第十九話
「どうしたんだシア?そんな服着て。」
シアは俺の質問に対して行儀良く答えた。
「私をロスト様の旅に同行させていただきたいのです。この服は従者に相応しいと思いましたので。」
俺はシアの答えに少しの間沈黙した。そして純粋な疑問をシアにぶつけた。
「何故だ?お前には帰るべき場所があるだろう。」
シアは寂しそうに俯いて言った。
「いえ。私の帰る場所は魔人と魔族に奪われました。それに貴方様は黒龍を打ち破り、黒龍が付き従う英雄様です。救っていただいた恩を返すには、私の持つ全てでなければ釣り合いが取れません。どうかお願いします。」
シアは頭を下げ俺に頼み込んできた。俺はシアに何が出来るのかを聞いた。
「はい。私は基本属性の魔法、魔術を上級まで、それに加えて雷と光、回復系の魔法を中級まで使えます。また、精霊魔法を使って森の中だけですが、短時間で長距離移動することが出来ます。あと、多少ですが弓と剣も使えます。」
シアは自分の使える能力を言った。どの能力も俺が使えないものばかり。精霊魔法はエルフくらいしか使えない魔法だ。仲間になればかなり重宝するだろう。・・・・・ありだな。
「良いだろう。同行は許可しよう。でも条件がある。」
「なんでしょう‼︎」
シアは喜びを隠しきれない様子で聞いてきた。
「まず、俺に魔法と魔術を教えろ。そして最低限の自衛が出来るように俺が武術の指導をする。」
「承知しました‼︎ご主人様‼︎」
呼び方が何故かご主人様になった。そんなこんなでシアが旅の仲間に加わった。少しすると部屋に使用人が来て、会議が終わったセルフィアの所に案内された。そこにはゴーラスもおり、依頼の報酬を渡された。盗賊団が結構溜め込んでいたらしいのと領主の不正を暴く手伝いをしたのも合わせて、報酬は金貨750枚とマジックアイテムだった。マジックアイテムは好きなのを三つ選んで良いと言われたので、シア用にイヤリング型の魔術媒体と風魔法を付与された迷宮産の弓、姿を擬装出来る花型の髪留めを貰った。
シアにそれらを渡すと大事そうに抱え、魔術媒体は俺につけて欲しいと言われ俺がつけた。その後、屋敷を出て俺達は宿に戻った。店主に頼んで部屋をもう一部屋貸してもらった。荷物を整理してから旅で使うものを買いに行った。ついでにシアの服や武器の予備なども買った。
日が暮れていたので宿に戻って夕飯を食い寝た。夜にシアが夜這いに来ていたらしいが、俺が寝ていたので諦めたようだ。朝起きたら妙に甘い匂いがしたので香でも焚いたのだろう。夜月から聞いた。買い物をしていた際に隠れて何か買っていたのでそれだろう。
ギルドでシアを冒険者登録させ、ゴブリンの討伐依頼を受けシアの実力を確認した。ちなみに俺は盗賊団の件でAランクに昇格されていた。シアは魔法と弓を使う完全な遠距離特化の戦いをしていたので矢を使った格闘術を教えるつもりだ。また、途中でキアラと出会った。
「ロストさん。お久しぶりです。」
「あぁ。今も配信してるのか?」
配信について聞くとキアラは目を輝かせて答えた。
「はい‼︎してますよ!!この前の動画はロストさんのおかげで凄い再生数でした‼︎・・・そこの人は誰ですか?前はいませんでしたけど。」
「私はフィリーシアと申します。気軽にシアとお呼び下さい。キアラ様。」
シアが挨拶すると、キアラは更に目を輝かせた。
「メイドさんですか‼︎私初めて見ました‼︎私の名前は呼び捨てで構いませんよ。」
「ご主人様のご友人にそのような事は出来ません。ですので、キアラさんで構わないでしょうか?」
「構いませんよ。それよりロストさん‼︎また戦っている姿を撮っていいですか?」
シアと早速仲良くしだしたキアラは、俺にそんな頼みをしてきた。俺は構わなかったので承諾した。
「今更ですけど、ロストさんの装備、前と変わっていますね。カッコ良くなってます。」
「まぁな。色々あったんだ。」
そこから俺は、龍黒葬の実験ついでに魔物の群れを見つけて一人で殲滅して見せた。キアラは生配信を始めてかなり興奮しており、シアは俺の戦闘を興味深く観察し感心していた。その後はさっさと街に帰り、ギルドで依頼の達成報告をして宿に戻り寝た。今度は俺が寝る前にシアは部屋を訪れてきたが、すぐに追い払った。そういう事に興味がない訳ではないが、ある出来事がきっかけで気分が乗らないのだ。後日、シアにその事を話すと納得してくれた。
そしてその日、俺達はニルヘシアから旅に出た。目的地はシルフォリア聖王国の王都だ。世界的に一般的な宗教、始まりの女神コナシスを主神としているコナシス教の総本山である。近々かなり大規模な祭りがあり、そこで大きな武闘大会が行われるらしいのでそれに参加しに行くのだ。
それまでにレベル上げを頑張るつもりだ。なんでも一定のレベルを越えないと参加資格が得られないらしい。面倒だがルールなので仕方ないと受け入れた。
そして、俺とシアの新しい旅が始まった。
———————————————————
作者です。やっとひと段落つきました。次章はシルフォリア聖王国とその間の旅路になります。その前に主人公と夜月のステータスを載せます。夜月のステータスはとんでもなく高いです。主人公が勝つのはかなり無理があった気がします。
面白いと思う方は★と応援お願いします。それと応援のコメントありがとうございます。
オマケ 金貨の価値
•金貨は1枚で平民が一ヶ月何不自由なく遊んで暮らしていける額です。貨幣は上から白金貨、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨、銭貨で分けれています。銭貨10枚で、銅貨1枚。銅貨10枚で大銅貨1枚。大銅貨10枚で銀貨1枚と言ったレートです。白金貨だけは1枚で、大金貨100枚になります。ちなみに、パン一つの値段は銅貨3枚くらいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます