第十五話

 俺は黒龍になった女を殺さないように斬り、人の姿に戻ったので側に寝かせた。女は起きると少し放心していたが、直ぐに我に返り名前を聞かれ番になって欲しいと懇願してきたが、興味を持てなかったので断った。しょんぼりしていたが気にせず帰してもらった。


 「旦那‼︎大丈夫か‼︎」


 どうやら倒れてあっち側に行っていたようだ。


 「カンザ。どれくらい倒れてた。」


 カンザに体を起こしてもらいながら聞いた。


 「数分だけだ。何があったんだ?」

 「なぁに、強い奴と殺し合いをしただけだ。勿論勝ってきた。」


 カンザは反応に困ったのか微妙な顔をしていた。


 「そ、そうか。で、この刀はどうする?」

 「有り難く貰っとくよ。俺はこの刀に勝ったんだからな。名付けしても?」


 カンザは大きく頷いた。


 「構いませんぜ。そもそも旦那がいたからこれができたんだ。旦那程の適任な奴はいねぇ。」


 俺はカンザの言葉に苦笑した。


 「済まんな。こいつの名は【黒葬姫こくそうき】。そして女の方は【夜月やづき】だ。」

 「ん?女?」


 カンザが困惑していたら突然頭の中から声がした。


 『主人よ。良い名じゃな。これから我は夜月じゃ。そこのドワーフ、我と主人を引き合わせた事、感謝しよう。』

 「なっ⁉︎声‼︎これは、まさか黒龍か!!」


 凄い慌てようでカンザは叫んだ。


 『そうじゃ。だが、変な事をするつもりはない。主人のくれた名に誓おう。』

 「そ、そうか。分かった・・・。旦那。」


 カンザが不安そうに俺を見てきた。


 「大丈夫だ。俺の言う事には基本的に聞くから問題にはならんだろう。俺は眠いから帰るわ。」


 俺はカンザの作った装備を全てマジックバッグにしまい宿で朝からログアウトした。


——————————————————

 「疲れたぁ。」


 ゲームをログアウトした後、夕飯を食い修練場で木刀を振り続けていた。その途中で婆様が珍しく修練場に入ってきた。婆様は俺を見ると驚いていた。


 「隆貴、貴方封印を解いたの?何ともないの?」

 「ん?封印?あー。解けたな。記憶も戻ってるし。体に不況はないぞ。それよりも以前より力が溢れてくる。」


 婆様は急に泣き出し倒れた。俺はそんな婆様を慌てて抱きかかえた。


 「婆様⁉︎」

 「ごめ、んなさい、隆貴。私がしっかり、していれば、貴方を・・・。ごめんなさい。」


 俺は訳が分からなかった。何故婆様は俺に謝ってんだ?


 「なんで謝ってんだよ、婆様。俺は婆様に謝られる事なんてないぞ。逆に感謝してるくらいだ。婆様のおかげで、今も好きなことが出来てるからな。」


 俺は婆様に本心を伝えた。婆様は驚き、少しして泣きながら笑った。


 「そう。そ、う。それな、ら、よかった。」


 家の使用人に婆様を任せ、俺は修練場に残り魔力制御の練習を始めた。その後、爺さんが修練場に来た。


 「隆貴、雛を見なかったか?」

 「婆様なら部屋で休んでんじゃないか。さっきここに来てたし。」


 爺さんは婆様を探していたようだ。爺さんに用があったので、俺は爺さんに質問した。


 「爺さん、あのゲームって何なんだ?幾らなんでもリアル過ぎじゃないか。」


 爺さんは顔を顰めた。


 「今は何も言えん。・・・ただ、あれはゲームでもあるし現実でもある。それだけじゃ。」


 そう言って爺さんは修練場を出ていった。俺も少しして、修練場から自分の部屋に戻り、軽く寝てゲームにログインした。

——————————————————

 宿で目を覚ますと夕暮れだった。直ぐに街を出てゴーラスが言っていた盗賊団の拠点に向かった。見つけること自体はさほど時間はかからなかった。拠点近くの所にいた奴を捕まえて優しく諭してやったらすぐに吐いた。その後は冥福を祈って、いるべき場所に帰してやった。


 『主人よ。拠点は見つけたがどうするつもりじゃ?』


 夜月は俺にどうするか聞いてきた。


 「夜に奇襲する。白塵の試し斬りは終わったから次は黒葬姫だ。」


 夜月は不満そうに言った。


 『なんでそんなことをするのじゃ?主人なら正面突破でいけるじゃろう。』


 俺は夜月を宥めるように自分の持論を語った。


 「夜月、俺は弱者には弱者の強者には強者の戦い方があると思ってる。弱者になったことが殆どないお前には分からんだろうがな。多分だが、お前は人に負けたはずだ。人は大半の奴が弱い。だから人は罠を武器を使って強者を狩る。お前だってそんな風に負けたはずだ。」


 夜月は黙ったまま俺の話を聞いていた。


 「どんな負け方だろうが、負けは負けだ。いちゃもん付ける余地なんてない。たった一度の負けで全てを奪われることなんてザラだ。だから俺は負けないためにあらゆる手を使う。俺にとっての強者は自分が使える手段を驕ることなく適切に使える奴だ。」

 『・・・・・済まん、主人。余計なことを言い。』


 夜月は何か思ったことがあったのか、しょんぼりとした覇気のない謝罪をした。


 「構わん。しっかり働けよ。」

 『分かっておる。』


 そして今夜、俺は盗賊団を襲撃した。


———————————————————

 作者です。ヒロイン追加ですね。まだ増える予定ですのでよろしくお願いします。

 追記

 コメントでのアドバイスを参考にして話を更新しました。

 気に入った方は★と応援お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る