第十八話

 襲ってきた騎士達相手に、俺は武器を構えず騎士達の剣を躱しながら隊長格らしき騎士の鎧を軽く叩いた。するとその鎧に小さなヒビが出来た。ヒビはどんどん広がり、ある程度広がると鎧は砕け散った。騎士達がそれに茫然としている間に他の騎士達の鎧も同じように破壊した。


 「き、貴様‼︎な、何をした‼︎」

 「何って、軽く叩いただけだぞ。鎧が脆いだけだろ。」


 どういうことかというと、俺は核を破壊しただけだ。あらゆる物ものには核があり、その核が破壊されればものは形を維持できなくなる。そして核は非常に小さくとても脆い。それを破壊するのはとても難しい。脆いといっても衝撃を集束させなければ破壊はできないので実戦で使えるかは微妙な技だ。


 「早く来いよ。殺しはしないが、少し痛い目にあってもらう。」


 俺は騎士供の装備を破壊しながら鳩尾や顔面を殴って気絶させた。数が半数を切ったところで騎士供は逃げようとしたが、後ろから別の騎士が突然現れ、すぐに捕縛された。


 「なんだ貴様らは‼︎我々が領主様の私兵と知ってのことか‼︎」

 「黙りない。逆賊。」


 騎士が騒いでいると冷たい声が騎士の声を遮った。声の正体は前に俺が助けた公爵令嬢セルフィアだった。


 「私はセルフィア•サリアーナです。貴方方には国家反逆の疑いがあります。証拠も出ていますし、領主も認めた事です。大人しく投降しなさい。」


 騎士達はその言葉に顔を青くし抵抗を辞めた。俺はセルフィアに近づいた。


 「まさか公爵令嬢様が直々に来てくださるとは。感謝します。」


 セルフィアは俺の言葉に対して顔は変わらないが呆れたように言った。


 「楽にして構いませんよ。今回の件は貴方のおかげで解決出来ましたから。それにしても、よく私に手紙を送れましたね。」


 「門番に事情を話したら快く届けてくれたよ。前の件で顔見知りになったからな。」


 セルフィアは部下の騎士達に指示を出し、俺に今回の件について聞いてきた。


 「今回の事件で裏に魔族がいる可能性が出てきたのですが何か知りません?」

 「あぁ。なんでも、魔神を復活させようとしてたらしい。ハイエルフを捕まえたりしてたしな。」


 セルフィアは周りを見回していたが俺の話に凄い勢いでこちらを見てきた。


 「ハイエルフ‼︎無事だったの⁈」

 「無事だぞ。今は洞窟の方に待機させてる。呼ぶか?」


 セルフィアは頷いた。俺は洞窟にいるシアを呼びに行き、セルフィアの所に連れてった。その後に他の騎士達も合流して盗賊のいた洞窟を調べ始めたり、シアを保護したりと慌ただしく動き出した。俺は暇だったのでセルフィアに許可をもらって宿に戻って寝た。


 起きて朝から日課の鍛錬をしているとサルフィアの使いが来て、屋敷まで連行された。証人として昨日の件の会議に参加して欲しいらしい。俺は使用人に案内されて広い会議室に入った。そこにはゴーラスやセルフィア、シア、それと街の要人らしき人達がいた。俺は適当に空いている席に座った。そしてセルフィアが中心に会議が始まった。


 最初の内容は領主と盗賊団の繋がりについてだったが、どうでも良かったので聞き流した。その次に魔族の暗躍について話し合った。俺は魔人や魔族から聞いた話を伝え、魔族の特徴やどのような事をしていたのかなど色々聞かれた。シアも何をされたかといった事を聞かれていた。


 ゴーラスと領主が繋がっていたという話も出たが、脅されて仕方なくという形で軽い罰で終わった。捜査協力に積極的だったのもあり、恩赦をもらったようだ。


 「今回の件はこのロストと言う冒険者がいたから早期の解決が出来ました。ですので私、セルフィア•サリアーナは我が父、バルサシア•サリアーナに代わり我が家の家紋の入った短剣を授与しようと思います。異議がある者はいますか?無論、父から許可は貰っています。」


 セルフィアの突然の申し出に場にいる俺を含めた全員が驚きの声を上げた。だが、異議を唱える者は一人を除いていなかった。異議を唱えたのは若い男でいかにもボンボンといった奴だった。最初に見た時から何か引っかかっていたが、よく見たらカンザの店の前で騒いでいた奴だ。


 「サリアーナ様‼︎いくら何でもたかが冒険者風情に家紋の入った短剣などやり過ぎです‼︎今一度お考えを。」


 男は誰も賛同しないながらも異議を唱えた。この場にいる殆どの者はこの男を愚かと思っているだろう。セルフィアが父から許可を貰ったと言っていた以上、俺はサリアーナ公爵家の当主から認められたという事だ。それに異議を唱える事がどういう事かは、その男以外の全員が理解していた。


 「これは私の判断だけではなく、お父様の判断も含まれています。それに私は以前、この方に命を救われています。その事も踏まえて意見を述べて下さい。」


 セルフィアが冷たく言い放つと、男は苦虫を潰したような顔をして引き下がった。


 「早計とは思いますが、今この場で短剣を授与したいと思います。ロスト様、前へ。」


 そうして、俺はサリアーナ公爵の後ろ盾を手に入れた。会ったこともないサリアーナ公爵は俺に意地でも恩を売りたいらしい。その後、セルフィアが新領主が来るまで代官を勤める話が始まり、俺は別室での待機を命じられた。案内された部屋に入るとそこにはいつの間にか会議室からいなくなっていたシアが、何故かメイド姿で床に正座していた。


——————————————————

 作者です。日に日に話の展開を考えるのが面倒になってきました。それでも頑張りますが。

 ★と応援お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る