第二十二話
翌日、俺とシアは宿からすぐに迷宮に向かった。この街の迷宮は深淵の迷宮と呼ばれていて、現在の最高到達階層は249層らしい。なんでも、歴代最強と言われた勇者が挑んで、記録を更新したんだとか。
「外見は神殿の癖に中は洞窟かよ。シアがいて助かった。」
「ありがとうございます。」
中は薄暗い洞窟で、シアの光魔法で視界を確保している。まだ四層で、出てくる魔物はゴブリンくらいなので順調に進んでいる。シアは俺に思い出したように質問してきた。
「ご主人様は昔は何をしていたのですか?」
『それは我も気になるのお。』
最近静かだった夜月も反応してきた。面倒だとは思うが、特段隠す事でもないし、機嫌が少し良かったので話した。
「昔は傭兵をしていたぞ。国の内乱とかに結構参戦してた。そこで俺は本当の殺し合いを学んだ。今じゃ良い思い出だな。」
「良い・・・思い出・・・?」
『そうか。では主人が女を毛嫌いする理由と関係あるのか?』
シアは首を傾げ、夜月は俺に別の質問をしてきた。
「・・・そうだな。多分、目の前で友が死んだからだな。傭兵を始めた頃から仲の良かった奴だ。一つ言っとくが、悲しかったからじゃない。俺は人の限界に絶望しただけだ。アイツは俺から見ても強かった。
『それ程の女がいたのか。』
一言も女とは言ってないが間違っていないので何も言わなかった。シアは気不味そうに黙り、夜月はまた静かにしだした。最近、夜月は急に黙る事が多い。本人は気にするなの一点張りで何も話さない。気にしてないからいいが。
「ここが十階層の階層ボスの部屋か。無駄にデカい扉だな。」
十階層には案外簡単に着いた。迷宮には十階層ごとに階段前にボス部屋がある。それを倒すと下の階層に続く階段が現れ、その途中に迷宮の転移門が設置されている。転移門は迷宮に設置されている物で、今でも原理が分かっておらず、そこに魔力を流すと入り口に転移出来たり、入り口から到達した階層の入り口に転移出来るらしい。
扉は触れただけでゆっくり開いて、俺達は中に入った。ギルドではゴブリンマジシャンとゴブリンナイトが二体ずつ出てくると聞いていたが、情報通りだった。シアにゴブリンマジシャンを任せ、俺はゴブリンナイトを倒した。たまに宝箱が出てくるようだが、今回は出てこなかった。
「シア、どれくらい掛かった?」
「大体一時間です。ご主人様は精霊達を都合良く使い過ぎでは?」
シアはジト目で俺を見てきた。
「供物はしっかり捧げてるからいいだろ。報酬分は働いてもらう。」
精霊魔法は魔力の他に食べ物などを精霊に捧げて使うこともでき、シアには少量の食料を捧げて精霊達に時間の確認を頼んでもらっていた。この調子なら今日中に40階層くらいには行けそうだな。
「とりあえず、四十階層を目標にして行くぞ。」
「とりあえずで行く所ではないのですよ。四十階層の適正レベルは人間で80ですよ。大丈夫でしょうか?」
シアがまともな事を言いだしたので、俺は自分の自論をシアに教えた。
「いいかシア。強くなりたいなら常識を捨てろ。強い奴は大抵頭がおかしい。だから、狂人くらいが強くなるのには丁度良いんだよ。」
「は、はぁ?」
シアはいまいち理解できないらしい。分かりやすく言ったつもりなのだがな。そして、俺達はまた、迷宮の階層を次々に踏破し目的の四十階層に辿り着いた。道中は順調そのもので日頃の行いが良いからかレアっぽい魔物と出会いレベルが2上がった。迷宮内では魔物は死ぬと素材になって消えるので、解体や死体処理をしなくていいのが楽でいい。三十階層では宝箱が出てきて、中にはよく分からん古くさい鍵が入っていた。
四十階層のボスはワイバーン5匹らしいが、どこまで強いかな〜。ボス部屋に入るとワイバーンが待ち構えており、俺達を視認するとすぐさま炎のブレスを放ってきた。黒炎でブレスを防ぎ、シアが雷魔法でワイバーンを撃ち落として俺がトドメを刺して終わらせた。シアはあまりにもあっさりと終わり、少し驚いていた。
「まさかたったの五時間で四十階層を攻略するとは。流石ご主人様ですね。」
「目標は達成出来たし、少し下を見た後に帰るぞ。」
シアと下の様子を軽く視察した後、地上に戻った。ギルドで迷宮の素材を換金したらちょっとした騒ぎになったこと以外は普通だった。
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作者です。あとがきに書くことが少なくなってきました。何を書けば良いのでしょうか?
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