第二十三話

 迷宮攻略は順調に進み、トラップに苦戦しながらも七十階層に半月で行けた。そこから、レベル上げを本格的に始め、シアはレベルが34、俺は74まで上がった。スキルも増え、ジョブに関しては全てランクDまで上げた。街中でプレイヤーを何人か見かけはしたが、関わってはいない。関わっても面倒事になる予感しかしない。


 そして今、俺は一人で迷宮に潜っていた。シアには白塵などの武器を点検に出してもらったり、生活用品を買ってもらっている。迷宮をソロで潜っている理由はマジックバッグを手に入れるためだ。シア用のマジックバッグがあったら便利だと思ったからだ。俺がソロで行けるのは五十階層までで、それ以降はトラップなどが面倒でシアがいないとかなりきつい。


 「ボス周回もつまんなくなってきたな。」


 迷宮のボスは周回が可能になっている。だが、同じ者が入っても一時間経たないとボスは再ポップしない仕組みになっている。五十階層でひたすら魔物を作業感覚で殺るのはハッキリ言って、超つまんない。なので、次は迷宮を細かい所まで探索していた。迷宮には隠し部屋というのがあり、そこにはレアアイテムがある事が多いという話を聞いたからである。


 三十階層から三時間くらいかけて探索したが、それらしきものは一切なかった。だが、ひたすら同じ事を繰り返す周回よりは楽しい。途中から諦めかけていたが、四十五階層のモンスターハウス付近で怪しい所を見つけて念入りに調べていたら、壁と同化した隠し扉を見つけた。俺はトラップに気を付けながら、気配を消して扉に入った。


 中は洞窟で、他とあまり変わっていなかったが、明らかに人為的なトラップや結界が貼ってあったので、ただの隠し部屋という訳では無さそうだった。静かにしている夜月を引っ張り出して、意見を聞いた。


 「夜月。これ、どう思う。」

 『我が半身を滅茶苦茶に振り回すではないわ!!ん?・・・この気味の悪い魔力は悪魔ではないか?魔力量からして伯爵か。』

 「ほ〜、悪魔か。二人ともか?」

 『そうじゃの。それにしても、よく気付いたのぉ。流石我が主人じゃ‼︎』


 気配探知には自信があるからな。それにしても悪魔か・・・。精々楽しませてもらうか。その前に夜月の協力の元、結界をバレないように乗っ取り効果を探知結界から物理防御結界に書き換えた。他に仕掛けてあったトラップの位置や仕掛けを弄ったりした。


 自身の気配や魔力を周囲に溶け込ませ、奥に進んだ。すると鉄製の扉がありそこから女と男の喋り声が聞こえた。


 「姉さん。僕頑張ったから褒めて‼︎姉さんに頼まれた冒険者の死体をこんなに沢山持ってきたんだよ‼︎」

 「偉いわね。私の想像以上の量だわ。流石私の弟ね。ご褒美にほっぺにキスしてあげる。」


 男の方は無邪気な少年といった感じで、女は大人びた女性といった感じだ。会話からして前の魔族みたいに死体を儀式の贄にするつもりなのだろう。なんとも心踊る内容だ。これなら殺しても人に迷惑は掛からない。はぁ。どうやって殺そうかな〜。俺は逸る気持ちを抑えながら静かに話を聞いた。


 「これで、魔神様を復活させられる?」

 「いいえ。まだ足りないわ。人間や獣人などの死体以外にも希少種族の死体が必要よ。でも大丈夫よ。アテはあるの。私と一緒に楽しいお出掛けしましょう。そこではくれぐれも人は殺しちゃ駄目よ。分かった?」

 「うん‼︎お出掛けする準備する‼︎」


 そして少年は扉を開き、俺の真横を通り過ぎて手前の部屋に入って行った。悪魔は見た目は人間だが、頭に角が生えていた。魔族とあまり変わらん。でも、悪魔の姉弟か・・・。いい事を思いついた。俺は少年の悪魔が入った部屋に入り、深淵魔法でその部屋全体に音を遮断し、気配を偽装する結界を貼った。悪魔はそれに気づかず、ウキウキな様子で着替えをしていた。


 「キヒヒ。」

 「ん?何だ?」


 これから先の事を想像してつい笑い声が漏れてしまった。それに反応した悪魔の右腕を俺は瞬時に斬り落とした。


 「ギャァァァァァ‼︎‼︎い、痛い‼︎姉さん痛いよぉぉぉ‼︎‼︎」


 斬り口には黒炎が纏わりつき、燃えるような痛みに悪魔は絶叫した。悪魔はやっと俺に気付いたのか、痛みに悶絶しながら助けを呼んだ。


 「ね、姉さん‼︎う、腕がぁぁぁ‼︎助けてぇぇぇ‼︎‼︎ぐっ‼︎」


 俺は片手を斬られただけで無様に泣き叫ぶ悪魔の顔面を殴って黙らせた。


 「いくら助けを呼んでも誰もこねぇよ。特殊な結界貼ったから音も遮断されてる。なぁに、安心しろ。話を聞きたいだけだ。素直に話すなら死ぬ前に姉さんに会わせてやるよ。」

 「お前なんかに話すことなんかギャァァァァァ‼︎‼︎」


 反抗的な態度の悪魔に対して、俺は黒炎の出力を上げた。俺は怯える悪魔の頬を撫で、爽やかな笑みで言った。


 「大丈夫さ。素直になればすぐに終わるよ。すこーしするだけさ。」

 「ギィギャァァァ‼︎‼︎」


 部屋の中には、悪魔の泣き叫ぶ声と俺の笑い声が響いた。


———————————————————

 作者です。主人公のイカれた場面が少ないと思いましたので書きました。次回は女悪魔視点です。

 遂に一万PV突破しました。これからも、この作品を読んでくださると嬉しいです。

 

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