第三十四話

 ルキアside

 「お、お母さん、大丈夫だよ。か、必ずお父さんが助けてくれるから」


 フォルアは泣きそうになりながらも、私に心配をかけまいと笑って見せてくれた。お父さんが誰のことかは分からないが、フォルアのおかげで少し落ち着きを取り戻した。


 「ありがとうね。本当に良くできた子」

 「えへへ」


 フォルアは私の言葉に照れたように笑った。少しして、私は周りの状況を確認した。周りは暗く、私達は動物を入れる檻のようなモノの中にいた。少しだが、床が揺れているので船の中にいるのかもしれない。


 目覚めてから体感一時間くらい経って、揺れが小さくなっていき、部屋の中に光が入り込んだ。扉が開いて、そこから男達が出てきて私達の入った檻を運んだ。話を聞こうと試みたが、私の声が聞かないのか何の反応もしない。


 男達は、檻をトラックに積んでどこかに移動し出した。私はいつの間にか寝ていた。起きると周りは明るく、私達を運んだ男とその指示役のような女が私を睨んでいた。それに気づいて、慌てて私はフォルアを探した。


 「フォルア、どこ?どこにいるの‼︎」

 「あくまで知らないフリをするの?」

 「フォルアをどこに連れてったの!!返して、返して‼︎」

 「な、なに?本当に知らないわけ?まさか自力で檻を出た?チッ、あの子供の能力か」


 私はフォルアがいないのを確認した私は、頭の中が真っ白になって女に問い詰めた。女はそんな私に驚いたように後退り、よく分からない事を言って去った。


 私は酷い混乱した状態で、檻の近くにあった牢屋に入れられた。私はフォルアの無事を祈って強い不安を持ちながらも、ここから脱出する機会を待った。


 そこから何日も牢屋の中で過ごしたと思う。ご飯は冷えたリゾットのような物で、味は酷かった。脱出の機会は思っていたよりも結構遅くやってきた。微かに誰かが近づいてくる音を聞いて私は咄嗟に寝たふりをした。


 「やっぱいい体してるなこの女。寝ているなら口抑えりゃ良いだろ。ゲヘヘ」

 「どんな風に犯してやろうか。楽しみだ」


 下卑た声で笑いながら牢屋の鍵を開けて入ってくる。相手は二人。やれると判断した私は牢屋に入ってきた瞬間、飛び起きて一人を殴り飛ばしてもう一人は首を折った。殴った奴が変な機械を取り出し、急いで私はそれを止めようとした。間に合わないと思った時、どこからか短剣が飛んできて檻をすり抜け男の手に刺さった。


 「えっ」


 私は突然の事に小さく驚きの声を上げて、すぐに周りを警戒して牢屋を急いで出た。


 「そこにいるのは誰?敵なら容赦はしないわよ」


 私は短剣が飛んできた場所を睨んだ。すると突然気配を感じた。警戒を強めて出てくるのを待っていると、急に周囲が暗くなり炎の玉がかなりの速度で飛んできた。突然のことで、私は動けないでいた。だが、それは物影から現れた男、隆貴によって斬られて消える。


 隆貴が目の前に現れて困惑していると、体を蹴飛ばされた。横の通路に飛ばされた私は酷いと思いながらも、体を丸めて隠れた。銃声や大きな爆発音が響いて、不安は前よりも大きく膨らんだ。でも、隆貴は無事に戻ってきた。


 軽く会話したが、口ぶりからしてフォルアを知っているようだったから、フォルアが助けを求めたのかもという考えが浮かんだ。隆貴は私に銃を持たせて、一人で地下室を出た。私は隆貴が銃を持たせた意味をすぐに理解した。少しして隆貴の大きな声が聞こえ、私はゆっくりと地下室から出て、適当な場所に身を隠した。


 隆貴と女の戦いに私は自分の正気を疑った。雷のような槍や炎の玉が飛び回り、それを隆貴は斬ったり、躱したりしていて意味が分からなかった。それでも私は、目の前の現実を否定しながらも女の隙を伺い続けた。


 女が隆貴と睨み合い私に背を向けて立った時、私は今しかないと思い、頭を狙って銃の引き金を引いた。だが、使うのが久しぶりのせいか反動で狙いがずれて銃弾は女の肩に当たった。それでも隆貴のサポートをするには充分なものだった。


 隆貴は女が死んだのを確認して私に礼を言ってきた。多分だけど、私がいなくても隆貴は一人であの女を殺せた筈だ。無意識かわざとかは分からないけど、隆貴は私との共闘を懐かしんでいたのは間違いないと思う。


 私は緊張の糸が切れて、崩れるように座り込み隆貴が私を背負って、外の車に乗せて隆貴自身はどこかに歩き出した。車で移動していて、隆貴は良いところの人間だったのだなと感じた。だって、今や車は自動運転が主流の時代で専用の運転手がいたり、車の中に普通に銃器や高そうな食事があるし、今時そんな事できるのはどこぞの金持ちくらいだろう。


 隆貴の住んでいる家は凄く大きく、軽く目眩がした。それからフォルアのいる部屋に案内され、笑顔で私を迎えたフォルアを見て涙が止まらなかった。牢屋の中にいた時から一度も寝ていなかったせいか、気づけば寝ていた。


 翌日の朝食で何があったのかを説明した。隆貴があんなにも落ち込んだ姿は初めて見た。それに、私が見てきた隆貴は感情を表に出す事はあまり無かったから、ここでは本当にあの隆貴なのか疑いたくなる程、別人に見えた。これが本当の隆貴なのかもしれない。


 隆貴に一緒に来るかと聞かれたが、私はフォルアと二人で生きて行くつもりでいたため断った。それでも、今回の事件のせいでフォルアに今後危険が及ぶ可能性が増えた影響で、島に住む事になった。紹介された仕事はやりがいがあり、今はフォルアとそれなりの暮らしが出来ている。私はこのまま幸せが、今度こそずっと続くことを毎日祈っている。


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 作者です。今日から一週間投稿にしたいと思います。学業もあり、話の執筆が間に合いません。投稿を楽しみにしていた方は申し訳ありません。

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