
とか、
『そこまで徹底して突き放さなければ納得しない人物がお屋敷にいたとすれば…』
とグルグルと色々な事を考えていると、ナッツが、
「第2夫人とその派閥です」
とだけ言った。
「えっ、声に出てた?」
と、驚く俺にナッツは、
「何年一緒に居ると思ってるんですか…
どうせご自分が軟禁生活をする原因を考えておられたのでしょ?
私は七歳の時にキース様の護衛兼、使用人になりましたがキース様が五歳になる前に何度か毒殺未遂がありメイドを捕らえた事が有ったそうですが、捕らえたメイドはその夜には変死するという事があり、子爵様は身内に既に敵の手の者が溢れている事を悟られた様です。
それから私の一族に依頼して色々調べたのですが、色々な事が第2夫人やその取り巻きにたどり着いても決定的な証拠が無く、しかも最終的には私の一族のライバルである一族を使い色々と嗅ぎ回る私の父を消して一族全員を奴隷にするという……」
と言った所でナッツは言葉を詰まらせた。
そうか、子爵の地位がある父上でも手が出せないヤツが第2夫人のバックにいたんだろうな…
力か、財力か、はたまた知恵か…
そこまでして欲しいかね…子爵の地位が…
それか父上が個人的に恨まれてたのか?…などと、考えているとナッツは、
「キース様…如何なさります?」
と、聞いてくる。
たぶん、俺の人生を滅茶苦茶にした第2夫人達を「如何なさるか?」を聞いて居るのだろうが…
正直、「どうもしない。」のが答えだ。
俺はナッツに、
「俺は、前世で決めたんだ…
人を恨んだり呪ったりするのにも限られた俺の魂の力を使う。
そんなしょうもない事に魂の力を使うぐらいなら俺は身近にいる好きな人達を励ましたり祝う事に魂の力を使うとね…
父上も兄上も…もしかして、母上もかも知れないが、何かしら害をなされ命を落としていたとしても、仇討ちや第2夫人の派閥を追い落とすなんて事よりも、薄情と云われようとも誰かの幸せの為に必死になる方を選ぶよ。
そんな奴らは子爵に固執して頑張ってしがみついて居れば良い…とね…
ただ、それでも満足出来なくてちょっかいを出してきたら…どうしてくれよう?…」
と、遠い目をして話すとヒッキーちゃんも、
「マスターが良いならそれが正解ですね。
もしも、子爵の位を取り戻すとしても私は全力でサポートしますが、もう子爵なんてケチな物は欲しい人にあげて、ここを幸せな場所にしてマスターは優しい王さまにでもなれば丁度釣り合いがとれますわ」
と言ってくれた。
よし、困った人は皆まとめて面倒が見れる場所を目指すぞ!!
と決める俺だった。
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