第四十三話
ロボットの核を破壊して、ロボットが完全に動かなくなったのを確認し、俺はロボットを椅子にして座り込んだ。ラカンは狼から元の姿に戻り、大の字で倒れている。
『ご苦労じゃのう主人』
「あぁ。夜月がいなかったらマジでヤバかった。本当に助かった」
『ふふふ、礼は不要じゃ。それにしても、あのゴーレムは凄いの。あれ程の硬さで再生能力まで持ち合わせているとは。我の黒炎すら完全に防ぎ、主人の剣を弾くだけの強度を持つ金属など見たことも聞いたこともない。オリハルコンですら溶かすほどの炎なのにのう』
出来ればロボットを持ち帰りたいところだが、流石に大き過ぎたため剥がれた装甲の破片を拾ったり、適当な部品を切り離したりし、マジックバッグで回収した。
「そろそろ奥に移動するぞ」
「え⁉︎こ、この奥に行くの⁉︎だ、大丈夫なの?」
「知らん。行くしかないなら行くだけだ」
ロボットを倒しても奥からのとてつもなく禍々しい気配は消えていなく、前より気配が強くなっている。吐き気がしてくるくらいには悍ましい。
奥に続く扉は当然のように閉まっており、黒葬姫を無理矢理扉の隙間に差し込んでこじ開けた。扉の先は短い通路で、それを進むと制御室になっているのか様々な画面とパネルがある部屋に出た。そして、その中央には黒い全身鎧を身に付けた騎士のような奴が立っている。
「型落ちとは言え、ガーディアン0を倒すとは中々やるではないか。神擬きを従えているだけはある」
「な、ん、だと」
「あ、あ、あ」
ソイツの低い声を聞き姿が視界に入った瞬間、悟った。・・・絶対に勝てない。格、いや次元が違う。夜月と戦った時でさえ頑張れば勝てると思えたが、コイツは無理だ。例えるなら、そこら辺にいるただのアリが太陽に喧嘩売るようなものだ。
とんでもなく禍々しい気配、身体中から魔力や気力が溢れ出て混ざり合っているというのに、不自然なまでに周囲が安定している不気味さ。そして、見ているだけで、体の震えが止まらず油断すれば意識が飛びそうになる程の存在そのものの圧。
ラカンはアイツを見た瞬間に泡吹いて気絶した。ショック死していないだけ根性はある。それにしても、本当に体の震えが止まらない。冷や汗がダラダラ流れて、指一本すら動かせない。それに、龍黒葬が何故か解除された。怖い。動いた瞬間殺され、いや消される。そう確信めいた考えが頭を埋め尽くす。
ここまで明確に恐怖を感じるのはこれで二度目だ。卒倒したラカンが羨ましく感じるくらいにコイツとの対面は絶望的だ。俺が固まっているのを見て、奴は不思議そうに尋ねてくる。
「どうした。私は何もしていないが?それに、何か質問しないのか?人はこういう時は一方的に質問してくるものだが?・・・あぁ、君の所の神はここから追い出しておいた。色々と見られると困るからな。」
「な、に」
龍黒葬が突然解除されたのはコイツの仕業か。俺は震える体をなんとか抑えて、奴に質問した。
「お、まえは、何者、だ」
「私かね。私の名はアビス。我らが主に与えられた名であり、最強の一角を背負う者の名だ。そして、貴様に死を与える者の名でもある」
そう言ってアビスは俺の首目掛けて、腰に携えていた剣を振った。それを辛うじて視認出来た俺はギリギリで躱せたものの、攻撃を躱した後すぐに腹を蹴られて吹き飛ばされた。
何気なく放たれた蹴りの威力はとんでもなく、内臓が一撃で破裂したのか吐血し激痛が身体中に走る。それを堪え、黒炎で破裂した内臓や砕けた骨を治癒する。アビスは吹き飛んだ俺にゆっくりと歩いて近づいてくる。
「な、んだよ、こ、れ。化け、物か」
「ふむ。全力ではないとは言え、殺す気でやったのだが・・・やはりこの肉体は貧弱か。安心しろ。次は確実に殺す」
「ふざ、けるな‼︎‼︎」
俺は勝てないと分かっているも、がむしゃらに剣で斬りつけた。様々な技を絶え間なく、自身でも驚くくらいに隙なく斬りつける。それでも、奴にダメージらしいものは与えられない。
奴は避けるどころか受け流すこともせず、ただ俺の攻撃を鎧で受けた。分かっている。奴は俺に死ぬまでの最後の猶予を与えているんだ。技の反動を黒炎で治しては斬る、治しては斬るをひたすら繰り返した。
「はぁ、もう終わらせよう。これ以上は惨めなだけだ」
「まだ、ガッ⁉︎」
呆れた奴は俺の心臓に剣を突き立てた。その剣速は最初のとは比べ物にならず、予備動作すら見えなかった。直感だが、この怪我は黒炎じゃ治せない。
「ま、だだ」
「いや、終わりだ」
そして勢い良く奴は剣を心臓から抜き、確実に俺を殺そうと俺の脳天目掛けて光速で剣を振るった。
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