第19話 閃くアイデアと明るい未来
夕方までサイラスの町で買い物をしてニルさんの鍛冶屋で有り物の安い槍を予備も合わせて二本を購入して、ついでにとある事を閃いて大きな釜を購入した。
ニルさんの親父さんのガルさんには、
「錬金術師でも目指すのか? 」
と言われたが俺は、
「獲物の保存の仕込みに使いたくて…」
などと適当に濁しておいた。
実はニルさんに自宅の鍛冶釜戸のメンテナンス方法を槍の購入ついでに聞きながら、
『山から鉱石を拾ってきてインゴットに出来ないかな?』
と思っていたのだが、〈耐火石粘土〉という耐火セメントみたいな火に強い建材がこの世界にもあり、それは魔道具も扱う錬金ギルドで購入出来るらしいのだ。
だからそれで耐火性の高い石やレンガを組み上げていけば釜戸が出来上がり、ひび割れなどもその耐火石粘土という商品を水で柔らかくして塗って乾かせば固まると教えて貰ったのでそれを聞いた俺は、
『その素材を買えば簡易の風呂が出来るかも!』
と、閃いてしまったのである。
しかし、俺の知る前世の知識で無双した物語の登場人物は金や名声と引き換えに大概厄介事に巻き込まれている…
俺は人生をエンジョイしたいだけでジャブジャブ儲けたい訳でもないし、ここで下手にガルの親父さんの工房に自然循環式の風呂の釜戸の製作を依頼してゴタゴタしたくない…
なので俺が出来る範囲で頑張って風呂を自分達で作り、自宅だけで楽しむ事にしたのだ。
しかし、いずれば自分で鍛冶仕事の真似事をしてUの字のパイプが出来たら良いのだが、今は無理なので湧き水の所に大きな桶か樽を置いて隣の釜で湯を沸かして手桶で風呂桶に移すタイプの簡易風呂を作る事に決めて鍛冶屋を出てからまっすぐ錬金ギルドに向かい、最初から決めていた魔石ランプを2つ購入するついでに耐火石粘土という錬金術で作った建材と、〈耐水石粘土〉という、こちらは水漏れなどに強い建材もあり両方少し多めに購入して、
相棒と二人で錬金ギルドのショップを一巡りした後に、あと冬場は寒さなどで町まで来られない事が考えられるので自分達の怪我の対策にライフポーションと風邪などの時の解熱ポーションに、食あたりや何かがあるといけないので解毒ポーションも二本ずつ購入しておくことにしたのだった。
置き薬的な物で念のためだが有ると無いのとでは安心感がかなり違う。
これだけ買ってもまだ小金貨七枚残っている…
やはり、あのザリガニはラッキーだったのかもと思う反面、俺は釣れなかった魚の事を思い出して少しモヤモヤしたまま商業ギルドに寄り、藁の購入の相談をして冬場の馬用の飼料も一緒に追加でに購入して、残ったお金を貯金にまわしてから自宅へと戻る事にした。
今回のザリガニの素材の納入依頼で冒険者ギルドポイントが結構入り、
「春にあと一件~二件ほど仕事をこなせばDランク冒険者へとランクアップ出来そうだよ。」
と、クレアママさんが言ってくれたので春までは追加で購入した木材を使い、のんびり自宅の修繕とお風呂のDIY生活を楽しむ予定だ。
夜の草原の小路をバーンの引く荷馬車は、今日購入したばかりの魔石ランプの明かりを頼りにパカポコと進んで行く…相棒のナッツはご機嫌で、
「キース様、今日の釣果はほぼ全部売ってしまったので明日の朝か夕方にまた釣りに行きたいです。」
と、すっかり釣りにハマった様子である。
しかし、俺は2日連続で滞在ヒッキーポイントを逃す訳にも行かないので、
「明日はナッツだけで釣りに行ってデカいの三匹程度釣ってきてよ。」
と、俺が言うとナッツは、
『あっ、ヤバい!』
みたいな反応をしてから、
「だ、大丈夫ですよ…きっと、キース様も釣れますよ…きっと…」
と、気を遣ってフォローしてくるので俺は少しムキになり、
「違うし、あれは俺の足元に鋼ハサミが居たから怖がって魚が来なかっただけだし!」
と反論したのだが自分でも負け惜しみにしか聞こえない…
『くっそぉ~…』
と思いつつ、春先に家庭用保管倉庫と敷地内回収を手に入れたら次は池のエリアに敷地を伸ばして釣れるまで池のほとりで過ごしても滞在ヒッキーポイントが入る様にしてやる!などと考えながら自宅に戻ると待ってましたかの様に、
『お帰りなさいませ、マスター。
ヒッキーポイントのカウントを開始します。
それと、おめでとうございます。
レベルが3つ上がり、現在レベル9となっております。
やりましたね…追加ポイントが300ヒッキーポイント入ります。』
とヒッキーちゃんが頭に直接お知らせをしてくれた。
『えっ、いきなり3つも?…』
と驚く俺だが、とりあえずバーンを厩舎に戻してから今回購入した藁も厩舎の端に積み上げて、荷馬車も厩舎横の車庫に片付ける。
母屋へ入り暖炉に火を入れて一息いれてから、俺はマスタールームへと意識を飛ばした…
「お待ちしておりましたマスター。」
とヒッキーちゃんの声が部屋に響くが…
『あれ?無感情な機械音声っぽく無い?!』
と気が付いて、
「あれ?ヒッキーちゃん…しゃべり方…」
と、不思議そうに俺が呟くと、
『フフフッ、マスターの記憶をベースに知識を蓄えておりますし、マスターがレベルアップする度にマスターのスキルである私もレベルアップ致します。」
と、彼女は嬉しそうに語る。
『確かに感情豊かな声になっているが…』
と思いながらも俺は聞きたい事が沢山有り、まずは、
「なんで、3つもレベルアップしたの?」
と、ヒッキーちゃんに質問すると、
「う~ん、なんでかな?…
でも、マスターの知識を検索しましたけど、メタル系の魔物は経験値が多いのが普通では??」
と、テキトーな事を言ってくる…
「確かにあのザリガニはメタリックな色合いだったけど…」
と、かなり疑いながら俺が返すと、
「もう、冗談ですよ。
単純に、鋼ハサミのレベルが高かったんじゃ無いですか…知らんけど。」
と、彼女は感情豊かになり、そしていい加減な雰囲気になってしまったと少し残念な気分になる俺は続けて、
「で、今ヒッキーポイントが600以上有るよね…どうしよう、交換しようかな?」
と、ヒッキーちゃんに聞いてみると、
「マスター、少し待つ事をオススメいたします。」
とヒッキーちゃんは答えた。
「えっ、なんで?」
と聞く俺にヒッキーちゃんは、
「マスターは、あと少しでレベル10になります。
レベルの10の位が変わる節目には、特別にヒッキーポイントが付与されます。
レベル×100ポイントなので通常のレベルアップ時の追加100ポイントと、特別なお祝いポイントで合わせて1100ポイントが付与されて、
合計で1700ポイント以上保有する事になり、さらにスキルのレベルも上がり幾つかの機能の交換が解放される予定になりますので解放後に交換した方がお得です。」
と、教えてくれた。
えっ、なにそれ?!楽しみしか無いんですけど!!それならば予定変更だ…
明日は朝は狩りで経験値を稼ぎ、昼からは『ザリガニが釣れたら良いなぁ…』ぐらいの感じで池へと釣りのリベンジに向かい経験値を稼ぐぞ!!
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