第三十五話

 翌日、俺は一人で鍛練をしていた。こういう時、いつも沙耶香が来て邪魔してくるが前の旅行の為にかなり無理したようで、仕事に追われている。そのおかげでいつも以上に集中して鍛練をする事ができている。


 あの島から回収した指南書を見ながら鍛練を続け、外に昼飯のラーメンを食いに行っていた。家でも頼めば作ってくれるのだが、やっぱり外で食う方が俺は好きだ。事前に調べてあったラーメン屋の前に行くと、中から騒がしい気配を感じた。変に思いながら、店に入ると中で男二人が店主らしき男の胸ぐらを掴んで騒いでいる。


 「おい、テメェ‼︎何だよこのラーメンはよ!!髪の毛が入ってたんだがどうすんだよ‼︎汚ねぇだろうが‼︎」

 「大してうまくもないのに良くやっていけるよな」

 「ぐっ、は、離して下さい。お願いします」


 せっかく機嫌が良かったのにこのゴミ供のせいで台無しだ。良し、叩き出すか。俺はまず、店主らしき男を掴んでいるゴミの腕を掴んだ。


 「あ?なんだおまギグゥゥガッ‼︎」

 「あ、あにグベ‼︎」

 「おいゴミ供。俺はラーメン食いに来たんだよ。邪魔してんじゃねぇよ。殺すぞ‼︎」


 俺は掴んだゴミの一人の腕を反対方向に折り、外にぶん投げもう一人のゴミはシンプルに殴って外に追い出した。そして、最後に殺気をぶつけてゴミ供を気絶させた。俺は空いている席に座り、ラーメンを頼んだ。


 「ニンニク豚骨ラーメンの大盛りと、餃子一つ」

 「え?あ、は、はい」


 状況を理解できていないのか、固まっていた店主らしき男は俺の声に慌てて厨房に戻って行った。周囲の客は呆然としていたが、すぐにラーメンを食べたり、待ち時間で話し始めたりした。マナーのなった客達のようだ。


 静かに待っていると、一つのラーメンと餃子が目の前に置かれた。ニンニクの良い匂いがする。食べてみるとスープは濃厚でニンニクの癖になる味と豚骨の脂が食欲を刺激し、麺はスープと絡み合っていて喉越しも最高に良い。評判通り、そして想像以上の美味さに自然と頬が緩むのを自覚した。


 俺はスープ一滴すら残さず、ラーメンを食った。メッッッチャ美味かった。餃子の方も美味かった。店を出て帰ろうとしたら、店主らしき男が礼を言ってきたので「気にするな」とだけ伝えて帰った。家に着くまでずっと笑顔だったと思う。


 「やぁ。会うのは二回目だね。隆貴さん」


 家の前に、・・・ち、千澄?がいて俺の気分は最悪のモノになった。なんでいるんだよ。気持ち悪い。どうせ沙耶香関係の話だろ。


 「さっさと退けよ。テメェのせいでせっかくの気分が最悪だ」

 「そう言わないでよ。僕は少し話をしに来ただけさ」

 「沙耶香のことなら特段話す事は無いぞ。それに、その気持ち悪い話し方、やめた方が良い。反吐が出る」


 俺は千澄の横を通り過ぎて家の中に入った。その時、千澄は俺を嘲笑うような声で言う。


 「僕は四宮グループの次期代表だよ。お前を消すなんていつでも出来る。それに沙耶香ちゃんは僕にメロメロだからね」


 勘違い野郎が変なことを言いやがった。俺を、消す?能天気な馬鹿だな。消せるならさっさと消すのが大事なんだよ。邪魔になる前にな。


 まぁ、こんな事を言うのも仕方ないか。能ある鷹は爪を隠すと言うように、黒島家本家の場所は隠されている。確か、この家は日本の古い名家という設定だったはずだ。他にも日本各地に色んな設定を付けて家を隠してるらしい。流石に俺も五箇所くらいしか知らない。高登兄なら全部知ってると思うが。


 俺は家の中に入ると、そこら辺に置いてあったベルを鳴らした。すると上から黒装束の者達が降ってきて、俺の前に着地し膝を付いた。コイツらは黒島家の諜報部隊だ。


 「隆貴様、何のご用でしょう?」

 「四宮グループについて調べろ。そこの次期代表様が俺に喧嘩を売ってきたから相手してやるつもりだ」

 「その程度の事ならば我々が対処を、」

 「俺の喧嘩の邪魔をするつもりか?」

 「っ⁉︎滅相もない。我々にお任せを」


 隊長格の言葉に俺は殺気を放って威嚇すると、彼らはすぐに立ち去った。そして、俺は修練の続きを始めた。魔力の扱いは女魔術師と戦った時よりも上手くなってはいる。それでも魔術は使えず、身体能力を上げるくらいの使い道しかない。


 婆様は忙しいので魔術の使い方を教えて貰えず、爺さんはそもそも魔力を持っていない。一応指南書に魔術についても書いてあるが、魔力回路がまだ整備出来ていないので難しい魔術は使えない。


 三人のゴミのせいで一部酷い不機嫌か時間があったが、一人で過ごす時間は有意義だった。そんな時間が増えたら良いのだがな〜。そういえば、明日は高登兄が海外研修から一時帰宅してくるんだったな。


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 作者です。一週間投稿になった理由について弁明をもう一つしたいと思います。今、私は暇な時間に、この小説の他に新しい小説を書いているのですが、それを書いてるせいでこの小説の執筆が滞るという失態をしてしまいました。新人筆者にしても、このミスはいけないなと感じています。次から気を付けたいです。・・・・・そう言う奴に限って同じ事をしますよね。かく言う私がそうです。本当に気を付けます。

 それと、私は主人公と同じくラーメン大好きです。あっさり醤油系が特に好きです。醤油ラーメンって美味しいですよね。

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