第24話 春の訪れ
季節は巡り春…
年末から約3ヶ月引きこもり続けながら俺は風呂の改修と家の修繕に明け暮れた。
おかげで母屋は全室使える様になり、湯船にしたタライを耐水石粘土で覆う事でなんとか風呂も楽しめる様になったのだが、完成した風呂場には屋根も壁も無い井戸の側なので、冬場は天気の良い昼にしか寒くてなかなか入れなかった為に、結局は残念な結果となっている為に、
『やはり小屋つきの追い焚きの出来る風呂が欲しい』
という結論に至った。
そして狩りの方は正直なところ敷地内に設定した森にはほとんど魔物も来なくなり、数日に一度程度のペースで冬眠しない跳ね鹿が獲れるかどうかぐらいであり、肉も足りている事から狩りもお休みぎみにり相棒のナッツはもっぱらバーンなどの生き物の世話をしてくれていた。
ビックリしたのが、先日自宅の池でマッスルトラウトが産卵をしたことだ。
ナッツは悩みに悩んだ末に庭の池の噴水ナマズと、マッスルトラウトを再び外の池にリリースして、現在は卵を自宅の池で孵化させようとしている。
まぁ、そんな事もありナッツは生き物係として活動中だ。
あと、我が家の生き物と言えば、あの日以来見ていないギロちんだが…
秋頃は俺の感知に引っかかり赤い点がマップに表示される時もあったが、今はソナーでも使わないと生存確認すら出来ない状態である。
ついでにソナー機能でないと確認出来ないもう一匹の住人であるスライム君はこの寒さにも負けずに浄化槽の清掃作業を頑張ってくれている様子であった。
そんな家族枠のギロちんのおかげもあり1日の滞在ヒッキーポイントが5ポイントと家族の追加ポイントが3も入るので8ポイント…
『スライム君は…今も登録はしていないのが少し心苦しいのだが…』
と、そんな感じで80日間も引きこもったので、640ポイントが加算され以前の残り25ポイントと合わせて665ヒッキーポイントを所持している。
今回は獲物が減った狩り場の追加分として範囲拡大200ポイントで自宅の範囲を広げたいのだが、また家族会議を開いてどこ方面に広げるかを決めるとして、まずはそろそろ行商人のミックさんがナッツの注文していた果樹園用の苗を持って来てくれると思うので、自宅の畑周辺の準備を整えて農業を開始する事にする。
ミックさんの到来後に、今現在家庭用保管倉庫に入っている鋼ハサミを冒険者ギルドに持ち込んで現金を手に入れ鍛冶道具の購入も予定している。
なぜならヒッキーちゃんが色々と俺の前世と今世の知識からインゴットの作り方等を調べてくれたので鉱石を集めてインゴットにしてみてサイラスへ売りに行ったり、可能であれば折角ある鍛冶設備なので鍛冶もしてみたいのだ。
『ガルの親父さんの工房で手ほどきを受けるかニルさんでも家庭教師に貸してくれないかな?』
と考えている。
でもその前に秋に斬り倒した木が敷地内回収で石垣の片隅に積み上げて乾燥してあり、良い具合に乾燥して薪にも建材にも出来そうな感じだから先に風呂小屋を建てるついでに鍛治屋を住める様に改造するか?
などと会議の春が近づくにつれて我が家の議題が増えていく…
そして相棒とヒッキーちゃんと俺で行われた会議の結果、範囲拡大は北方面の山と西方面の森に集中する事に決定した。
西の森の奥へと狩り場の拡大し、北の森とその奥の鉱物資源が取れる岩場まで自宅の敷地にすれば、これまでより強い魔物の熊や狼の討伐が出来る可能性や、鉱石を回収出来る可能性が有るからだ。
正直、東に敷地を伸ばしても釣りの時に滞在ポイントのカウントが止まらないぐらいだ…しかし俺は、
「ソナーを使えば魚の居場所が解るようになるよ。」
と言ったのだが、ナッツは勿論のことヒッキーちゃんにも、
「そんな事しなくても釣れるから勿体ない。」
と言われてしまった…
『俺の爆釣計画が…』
と少し残念に思うが、俺も確かに無駄使いに思えて我慢する事にした。
そして、南の草原エリアへの範囲拡大も、
「サーチと敷地内回収とで薬草を集めたい放題だよ。」
と俺が言うとナッツが、
「キース様の敷地内回収では薬草の根っこごと回収してしまいます。
私がサクッと集めますので、」
と、却下された結果だ。
新たに西の森の奧へと向かい1ヘクタールと北の森1ヘクタールとその奥の岩場の山1ヘクタールを敷地として指定し、残りのヒッキーポイントでカメラ機能も2台増設した。
それからお風呂であるが、ヒッキーちゃんのアイデアで、
『ガルの親父さんの工房でパイプだけ作ってもらい、あとは自分達で耐水石粘土を使い風呂をつくれば、何かの部品ぐらいにしか思われないし注文数も一個だけなら別にあやしまれないのでは?』
との意見から次回サイラスの町に行った時に循環パイプを注文する事にした。
そして家族会議から数日…風が温かくなったある日、玄関の監視カメラがミックさんの来訪を告げた。
ミックさんは果物の苗木を十本と、新鮮な葉物野菜や日用雑貨を荷馬車に積んで、手際よく宅配と移動販売業務用をこなして、また月に一度の来訪を俺達と約束して帰って行った。
調味料や石鹸などのストックが回復して助かったな…と喜ぶ俺だったが、ナッツはそんな事など気にせずにルンルンで苗木を果樹園スペースに植えている。
そして、ナッツは小型ガーディアンゴーレム達に、
「皆、葉っぱを食べる虫魔物は見つけ次第に(石つぶて)で打ち落としてください!
その時、木を傷めない様にだけ注意してくださいね。」
と、指示を出している。
そう、小型ガーディアンゴーレム君達は手頃な小石をウニでいう口の辺りから取り込み、頭のてっぺんからニュッと出せる主砲から圧縮空気の力で撃ち出せるのだ。
なので彼らが果樹園の防衛任務と自宅の監視巡回を担当してくれているので、最近では自宅の害虫はめっきり見なくなった…まぁ、寒かったのも有るけどね。
翌日は畑をナッツと二人で耕して、じゃがいもを主体に購入してあった種などを植えてみた。
ようやく農業をはじめられたな…あとは、冬眠明けの獲物を何匹か狩ってからサイラスの町に売りに行こう…クレアママさん、元気にしてるかな?
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