第三十一話

 ナキアと地下室の出入り口に向かい、殺した奴らが持っていた銃をルキアに持たせ、俺が先行して地下室を出た。周りは銃を持った奴らに囲まれており、奥から気味の悪い気配を放つ女が現れた。手には杖を持っており、余裕そうな表情で俺を見た。


 最近魔力の鍛練をしていて、始めてあまり時間が経っていないので大雑把でしか相手の魔力を測れない。それでもかなりの魔力を感じるのは、相手がかなり魔術の腕が立つのだろう。


 「テメェがここのボスか?」

 「そうよ。にしても貴方、凄いわね。私の魔術を斬ったのもだけど、あの銃弾の雨を乗り切るだなんて人間とは思えないわね。」

 「正真正銘俺はただの人間だぜ。俺は結局は人間が出来る事しか出来ない凡人さ。」


 多分、俺は今薄気味悪い笑みを貼り付けているはずだ。なんとなくそう思った。予想が正しかったのか女は変なモノを見たかのように不快そうにしていた。


 「何?その笑み。気色悪い。」

 「さっさと始めよう。俺が凡人ってことを教えてやるよ。」

 「いいわ。やりなさい。」


 女が指示を出すと周りの連中は構えていた銃の引き金を引いた。そして、やっと魔力と気力で作ったは撃ち抜かれて消えた。


 「「「「なっ‼︎」」」」


 驚く奴らを尻目に、俺は周りの雑魚を片付けた。次々と殺される仲間を見た女は理解が追いついていないのか茫然と黙っていた。全員殺し終わって、やっと女は口を開いた。


 「あ、貴方、本当に人間なの?化け物か何かじゃなくて?」

 「化け物だなんて酷いな〜。俺は所詮人間だ。だが、されど人間だ。人間には可能性が沢山ある。そして、さっきも言ったが俺は人間が出来る事しか出来ない凡人だ。でも、それならこう考える事だってできる。人間が出来る事なら俺にも出来るってな。」


 女は信じられないといった顔をしていた。先程までの余裕はどこに行ったのやら。


 「な、ならその動きは何よ‼︎」

 「そう難しいモノじゃないぞ。簡単な事さ。体のリミッターを外せば良い。そして、俺はそれを朝から晩まで寝ている時も常に外してる。そうすりゃ、こんな馬鹿げた事だって出来る。」


 俺は落ちていた銃を手に持ち、片手で握り潰した。女は一瞬怯んだが、すぐに詠唱していつかのレッサーフェンリルが放ったような、複数の雷の槍が俺目掛けて飛んできた。それを躱して俺は、女をさっき拾っておいた拳銃で撃った。だが、見えない壁に当たったかのように銃弾は弾かれた。


 「やはり結界は貼ってるか‼︎」

 「なんでそんなに簡単に躱せるのよ!!」


 近づいて斬ろうとしたが結界や魔術に阻まれて近づけなかった。女は炎の玉や雷の槍、風の刃と様々な魔術を俺に撃ってきたが、尽く躱してみせた。互いに決定打がない中、状況はすぐに一変した。突如、女の肩が撃ち抜かれた。


 「外した!!」

 「ぐっ。お、お前は⁉︎」

 「ナイスショットだ‼︎」


 隠れていたナキアが後ろから女を撃ち、それに意識が向いて、女に一瞬隙ができた。その一瞬を逃さず、結界を氷雨で斬り裂き拳銃で女の頭を撃ち抜いた。銃弾はしっかりと頭に直撃し、女はすぐに絶命した。


 「ナキア、助かった。」

 「役立ったなら良かったわ。それにしても凄いわね。アニメの世界に入った気分。」


 女が死んだ事を確認して、俺はナキアに近づいた。ナキアは疲れた様子だったが、それ以上に安心したのか崩れるように座り込んだ。そんなナキアを背負って邸宅を出た。外には迎えの車が待機しており、それにナキアを乗せて俺は寄るところがあったので歩いて別荘に戻った。


 用事を済ませて別荘に戻ると、ナキアもフォルアも寝ていたので寝た。翌日に沙耶香はルキアを見て、また大騒ぎしたので頭を軽く叩いて落ち着かせた。そして、俺は沙耶香とフォルア、ナキアで朝飯を食いながらナキアに事情を聞いていた。


 「お前はなんでアイツらに狙われたんだ?フォルアが目的だったそうだが・・・なんでだ?」

 「・・・・・隆貴・・・さん、だったら、話しても、構いませんよね。」


 ナキアは顔を俯かせ、淡々とした口調で事情を話し始めた。


 「フォルアは私の子供という訳ではなく、元々捨て子だったんです。隆貴、さんと離れた私を助けてくれた診療所にフォルアはいたんです。怪我が治るまでの間お世話になって、そのお礼にフォルアなどの子供の面倒を見ていたんです。お医者さんの紹介で格安で部屋と仕事を紹介して貰って、診療所を出る時にフォルアに泣きながら一緒にいたいと言われ、引き取ったんです。フォルアとはそれなりに幸せに暮らせていました。そして、仕事終わって家に帰ろうとした時に、あの組織に捕まったんです。」

 「・・・そうか。」


 ナキアの話を俺と沙耶香は静かに聞き、フォルアは朝飯に夢中になっていた。ナキアはそのまま話を続けた。


 「この島に連れてかれた時に私は寝てしまって、その間にフォルアはどういうわけか逃げていたんです。無事を祈っていましたがまさか、隆貴、さんを連れて来るとは思いませんでしたけど。」

 「前みたいに話していんだぞ。」

 「・・・・・はい。フォルアが逃げたのを知らず、女達に囲まれていた私は事情を知らず酷く混乱していました。その時にボスの女が言っていたんです。フォルアには特別な能力がある、みたいな事を。それで、思ったんです。フォルアには、未来が分かるんじゃないかって。」

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