第十七話

 俺の呟きと同時に黒炎が俺の体全体を包み込みすぐに弾けた。すると俺の髪と装備は真っ黒に染まっていた。飛んできた魔法は弾けた黒炎で消えた。


 「この気配は、まさか龍⁉︎それも黒って・・・。」

 「何でしょうか?その姿。それにその炎、不愉快ですね。」


 ハイエルフの女は慌て、魔族の男は余裕そうにそれぞれ呟いた。ぶっつけ本番だが、やれる事をやるか。俺は刀で魔族の体を斬ると勢い余って通り過ぎてしまった。


 「グガァァァァ‼︎‼︎い、いつ動いた‼︎」

 「ん?そんなに速く動いたつもりはないんだが。」


 不思議に感じていると夜月が説明してきた。


 『簡単な話じゃよ。主人が速過ぎたんじゃ。我の推測じゃが、我のステータスが一部主人に上乗せされとるんじゃろう。』


 それなら納得だ。仮にも龍である夜月の力が俺に上乗せされているなら、こんな事簡単に出来るだろう。


 「小癪な真似を‼︎【暗黒の槍ダークネスランス】。死ね、劣等種‼︎」


 黒い槍が俺に迫ってきたが、何もせずに受け止めると槍は俺の体に触れた瞬間砕け散った。魔族はそれに驚いたがすぐに炎や風の魔法で攻撃してきたが、結果は同じだった。


 「ふざけるな‼︎たかが人間風情に私の魔法が通用しないなど、あっていい訳がない!!」


 俺はわざと魔族を笑いながら見下すように言った。


 「本当に弱いな、お前。どうせ、こんなに弱いお前が考えた計画もきっと馬鹿みたいな計画なんだろうな‼︎」

 「馬鹿にするな‼︎盗賊どもに連れて来させたレッサーフェンリルに街を襲わせ、人間の死体と純潔のハイエルフを贄にして魔神様を復活させる完璧な計画だぞ!!」


 俺はそれを聞いて吹き出した。


 「くくく、アハハハハ‼︎何が完璧だよ‼︎そのレッサーフェンリルを俺にやられ、追い詰められた状況でよく言えたなぁお前。」

 「き、貴様がレッサーフェンリルを‼︎ふざけるなふざけるなふざけるな‼︎‼︎クソガァァァァァ‼︎」


 魔族は発狂しながら魔法を連発してきたが俺にダメージを与えられる攻撃はなかった。流石に俺も魔族が哀れに感じた。なのでさっさと終わらせることにし、刀で首を刎ね痛みを感じる前に体を黒炎で塵に変えた。


 「哀れな終わりだな。」


 俺は女の方に向くと女は突然悲鳴をあげ、俺に対して叫んだ。


 「あ、貴方は何者なんです⁉︎その力はこ、黒龍の‼︎貴方まさか邪龍教‼︎」

 「は?何言ってんだ?俺はただの冒険者だ。」


 俺は事実を述べていると夜月が横入りしてきた。


 『主人よ。多分じゃが、この者は我のことを言っとると思うんじゃが。』

 「っ⁉︎この声は‼︎もしかして黒龍‼︎こ、殺される‼︎」


 夜月は女の言葉にキレ気味に反論した。


 『何を言うか!!それでは我が見境なく生物を殺していたようではないか‼︎それに我は主人と出会い前と変わったのじゃ‼︎』


 「ひっ!!」


 そんな夜月の迫力にますます女は怯えていた。


 「はぁ。一旦落ち着けよ。」


 そうして、女が落ち着くのに30分くらいかかった。その間に【龍黒葬】の効果が切れ、髪と装備の色は元に戻った。なかなかギルドの奴等が来ないのは、多分外で待機している奴等が原因だろうな。


 「落ち着いたなら自己紹介してくれんか?俺はロスト。冒険者だ。」


 女は俺の言葉に頷き、自分のことを話し始めた。


 「私の名前はフィリーシア。シアと呼んでください。私は森の奥深くに一人で住んでいました。母は10年前に他界しましたが、精霊達がいたので寂しくはありませんでした。一月程前に盗賊達が私のいる森にやってきました。精霊達が私を守ろうとしてくれましたが、突然魔人が現れて精霊達は倒され私は捕まりました。」


 シアは悲しそうに目を伏せ、話しを続けた。


 「その後は盗賊達に襲われそうになりましたが、魔人が私を檻に閉じ込めこの隠し部屋に入れたので襲われることはありませんでした。でも、まさか魔神復活の贄にしようとしていたとは。」


 俺はシアの話を聞き終えると檻を斬り洞窟の出口に向かった。外には予想通り鎧を纏った家紋を掲げた騎士達が待機していた。シアを出口付近に待機させ、俺は洞窟を出ると騎士達は俺を囲んだ。


 「なんの真似だ?お前ら騎士だろ?俺は盗賊退治をしているだけなんだが。」


 すると隊長と思われる騎士が俺に言った。


 「お前には盗賊供と繋がっていた疑いがある。大人しく同行してもらおう。」

 「ふ〜ん。で、証拠は?」

 「何?」


 騎士は俺の言葉に聞き返してきた。


 「だから証拠はあるのかと聞いている。まさか何の証拠もなく俺を捕まえるのか?いくら騎士でもどうかと思うぞ。」


 騎士は淡々と答えた。


 「証拠はこれから見つける。さっさと武器を捨てろ。」

 「酷いな〜。俺はただ盗賊を殲滅しただけなのに。騎士ってのは誇りを重じるんだろ。お前達の誇りは何の証拠もない奴を意味もなく捕まえるくだらないものなのか?」


 俺が煽るように騎士に言うと騎士は怒鳴るように投降するように言ってきた。


 「そうか・・・。所詮はただの俗物と言うことか。騎士が聞いて呆れる。」

 「なんだと貴様!!」


 俺はわざとらしく笑い大きな声で言った。


 「だってそうだろう‼︎俺はお前達がすべきである盗賊団の殲滅をしたんだぞ!!言ってしまえば、何もしないお前達の尻拭いをしてやったんだ‼︎逆に感謝して欲しいくらいだ‼︎」

 「ふざけるのも大概にしろ‼︎全員抜剣‼︎多少痛めつけても構わん‼︎捕まえろ‼︎」


 騎士達はそうして俺に襲い掛かってきた。俺は可笑しくて堪らなかった。


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 作者です。主人公、何かを企んでいますね。

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