第四十話
後ろを向くと、そこには犬耳のようなモノを頭に生やした女がいた。獣人って奴か。サリバキア王国じゃ見なかったが、テルミア共和国だと統治者が獣人だけあって亜人差別が少なく、他の国よりも亜人の数が多いんだったな。
「なんだよ、犬っころ」
「い、犬じゃありません‼︎私は誇り高き牙狼族です。犬と同じにしないでください‼︎」
「じゃあさっきの話し方は何なんだよ。完全に媚びたような感じだったが?」
「うっ・・・。あ、貴方は強いから良いんです。貴方からはもの凄い死臭を感じましたけど、見た限り悪い人には見えなかったので」
「まるで俺をつけ回していたようなセリフだな」
シア達と別行動した時から何かつけて来ている気はしていたが、コイツだったか。俺の言葉に、図星かかなり狼狽えている。
「え!!え、えっと、それは違くて、た、偶々です。‼︎あ、貴方を見かけてつい追いかけていた訳ではあ、ありません‼︎」
「は、語るに落ちたな。まぁ、座れよ。俺を少し笑わせてくれた礼だ、話くらいは聞いてやる」
「ほ、本当ですか⁉︎ありがとうございます‼︎」
尻から生えた尻尾がブンブン左右に揺れている。相当嬉しかったのか?犬っころはウキウキで俺の隣の席に座った。
「実は、ここから西にある山岳地帯で、幽谷の悪魔が大量発生してるって噂があるんです。あ、幽谷の悪魔っていうのは、闇を纏ったシャドウウルフの特殊個体のことです」
「なんで特殊個体が大量発生してんだよ」
「私がしたい話はそれです。なんでも山岳地帯にいた冒険者が変な建物に出入りしているのを見たって話してるらしくて、ギルドが捜査依頼を出してるんですよ。それも、有益な情報を伝えるだけで金貨一枚。謎を解明したなら金貨五十枚なんですよ」
情報料だけで金貨一枚はかなり高いな。それに、この犬っころは何か訳ありな様子。もう少し話を聞くか。
「ふ〜ん。まさか、話はそれだけじゃないよな」
「もちろん。大きな声で言えないけど、最近闇市でウルフ系の魔物を同じ奴が沢山買ったって話があるんですよ」
「それとお前にどう関係が?」
「私は牙狼族です。牙狼族には旅をして、強いウルフ系の魔物を倒し手懐けるという戦士の試練があるのです。」
要は、一人だと不安だから街で一番強そうだった俺を仲間にして、幽谷の悪魔を手懐けてついでに幽谷の悪魔が発生している原因を知りたいと。得意げに話しているが、俺にメリットが無いんだよな。
「当然、私は戦士の試練を達成したいだけなので、受け取るお金は全て渡しても構いません。どうですか?悪い条件じゃないと思いますけど。」
「そこには朝一番の馬車でどれくらいで着く?」
「えっ⁉︎えっと・・・多分四日かな?で、でも、竜車を使えば半日で着きます。大銀貨三枚もしますけど」
なら良いか。シア達は適当な場所で修練させとけば良いし。俺の勘が何か凄いものがあると囁いてるしな。
「手伝っても良いぞ。ただし、竜車で移動することと期限は長くても三日。これは守ってもらう。俺も少し急ぎの用事があるからな。」
「分かりました‼︎では、明日の朝に集合しましょう。私の名前はラカンです。では」
「おい、何言ってんだ?今から行くんだよ。荷物は持ってるようだし。言ったろ、急ぎの用事があるって。だから、早く終わらせる」
俺は帰ろうとする犬っころ、ラカンの腕を掴みそう言うと、ラカンはキョトンとした。酒の代金を払い、ラカンを連れて早速竜車というモノに乗って山岳地帯に向かった。シアには付けてもらっていた精霊に伝言を頼んだので、言った通りにしてくれるだろう。
「あ、あの。私、今大銀貨三枚なんて払えませんよ」
「ん?あぁ、気にするな。迷惑料だとでも思えば良い」
竜車に乗って移動しているとラカンはおずおずと俺に話しかけた。俺の答えに安堵していて、それを見た俺は一つの疑問が頭に過った。
「なぁ、なんでそんなに幽谷の悪魔を狙ってんだ?わざわざそんなの手懐けなくたって、他にも沢山いるだろ」
「・・・それでは駄目なんです。とびきり凄いのじゃないとアイツを越えれないんです」
ライバルに負けたくないって感じか。闘志を宿した良い目をしている。装備は籠手を付けた格闘家か?他に武器は、ないか。コイツには双剣が合ってると思うんだが、余計なお節介だな。
「そろそろ目的地に着きます。降りる準備をお願いします」
「分かった。準備しろよ」
「は、はい‼︎」
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作者です。ココからかなり重要というか、主人公が無双しない少し成長する話になります。
また、今日から二日投稿をしたいと思います。学業に多少余裕が出来たからです。
それと突然ですが、現在新作小説執筆中です。公開した時はぜひ読んでみてください。ついでに応援もお願いします。
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