第三十九話

 「呪いだと?・・・どういった呪いなんだ?」

 「呪いの内容は詳しく知らないのですが、精霊達が言うには魔物を引き寄せやすくなる呪いのようで、理由は分かりませんが美の女神、ヴルミリア様によるものでした。」


 美の女神からの呪い?シアは外見は綺麗だから嫉妬でかけたのか?そうだったら、本当の意味での美の女神ではないだろうな。


 『そうなのか?昔一度会った事があるが、会った事のない者を呪うような神ではなかったはずしゃが。』

 「はい。母もそう言っていました。私の母は、ヴルミリア様から加護を授かっていましたが、その母でも理由は分からないと言っていました。」


 なんか複雑な事情でもあるのか?自分が加護を授けた相手の子供に、呪いをかけるほどの重大な何かがあったとか?それは本人に会わないと分からんな。


 「まぁ、ゴブリンの巣穴は通って良いだろ。シアと火澄の良い実戦訓練になるし、道中レベル上げもできるしな。」

 「承知しました。」

 「ゴブリン程度、蹴散らしてみせます。」


 そして、俺達は今日中に迷宮都市カルシミアを出る準備をし、翌日、シアの精霊魔法でテルミア共和国の交易都市エラルカに向かった。


 前も思ったが、精霊魔法はメッッッチャ便利だ。聞いた限り、エラルカには馬車で早くても二ヶ月近く掛かるらしいが、それだけの道のりをたったの数時間歩いただけで済んだ。


 シアに原理を聞いたのだが、理解するのは難しかった。なんでも、精霊と縁の深い森の中で多数の精霊に頼んで、精霊の住む精霊界と人間界を一時的に繋げ、周りの空間を歪めて簡易的な扉を作るのだそうだ。その扉は別の森に繋がっていて精霊と強い縁があれば、森でなくとも構わないらしい。


 森の中は精霊の力で、魔物に襲われないのでただただ歩くつまらない時間が続いた。途中、森が途切れて草原になっているようなので、近くの街道に移動してエラルカに向かった。


 街道を歩いていたら、プレイヤーと思われる盗賊と会った。こちらを見るなり襲ってきたので、装備ごと黒炎で燃やして殺した。他にも盗賊とは何回も会ったが、金を持ってそうな奴以外黒炎で燃やした。


 プレイヤーに使って分かったが、黒炎はプレイヤーの痛覚設定とかも貫通して痛みを与えているようだ。シアの魔法を喰らって、偶々生きていた何人かのプレイヤーに何度も黒炎を使ったら絶叫しながら死んでいった。


 エラルカには何とか日が沈む前に着いた。検問の際に火澄を見て、衛兵が悲鳴を上げた。火澄が街に着いて安心したせいで、抑えていた龍の気配が少し漏れ出ていたようだ。


 そんな哀れな衛兵の代わりの奴はすぐに来て、無事に貿易都市エラルカに入れた。エラルカは貿易都市だけあり、様々な国の商品が置いていて、かなり大きい街だった。


 さっそく宿を取って、シアと火澄をゴブリンの巣で使うアイテムを買わせに行かせ、俺は武器屋に向かった。迷宮で普段使いしていた白塵が結構ボロくなったので、新しく普段使い用の武器を買う為だ。


 黒葬姫はいつも使うにしては、性能が高過ぎて剣の腕が鈍りそうで怖い。金は火澄を買ってかなり減ったが、沢山寄って来た盗賊供から徴収したのもあってあまり困っていない。


 「ピンと来るのが中々ないな〜。武器は悪くないんだが。」


 別行動をして何時間か経ったが、一向に良い武器が見つからない。良さそうな所を何件かめぐてっても、いまいちな物しか置いておらず思わず溜め息が何回も出た。


 「カンザの武器と比べるとやっぱり見劣りするんだよな〜。そういえば、アイツの店って小さかったけど、置いてある武器は一級品ばかりだったな。」


 夜月の素材も持ってたしそれなりに名の売れた鍛治師だったのかもな。その後、ゲームとかのテンプレのボロい店に凄い武器がある、というのも考えて探してみたが、良い物はなかった。


 「どうするか。白塵は前に点検に出した時、刀というのもあって軽い手入れしか出来ないと言われたし。ん〜。」


 代わりの良い案が浮かばず、俺は唸りながら街を歩いた。ゴブリンの巣は、ここから普通に歩けば二週間で着く距離だし、王都までの道のりを考えると一日でも早く出発したい。


 流石に白塵を騙し騙し使うのには限界がある。だからと言って、黒葬姫を使うのは鍛練にならないので嫌だ。気分転換のつもりで冒険者ギルドに立ち寄った。


 ギルドは、ゴブリンの巣やらの狩場が近いからかそこそこ賑わっていた。酒場も併設されていたので酒を頼んで、周りの会話に耳を傾ける。大した話はされていなく、どうでも良い世間話くらいしか聞けず、今日何度目かの溜め息が出た。するとさっきから俺のことを見ていた奴が俺の肩を後ろから叩いて話しかけてきた。


 「ねぇ、そこのお兄さん。面白い依頼とかあるけど、一緒に受けない?」


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 作者です。学校の期末テストとやる気の問題で執筆がかなり遅れているので頑張って書いています。これから毎日投稿までとは言わず、二日間投稿を目指したいと思っています。

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