第10話 片付け作業と新たな仲間?


あぁ、疲れた…特に精神的に…

現在俺はグッタリしながらも自宅の除草作業をナッツと二人で行っている。


相棒にだけ働かせておいて、いつまでもお昼寝している訳にもいかないので、一通りの説明を受けた俺は相棒と汗を流しているのだ。


決して考えるのを一旦放棄した訳ではなく、おおまかな説明をヒッキーちゃん(仮)に伺った結果をまとめると、俺のスキルは自分が所有する自宅と認識した場所に対して発動するスキルらしく、今まで発動しなかったのは所有する物件が無かった為だ。


そして、基本的には自宅にいる時にのみ使用可能…というか、自宅に設定した場所にしか作用しないという何とも限定的なスキルである。


操作も自宅に居る時にだけ、脳内やマスタールームという仮想空間?…でのみ可能で、現在出来る事は、〈感知〉と〈監視〉と〈警報〉の3つである。


感知とは石垣の中にいる者を感知して、俺の脳内マップやマスタールームで赤い点として確認でき、監視はマスタールームのモニターで配置したカメラ機能で指定の場所の映像を確認出来る。


ちなみにこの監視カメラ的な機能はマップ内の指定した位置に配置出来るが、何故か移動に時間がかかる為に、何ヵ所か視点を素早く切り替えたい場合はヒッキーポイントとやらを使いカメラ機能の増設が必要なのだそうだ。


そして最後の警報だが、感知システムや観察システムが何かに反応した場合、俺にお知らせが来る機能であり、そして有難い事に住人としてマスタールームなどで設定した者は対象から外せるので、ナッツが敷地をウロウロしてもお知らせは来ない。


しかし、ナッツが外から帰って来た時にはご丁寧に、


『ナッツさんが帰宅しました。』


と、ナビゲーター音声のヒッキーちゃんが知らせてくれる親切設定である。


そして、この警報はその名前の通り警報音も敷地内に流せるらしい…まぁ、いつ使うのかは解らないが…

それから肝心なヒッキーポイントなのだが、これは24時間毎に付与される。


つまり、1日に3ポイント貰え、なんと付与の瞬間にナッツが自宅に居ればオマケで1ポイント追加で貰えるらしい。


ついでに、そんなヒッキーポイントなのだが、現在、初回サービスの300ポイントを所持しており、このヒッキーポイントは様々な機能と交換出来るのだ。


例えば、〈範囲拡大〉という項目が、200ポイントで交換出来て、これは他人が個人的に所有していない場所で自宅に隣接した範囲ならば追加でスキルの範囲に出来るらしく、マスタールームなどを使いマップにて面積単位で範囲を拡大するので町で使えば自宅周辺の道などに沿って範囲を広げて、監視等をする事が出来るみたいだ。


これは、まさに監視カメラで来客や犯人の逃走経路を特定出来るらしく、使い方次第では好きなあの娘のお家も覗きたい放題のストーカーがヨダレの洪水に溺れそうなスキルだが…ここの周辺は森や川の大自然…マイトさんにも、


「森の木も川も自由に使って良いからね。

人もまず来ないから開拓をして土地を広げても良いし水路でも木材でも好きに使ってよ。

ある意味この物件の裏庭みたいなものだからね。

代官のジョルジュ様も好きな様に開拓して立派な村になったら村長に就任したら良いと言っていたよ。」


などと言ってくれていたので俺としては村として大きくする気はないし、好きなあの娘の覗きにも使えないがスキルの範囲を広げれば狩場として獲物の感知ならできそうである。


あとは、〈カメラ機能の増設〉が30ポイントや、〈侵入者撃退用の罠各種〉30ポイント~100ポイント程度などをはじめ、よく分からない〈敷地内回収〉とやらが300ポイントとか、〈家庭用保管倉庫〉という施設らしい物が500ポイント…

それに、物騒なところでは、〈低級ガーディアンゴーレム〉500ポイントなどというモノまでポイントで交換できるらしいのである。


しかし今は草刈りをして寝泊まり出来る様にする事が先なので、晩御飯の時にでもナッツと相談しながらポイントの使い方を決めようと考えて二時間かけて畑の草刈りを二人で終わらせた。


草刈りでヘトヘトになったその後に、ナッツはそのまま農具を担いで畑を耕しはじめる。


『ウチの相棒はタフだな…』


と、感心しながら俺はマイトさんの生家を手直しして母屋にする予定で準備をはじめた。


鍛冶屋だった建物は作業場兼、倉庫プラス俺達の当面の寝床として活用する予定だが壊れていない立派な鍛治釜戸を掃除しながら、


『本当は俺が鍛冶仕事でも出来たら良いのだけれど…こんな立派な鍛冶釜戸が勿体ないな…』


などと考えていた。


そして、元行商人の方の家には厩舎もあるので後で修繕して、ワザワザ御用聞きに来てくれるサイラスの行商人さんの馬の休憩所と将来俺達が馬を買った時用の厩舎にする予定でいる。


本当は一番にサイラスの町に行く用の馬魔物が欲しかったが所持金の理由から断念したのだ。


自宅周辺で手に入る買い取りしてくれる物は行商人の方に買い取って貰って現金収入としても良いのだが、クレアママさんに俺達の顔を時々は見せたいので頑張って採集や狩りをして、クレアママ直筆の保存方法に従い売れるモノを蓄えて、行商人さんが来た時にサイラスまで俺達ごと運んでもらい帰りは最悪でも馬を一頭…可能ならば中古の荷馬車を購入したい。


などと考えながらも、俺は母屋の腐り落ちた床を剥がす作業の準備に移っていた。


目覚めた俺のスキルの感知機能のおかげで母屋を住み処にしていた魔物達…デカい虫魔物や屋根に潜む爬虫類系の魔物も丸解りだ。


「案外便利だな…」


と呟きながら朽ちた床を剥がしていく、不意を突かれなければ虫魔物など怖くないし居るのが解れば対処も出来る。


俺は剥がした床下や家の中でサイラスの町で購入した〈魔物避けの香〉をモクモクと焚いて家を丸ごと燻煙で満たしてやった。


このまま明日まで燻していれば皆さん退去してくれるだろう…

正直、この世界の虫達はもれなく小型魔物で小さな魔石も手に入るのだがGやゲジゲジを倒して解体…想像しただけでゾワゾワする。


ヤモリ的な魔物さんは虫の駆除要員で住んでも良さそうだが、そもそも異世界の爬虫類…得体の知れない毒とか有ったら嫌だから皆さんまとめて退去して欲しいものだ…などと願いながら俺は旧商人さんの家も燻煙作業と、感知に反応は無かった鍛冶屋の建物も逃げ出した奴らの溜まり場にならない様に燻しておき効果が出るのを待つことにした。


その間に俺はナッツの手伝いをして畑を耕す事にしたのだが、もう何十年も放置された畑はカッチカチで、草の根っこもビッシリしていて耕すというより表面の地層を剥がす様な作業である。


オランの木の他にも何かしらの木が植えて有ったのか倒れて朽ちかけた木もある…


「あれも退かせるのかな?」


と言った俺にナッツは、


「果樹園エリアは私のオランの木が有りますので、邪魔な倒木は退かして新たにマイトさんオススメの苗木が春には届きますからね。」


と、答えている。


そんなに好きなんだね…オランの実…「私の」って言っちゃってるよ…もう、ナッツに果樹園エリアはあけわたそうと決めて二人で倒木を移動させようとするのだが1つ気になる点がある。


それは脳内マップの倒木辺りに赤い点が見えるのだ。


俺は、


「ナッツ、気をつけて魔物の反応があるよ。」


というとナッツは、


「キース様のスキルって便利ですね。

帰ってきた人が解るだけじゃ無いんですね。」


と、驚いているのだが、


『確かにナッツに実験を手伝ってもらったのは住人設定機能についてだけど…色々出来るよ…出来る子だよ…多分…』


と、少し凹みながらも俺は、


「何か色々出来るみたいだから今晩相談に乗ってね。」


と言ったのだが、ナッツは、


「了解です。」


と、返事をしながらも話しには興味が無さげに鍬の柄で、コンコン…コンコンと倒木を叩いている。


そして、ポクポクっと音が変わった所を鍬でズボリと叩き割るとその中から牛乳パック程のクリーム色の物体が現れたのだ。


するとナッツはそれをムンズと掴みデロンと引っ張り出して四方八方から確認すると、


「凄い!ギロチンクワガタの幼虫だ!!」


と、喜んでいる。


『食べるの?…なんかグロいよ…』


と不安げに眺めている俺をよそにナッツは嬉しそうにスコップを持って果樹園予定地の端に穴を掘りだした。


「何をしてるの?」


と、思わず俺が聞くとナッツは、


「こいつ、馴れるんですよ。

縄張りに入った鳥魔物や虫魔物を倒してくれるのでオランの木の見張りにします。」


と言って、穴を掘って倒木の柔らかい部分を入れたナッツは、


「早く成虫になれよ、ギロちん。」


と言って幼虫をそっと埋めて残りの倒木を雨避けがわりに乗せていた。


俺は不本意であるがその場に腰を降ろして、家族登録に『ギロちん』を指定を試みると…


「あっ、出来ちゃった…」


と、驚く結果になった。


『まぁ、出来て良かったよ…

ギロちんがモゾモゾする度に感知機能が報告したらタマったものでは無いからね…

マイホームの新たな仲間がウニョウニョの幼虫君とは…先が不安になる…』


と思いながらも俺はそっとギロちんを感知対象から外す設定をする。


しかし、しばらくナッツはオラン中心の生活になりそうだな…

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