第三十二話
「元々フォルアは、まるで結果が分かっているような行動をすることがあったんです。私が階段から転げ落ちそうになった時は前から体を支えてくれたり、私が家に帰った時いつも玄関にいたりと。それで確信しました。フォルアは未来が分かるんだって。・・・だって、貴方が、隆貴が助けに来てくれたから。」
沙耶香はナキアの言葉に号泣し、俺は気不味そうに顔を顰めた。フォルアは相変わらず朝飯に夢中だった。そして、微妙な雰囲気の中、朝飯を食って俺は日本に帰る準備をした。一緒に来るかとルキアに一応聞いたが、予想通りこれからもフォルアと二人で暮らしていくそうだ。
流石に裏組織が関与した件もあり、ナキアとフォルアにはこの島に移住してもらうことになった。婆様に伝えた結果、監視という名目で保護する形になっている。なんでもこの一件でフォルアに特殊な能力がある事が外部に知られて、魔術師関連の組織が騒いでいるらしい。
プライベートジェットに乗って日本に戻っている時、一緒に乗っていた沙耶香がナキアと俺の関係について聞いてきた。
「隆貴とナキアさんって知り合いなの?仲良さそうだったけど。」
「知り合い、か・・・。そうだな。まぁ、その話は後でしてやる。」
「えー。なら、帰りに見慣れない箱を荷物に突っ込んでたのって何?それくらいは教えてよ。」
沙耶香はルキアの関係を話そうとしない俺に不満そうに口を尖らせたが、すぐに別の話に移った。
「アレか。アレは本だよ。正確にはあの箱に入ってる物がな。」
「なんでこの島に本なんて埋めたの?タイムカプセル的なヤツ?」
「そうだな。それに近いが、俺的には封印が近いな。アレは、本でもかなり危険な代物だ。本そのものが危険というよりは、内容がかなりヤバい。」
「へ〜。隆貴がそこまで言うんだったら、かなり危険なんだろうね。隆貴はあんまり誇張した表現って使わないし。」
そんな風に雑談をしながら日本に着くのを待った。沙耶香が前に結婚の話をしていたのを思い出して、つい昔沙耶香に求婚していた奴がいた話をしてしまった。
「そういやーお前に求婚した奴がいたよな。確か名前はち、ち、ちるいだっけか?」
「あぁ、アレね。ちるいじゃなくて智愛じゃなかったっけ?とゆうか今も求婚されてるよ。いつもキッパリ断ってるのにしつこく食事に誘われたり、口説かれるから困ってるんだよね。」
「流石は日本が誇る有名モデル様だな。」
沙耶香は俺の方をチラチラ見てきた。何かを催促するような視線だったが、茶番に付き合うのは面倒くさかったので無視した。そして、日本に着き、家に沙耶香を送るために俺が車を運転していて、沙耶香の家の前に見知らぬ男が立っていた。
「やぁ、沙耶香ちゃん待っていたよ。」
「げっ。」
「キモ。」
その男は、沙耶香を見つけると笑顔で出迎え、それを沙耶香は心底嫌そうな声を上げた。俺は沙耶香にちゃん付するコイツの胡散臭い笑みが気持ち悪くてつい言葉が出た。
「沙耶香ちゃん。数日もどこに行っていたんだい。心配で胸が張り裂けそうだったよ。それでその男は誰だい?」
「馴れ馴れしく下の名前で呼ばないでもらえますか。ちゃん付もやめてくださいキモいです。というか早く帰ってください。」
「へ〜。ここまでか。」
沙耶香は基本、一定の仲ならタメ口で話すので敬語で話す姿はなかなかに珍しい。それに、一応は笑顔で受け答えしているが目が笑ってないし、不機嫌オーラが体全体から溢れ出ていた。誰とでも仲良くなれる沙耶香にここまで嫌われるのは逆に凄いと思う。
「そんなこと言わないでよ沙耶香ちゃん。それで、彼は誰だい。」
「俺は隆貴だ。沙耶香とは昔からの友人だ。あんたは?」
「ふっ。僕は
「凄いな。中々デカいグループじゃないか。」
自慢するように言った千澄に、俺は皮肉気味に返した。四宮グループは日本では、そこそこデカいグループだが、やはり黒島財閥には敵わず、そこそこに落ち着いているところだったはずだ。確か、男性でも使いやすい化粧品や香水などの美容用品で成功した会社が勢いづいて、他の会社を買収してできたグループだ。
名前は千澄だったか。話だけしか聞いてなかったが、これは沙耶香が苦手なタイプだ。自分の家柄を大っぴらに言って他人を見下す奴は沙耶香は大嫌いだからな。それにしても、あの沙耶香が名前を間違えるとは本当に相当だな。沙耶香は他人の名前を殆ど間違えた事がなかったはずなんだが。
「いいから退いてください。私、これから仕事がありますので。」
「仕事があるなら仕方ないね。その後、僕と食事に行かない?」
「お断りします。それでは。」
「沙耶香、俺は帰るからな。仕事頑張れよ。」
今日は仕事がなかったのは沙耶香から確認済みなので、適当言ったのだろう。沙耶香を一人にしても大丈夫だ。あんなんでも、沙耶香は昔俺の家で格闘技の特訓に付き合ってくれたりしたので、そこら辺のチンピラならボコボコに出来るぐらい強い。
そうして俺は家に戻り、久しぶりに修練に熱中できた。かなりスッキリした気分だった。
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作者です。現代編はまだ続きます。
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