第四十一話

 「道がかなり悪いな。本当にここら辺なのか?」

 「間違いないと思うよ。建物を見たっていう冒険者から直接聞いたから」

 「変なとこじゃなきゃ良いんだが」


 俺達は竜車を降りて、足場の悪い山岳を登って目的地に向かっていた。周りには魔物の気配が一切しなく、かなり怪しい。ラカンもそれを分かっているのか表情は険しく、冷や汗が頬を伝っている。


 「あの、ロスト。もしかしなくとも、私達って囲まれてる?」

 「あぁ、結構な数だ。少なくとも十体以上はいるぞ。」


 進んで行くほど何故か霧が現れ、どんどん濃くなっている。それに、霧のせいか周りの気配を探りづらくなっている。そのせいで、囲まれているのに気付くのが遅くなった。


 「コレが全部幽谷の悪魔な訳ないよね?」

 「どうだろな。霧のせいでよく分からん。・・・そろそろ奴らも動きそうだ。警戒しろ」


 警戒しながら進むと、敵の気配が一つ消えた。それにすぐに反応して勘を頼りに剣を振り、魔物を斬った。その魔物は、全身真っ黒の狼だった。


 「え⁉︎・・・あ、ありがとう。でも、コレは・・・」

 「どうかしたか」

 「コレ、間違いない。幽谷の悪魔だ」

 「となると、周りの奴らは全部幽谷の悪魔と考えるべきか」


 仲間がやられた事に気づいたのか、周りの奴らが全員動き出した。俺達の周りをグルグル回り、様子を窺っているのだろう。それなら都合が良い。


 「わざわざ近づいてくれて、ありがとうな‼︎」

 「え?えーー⁉︎」


 俺は黒炎を周囲にばら撒き、奴らを燃やし尽くした。ラカンは突然のことに驚愕のあまり尻もちをつき、周りをガクガクと見回している。ついでに霧も燃やしておいた。


 「一体ならともかく、こんなに?それも跡形もなく」

 「良し。これで邪魔が消えたな。さっさと進むぞ」

 「ま、待って‼︎」


 倒れたラカンを気にせず、俺は目的地に向かった。それをラカンは、慌てて立ち上がり追いかける。その後の道中は、魔物が多少現れる程度で大して苦労せず、進めていた。ラカンが気不味そうにしているがどうでも良い。


 「見えてきたな。アレが例の施設か。案外早く見つかったな。丸一日くらいは覚悟していたんだが」

 「な⁉︎あんなに大きな建物は初めて見た。・・・今までよく見つからなかったね。これだけの大きさならもっと前に見つかってもいいのに」


 施設と思われる建物はかなりの大きさであり、見た目はさながらどこかの研究所といった見た目をしている。作りも近代的というよりも未来的なものだ。


 「一度周りを見て入り口を探すぞ。変に建物に近づいたり、俺から離れたりするなよ」

 「うん」


 施設に近づかずに離れたまま、周りをぐるっと一周して入り口らしい物を見つけた。入り口は閉まっており、遠くから石を投げつけたりし、様子を見て問題ないと判断して施設に近づいた。すると俺達を招くかのように入り口が開いた。


 「俺は中に入りたいが、ラカン、お前はどうする?」

 「い、言い出しっぺは私だし、い、一緒に行くよ」


 ラカンに、要らないだろう確認をして俺達は警戒を強めて施設の中に入る。中は機械のような物が彷徨いており、俺達は入った瞬間戦闘に入っていた。


 「クソが‼︎入って早々閉じ込められるのかよ‼︎ふざけやがって‼︎」

 「い⁉︎硬すぎ‼︎手がメッチャ痛い‼︎」


 機械供は生意気にも機関銃やらミサイルやらの兵器を俺達に放ち、ラカンはそれに果敢に立ち向かうが、装甲が硬く早速役に立たない事が証明された。魔力に対しての耐性も高いのか黒炎で燃やすのも時間がかかる。


 まさか、入ってすぐに入り口が閉まって警報が鳴り響くなんて予想してなかった。用意周到で姑息な罠だクソったれ‼︎


 「ラカン‼︎突っ込むぞ!!」

 「え⁉︎本気⁉︎」

 「それしか方法はねぇー‼︎」

 「う、うわぁぁー‼︎」


 俺が先に、機械供に突っ込みラカンは情けない悲鳴を上げながら俺に続いて突っ込む。俺が機械供を斬って道を開き、通路を抜け一つの小部屋に辿り着いた。そして、急いで近くにあった適当なボタンを押し、部屋の扉が閉まった。


 「ふぅ〜。一応は撒けただろう」

 「ゼェハァ、ゼェハァ。た、助かった?」


 俺は部屋の中で座り込み、ラカンは体力と余裕がないのか肩で息をしている。鍛えているのか疑いたくなるが、今はそれどころではない。


 部屋の中にトラップらしきモノはないがいつ敵が来るかも分からない以上、急いでこの施設を出る必要がある。ここはやばい。俺の勘が何度もやばいと警報を鳴らしている。


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 作者です。突然のSF要素、多分気になる方がいるとは思いますが、今回限りなので気にしなくて構いません。

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